暗雲が漂い始めた8年産米の動向【熊野孝文・米マーケット情報】2026年2月24日
市中相場が値下がりし続ける中、生産現場では8年産水稲作付に向け、生産者組織や行政も参加して検討会が開催されている。関東の早場県でそうした検討会に参加する機会を得た。

この地区では加工用米の生産が盛んなこともあり、加工米協議会と題された検討会では行政の長も来場、挨拶をしたのに続き、関東農政局、市の担当者が8年産水田農業の取組み方針を説明した。また、地元のコメ集荷業者が現在のコメの状況を説明して8年産主食用米の価格動向に関して「1万6000円から1万8000円もあり得る」と述べ、参加した生産者も沈痛な面持ちであった。
会合の冒頭、主催者を代表して生産者組織の会長があいさつに立ち、自身は56回コメ作りを行っているが、令和の米騒動と言われるようなコメ価格高騰は30年前の平成5年以来だとしたうえで、今、消費者のエンゲル係数が高くなっているが、食品の中でも第一番目に高いのがコメだ。これはコメ政策の大失敗が原因だが、唯一良かったことはテレビ局が4社も取材に来るなど生産者の方にも目が向けられたことだ、などと述べた。
この後、地元の集荷業者がコメの現状について、7年産米の市中価格は昨年秋に比べ約半値の1万9500円から2万500円まで値下がり、8年産米も厳しい状況になると見ている。希望としては2万円を割らないようにと願っているが、2万円を割ると思っている。コシヒカリで1万8000円、その他は1万6000円ぐらいになるかもしれない。
もち米も高値になったが、すぐに急激に値下がりした。値下がりした大きな要因はあまりに高値になったことから末端小売でもち米が売れなくなったことと、加工向けは外国産もち粉がkg500円から600円でものすごく売れ、生産が間に合わなくなったほどで、これに国産もちが喰われた。コメ離れが加速すると消費が戻って来るのは至難の業で、売りたくても売れない状況になり、生産者にコメ代金を支払えなくなるところも出て来る。
8年産米の作付けに関しては、作付けが増えているにじのきらめきは多肥にすると茶米が多く出るので規格外になってしまう恐れがあるので色彩選別機が必要だとした。ふさおとめは高温障害に強く、7年産は品質・食味に関しても買い手から高評価を得た。ふさおとめを推奨していくべきだと思う。もち米を作っている生産者は引き続きもち米を作り続けてもらいたい。うるち米に転換すると、うる混の恐れがあり、実需者はうる混を最も嫌う。この地区のもち米は近年もち米産地として評価が高まっており、その評価を落とさないようにしたい。
この地区の加工用米等の取組みは、令和7年産米では加工用米が1万9046俵(前年産比68.4%)、飼料用米1万335俵(同30.7%)、米粉用198俵(同8.5%)と軒並み大幅に落ち込んでいる。
8年産米については、主食用米の生産目安の設定が市町村の判断になるため、これから農業再生協議会の総会で協議することにしている。その場合の加工用米関連交付金額(案)は水田活用の直接支払交付金2万円/10a、市単独補助額4500円/10a、複数年契約に対する産地交付金8800円/10a、生産性向上技術の取組みに対する産地交付金6400円/10a、合計3万9700円/10aという額を示した。
国の8年度の水田活用予算の見直しでは、飼料用米の一般品種への数量払いは標準単価が6.5万円/10a(収量に応じて5.5万円~7.5万円)、コメ新市場開拓等は新事業として140億円が計上され、新たに酒造用好適米に助成金が支給されるほか、米粉用は専用品種の規定を外し、対象品種を拡大する。
交付単価は新市場開拓米が4万円/10a、加工用米が3万円/10a、米粉用米9万円/10a、酒造好適米が取組み年数に応じて最大3万円/10aとなっている。
加工用米等の申請の締め切りはこの自治体の場合は5月末になっているが、生産者が主食用以外の制度米穀を生産するか否かはあくまでもその所得による。所得には助成金の額が影響するのは言うまでもないが、基本的には加工用米や米粉用米が1俵いくらで契約できるかである。助成金単価が一番高い米粉用米でも年間200t使用する実需は7年産を1俵9000円で購入していたが、8年産で同じ価格を提示してもこれに応じるところはない。それはこの額に助成金が上乗せされても1俵2万円に届かないわけで、それなら主食用米を作った方が得だという判断になる。
主食用米の価格を高値に維持することを目的に主食用米からの転換を進めるため新市場開拓米という制度を作り、それに助成金を支給する制度を構築した。ところが主食用米が高くなり過ぎで新市場開拓米を作る人がいなくなるという結果を招いている。農水省はいつまでアクセルとブレーキを一緒に踏むような政策を続けるつもりなのだろうか。
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