シンとんぼ(6)化学農薬使用量の50%低減2022年8月20日
シンとんぼは、ちょっと気になって農薬等の物質の毒性を調べる手法と農薬の使用基準の決め方を勉強してみた。すると、思った以上に大変な量の試験が行われ、念には念を入れて慎重に基準が決められていたのに感心した。専門家ではないので不十分な点も多いかもしれないが、今回勉強したことを披露してみようと思う。
ある物質(ここでは農薬の有効成分)の毒性を調べるためには、基本となる4つの毒性試験(急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、変異原性)を実施しなければならないとのことだ。試験の内容は、急性毒性が単回投与毒性試験という手法で毒性を調べたい物質を一度に大量に食べさせて動物の体への影響があるかどうかを調べること、亜急性毒性および慢性毒性、変異原性は、反復投与毒性試験という方法で、毒性を調べたい物質の一定量を実験動物に一定期間あるいは一生涯に渡って繰り返し与え、動物の身体にどんな影響が出るかを確認するものだ。影響が出たかどうかは、行動を観察したりもするが、最後には解剖して内臓など体組織の変化を調べたりする。つまり、大変かわいそうだが、最終的には実験動物の命が奪われてしまうわけだ。
その実験の犠牲になる実験動物の数だが、これには驚いた。というのも、基本4試験の場合は、それぞれの試験ごとに基本的に2種類の哺乳類とその雌雄で実験することが求められ、齧歯目(げっしもく)のラットと食肉目のイヌといったように種類が異なる哺乳類を用い、それぞれでオスとメスそれぞれのデータを取らなければならないからだ。ということは、これら基本4試験を行うだけでも、1試験物質につき最低、2種類×2雌雄×3濃度×3反復×4試験=144頭の実験動物が必要になる。この必要頭数は、試験に使う動物の種類や物質の性質などによって前後する場合があるので、実際にはもっと多くの動物が必要とのことだ。また、基本4試験以外にも発がん性試験など別の毒性試験が課されることがほとんどなので、1物質のADIを設定するために犠牲になる実験動物はもっと多くなるようだ。1物質でこれだから、世の中に出てくる新規化合物の数をかけ合わせれば、想像がつかないほどたくさんの実験動物が犠牲になっている。
まさに実験動物たちが、身を挺して健康になんら影響の無かった量NOAEL(Non Observed Adverse Effect Level無毒性量)という値を示してくれているのだ。
こうやって出たNOAELは、前回紹介したように、人と動物との種の違いで10倍、人と人との個体差による安全をみて10倍、掛け合わせて100倍の安全係数をかけて種や個体差のリスクを除いたADIが設定されるのだ。次回は、いよいよADIから農薬の使用基準が作られる仕組みを紹介しよう。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日