コシヒカリの産地間格差に逆転現象【熊野孝文・米マーケット情報】2026年3月3日
2月26日に開催されたクリスタルライスの取引会では79産地銘柄12万7958俵の売り物がFAXで買い手の卸に提示された。売り唱え価格の加重平均価格は1俵2万4471円(税別、以下同)で前回1月15日の取引会価格に比べ1832円(7%)値下がりした。
7年産米が出回り始めた昨年10月の取引会での加重平均価格は3万5117円であったが、取引会が開催されるたびに値下がりし続けている。成約結果は公表されていないが、参加者によると成約価格では、新潟コシヒカリよりも栃木コシヒカリの方が高値になったとしており、価格下落場面でこれまでの産地銘柄間格差の位どころに異変が起きている。


表はクリスタルライスの取引会推移で、家庭用精米の御三家北海道ななつぼし、秋田あきたこまち、新潟コシヒカリの売り唱え価格のうち最も安い価格を取引会ごとに示した。7年産が出回り始めてからの価格推移では、昨年末までは新潟コシヒカリが全国平均価格を上回っているが、表に示してある通り年明けから新潟コシヒカリの価格が全国平均を下回るようになっている。これは新潟コシヒカリの最も安い売り物が全国平均の売り唱え価格を下回っていることを表している。
今回の取引会で各産地コシヒカリの売り唱え価格の最も安いものは(東京着1等l基準)、山形2万4060円、福島会津2万2510円、福島中通り2万2660円、茨城2万2910円、栃木2万2810円、千葉2万2360円、新潟2万2160円になっている。
これまでコシヒカリと言えば新潟県産が産地ピラミッドの頂点に君臨しており、コシヒカリだけではなく全国の銘柄米のプライスリーダー的な役割を果たしていた。それがクリスタルライスの取引会では最も安い価格で売り唱えられているのである。しかも実際に新潟コシヒカリより高値で買われたのは栃木コシヒカリであった。栃木コシヒカリが高値で買われたのは販売面での特殊事情がある。それは売り物自体が2件合計で1003俵しかなかったことにもがあるが、それ以前に栃木コシヒカリを著名なディスカウントショップで他銘柄に比べ安く販売していた卸がおり、販売進度が好調で手持ち在庫では足らなくなり、スポット的にクリスタルライスの取引会で買いに入ったことが高値になった要因。
逆に新潟コシヒカリは出回り初期から高値になっていたことから販売進度が大きく落ち込んでいる。出回り期の9月から12月までの4か月間の年産別販売累計数量は、5年産が7万2600t、6年産が7万2900tであるのに対して7年産は5万500tに留まっている。これまでよりも2万t以上少ない数量しか販売されていないのである。
「コメが高くなって変わったこと」という民間調査会社の調査では「産地銘柄にこだわらなくなった」と答えた人が41%もいたという結果になっており、コメ価格高騰でこれまでのような産地銘柄に価値を見出さない消費者が増えたことが新潟コシヒカリの販売進度にも現れている。また、卸業者の中には近年新潟コシヒカリの品質や食味の低下を指摘する卸もおり、7年産では炊飯した際に変色するものもあったという。また、3月からは在庫を軽くしたい卸が精米の特売価格を提案、5kg2980円の銘柄米が量販店店頭に並ぶ予定で、安売り競争が激化すると見られている。安売り競争は量販店店頭だけではなく、ネット通販でも激安米の販売を計画している大手卸もいる。
全農新潟は8年産米の価格維持を図るべく、概算金の保証価格を設定すべく販売業者に価格を盛り込んだ事前契約を働きかけているが、地元の卸によるとその価格で契約に応じるところはほとんどいないと言っている。それは7年産米の価格が下げ止まらない現在、あえて8年産米を事前契約するリスクを懸念しているためで買い手の卸としては当然の判断だ。
新潟県は2月26日に再生協議会を開催して8年産米の主食用目標数量を7年産生産実績より約2万トン少ない56万2000tにする方針を示したが、すでに主食用米を増産すべく種子の確保は終えているが、大規模生産者の中には主食用米増産の面積をカバーできるほどの種子が手に入らなかったというほどで、再生協議会が示した主食用米の減産とは真逆の方向に動いている。
このことは新潟県だけの話ではなく、8年産米の作付けを決めるための大きな指標になっている政府備蓄米の買入れスケジュールが未だに示されず、実際に備蓄米入札が実施されるころには産地では育苗がスタートしており、主食用から制度米穀への切り替えが進まなくなる可能性さえある。
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