加工原料米の適正価格を示すことは出来るのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2026年3月24日
全国米穀工業協同組合(略称全米工)は3月19日、千代田区の中労委ホールで東日本情報交換会と取引会を開催した。取引会では17件484tの売り物が出たが、成約したものは選別下がkg95円で40t、ヤケ白米がkg70円で12tの2件62tにとどまった。この日の取引会で今年度の取引は終了したが、東西で行われる取引会の合計取引数量は1500tに届かなかった。前年度の取引数量4735トンに比べると3分の1以下と大幅に減少した。

会議の冒頭、理事長より「全米工の組合機能はいかに加工原料米を供給していけるのかに尽きる」との発言があったが、この業界が扱ういわゆる特定米穀は主食用米の需給、価格動向に大きく左右されるため加工原料として安定供給するのは至難の業と言うのが実態。
情報交換会では、新潟の組合員から米菓メーカーとの価格交渉について、米菓メーカーはkg180円のMA米を使用しており、それよりもkg5円から10円安ければ特定米穀白米を使用するという意向であることから、特定米穀白米がkg160円台でなければMA米からの振り替えは難しいという発言があった。加工用向けMA米の年間売却数量は、うるち米が12万5000t、もち米が8000t程度になっており、いまやコメ加工食品業界の主原料と言ってもいい存在になっている。
今年度も国産原料米の価格が大幅に値上がりしたことからMA米を購入する加工メーカーが増えている。それだけではなく加工調製品としてもち米ミックス粉なども輸入が急増しており、外国産米の存在がこれまでになく大きくなっている。
特定米穀の競合品はMA米だけではない。令和の米騒動で政府備蓄米の加工用向け売却が復活した。これまでに令和2年産米の政府備蓄米が5万2000tほどコメ加工業界に売却されている。
売却先の大口では大手米菓メーカーや大手焼酎メーカーが目立つが、米粉製粉会社や清酒メーカーも名を連ねている。清酒業界はこれまで新米使用を謳っていたが、背に腹は代えられなくなったためか古米でも問題なく清酒が出来ると喧伝している。政府備蓄米を加工業界に売却する際の売却条件の要件に「なお、今回の販売に当たっては、今後の国産加工原材料用米穀の安定した供給を図るため、今回の政府備蓄米購入契約数量以上に令和8年産の加工用米若しくは新規需要米(米粉用米)の購入を希望することを要件とします」と記されている。全米工の情報交換会でもこの件が話題になった。組合員からは農水省に確認したところ「努力義務」と言う返事で8年産加工用米を契約しなければならないということではないとの見解が示された。
もう一つ話題になったのが米コスト指標で、加工原料米もこの米コスト指標を基準に取引しなければならないのかと言う質問があった。
米コスト指標で示されているのは生産者コストがベースにあるが、食用米であれ、加工用米であれ生産するコストに違いがないので、ベースの基準は変わらないが、加工用米は制度上は転作作物で、その括りの中で転作作物助成金が支給される。その意味では主食用米の生産コストをベースにして価格交渉するわけにはいかないが、転作助成金最大10a当たり4万円を除いた形で価格交渉することは出来る。実際にそうしたことを考えているのか、まさにこれから8年産加工用米の価格交渉をしなければならないコメ加工食品業界に聞いてみたところ「考慮することはない」との返事。正確には加工用米の価格交渉で食料システム法に基づく米コスト指標をたたき台にすることなど考えたこともないというもの。
コメ加工食品業界が考慮すべき原料米価格は今やMA米の売却価格になっており、それ以上に同業他社の原料との価格を基準にすべきだという考え方も成り立つ。例えば焼酎業界であればコメを主原料にするところ以外にコメを全く使わず麦だけを主原料にしているところもある。米菓でも小麦の使用量は全体では4割にもなっており、コメ以外の代替原料のウエイトも大きい。
食管時代に麦価を決める算定基準は国内の最大面積を有する北海道の大規模麦作農家の生産コストを基準にしていた。今回の米コスト指標の生産費基準は作付面積1ha以上3ha未満の生産費を代表的な作付け規模に置いている。このことに関しては米穀機構のコスト指標作成等委員会が公表している検討結果にも流通業者の意見として「生産段階において、1ha以上3ha未満の生産費を代表的な作付け規模として使用する理由は何か。流通の7割を当該階層より生産費が低い経営規模3ha以上の階層が占めている中で、流通事業者の立場から見たときに、合理的な根拠がある指標とは言い難い」と言う意見が掲載されている。この際、加工原料用米の取引基準価格は国際的なコメ取引価格にしてみてはどうか。その方が余計な政治的思惑が入らなくて済む。
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