【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】農家のコスト割れ補填をせず、フードテックを推進する「整合性」2026年3月26日
ホルムズ海峡の封鎖によって日本の食料安全保障の危機がさらに深刻の度合いを強めています。私は以前から日本の食料自給率の低さに警鐘を鳴らしてきました。公式の数字ではカロリーベースで38%ぐらいということになっていますが、実質はもっと低いんだと。
まず一つは今回も問題になっていますが、肥料です。化学肥料の原料はほぼ100%輸入に頼っている。それが止まれば、せいぜい半分ぐらいしか生産ができないとすれば、自給率はそれだけで22%。
さらに、野菜の種は9割、海外から運んできている。米などの種も、今後の政策の推移によっては海外に9割依存するような状況にもなりかねないと。そのことを想定すると、最悪の食料自給率は9.2%という数字が出てくると警告してきました。
しかし、その数字にはまだ入ってないものがあった。今回のホルムズ海峡の封鎖でエネルギー、原油が止まる、非常に高くなるという状況が現実になりました。日本のエネルギー自給率は11%しかありません。食料自給率も極端に低いが、エネルギー自給率も極端に低い。
そのエネルギーが止まれば、9.2%の食料自給率にそのエネルギー自給率の11%という低さを勘案すれば、せいぜい食料自給率は実質数%しかないと。そういう状態が今、ホルムズ海峡の封鎖で現実のものとなってきている。これは恐るべきことです。
そういう状況の中で、農家の皆さんは燃料も肥料も他のいろんなものもどんどん上がって、さらなるコスト高で苦しんでおります。米の値段も去年は上がったけれども、また下がるというような状況で、コストがどんどん上がれば、また稲作農家さんも他の農家さんもどんどん潰れてしまいます。
このコスト高を価格に転嫁できればいいわけですが、それが行われると今度は所得が減って苦しんでいる消費者が耐えられません。しかし、生産者はコスト高を売価に上乗せできなければどんどん潰れてしまいます。
農家の皆さんが潰れてしまったら、今すでに農家の方が加速度的にいなくなってきているのがさらにひどくなって、日本の皆さんがこうやって海外からものが入らなくなってくる事態に直面したときに食べるものがなくなる、飢餓に陥るという深刻な事態が今目の前に来ました。
政府はそれに対してどうするか。農家の皆さんのコスト割れを補填する政策はやらないと言ってます。それをやるのは世界の常識です。農家の皆さんの所得を補填する政策をやれば、消費者の皆さんは安く買えます。そして、農家の皆さんは所得を確保して増産ができます。拡大均衡に持っていって自給率も上げることができます。
その政策を日本はやらないと、この期に及んで言ってるわけです。そして米はまだ需要が減ってるんだから価格が下がりそうなら生産を絞り込めと、この期に及んで減反政策の強化のようなことを言ってるわけですよね。
そして、今こそ、増産して、備蓄も増やして備えなきゃいけないのに。備蓄には金がかかるから、国家備蓄を減らして民間備蓄と輸入米を入れとけと、このような政策を食糧法を改定してまで今入れようとしてます。
そして総合的な結論は、食料自給率を上げるのに金をかけるのはもったいないから、それはせずに輸入を増やせばいいじゃないかと。今どういう状況になっているのか、この期に及んでですね。そのようなことをやっていたら、本当に農業、農村が崩壊して、そして国民がいざというときに食べるものがなくなる。まさに飢餓のリスクを高めてしまうということについてどう考えているのかと。
一方で、高市政権は食料自給率は100%にするんだという目標も挙げております。じゃあ、どうやってやるんだというと、それは植物工場とかフードテックだと。フードテックとは何か。今までの既存の農業は地球温暖化の悪者だと。だから、これからは代替的食料生産に変えていくんだ。人工肉や培養肉や昆虫食、植物工場、陸上養殖、無人農場。高市さんが進めようとしているものも全部入ってます。
こんなことを進めたら、本当に農業、農村、今まで頑張ってきた人たちはいらない、と。全部植物工場や昆虫食や無人農場に変えていけばいいという政策を今強化しようとしているということです。
こんなことをやったら、本当に農業農村が破壊されて、そして食料生産が激減して、今のようなホルムズ海峡の封鎖というようなことがさらに悪化したら、国民が本当に飢え死にしかねないような状況を作ってしまっているんじゃないかと。このことを本当に今考えないといけない。
実は、この農家の所得を補填しないという方針と、フードテックを進めるという方針は「整合性」が取れているということです。つまり、今まで頑張ってきた農家はいらないんだと。だから、それを助けることはやらないと。これからはそうじゃなくて、昆虫食や無人農場やら植物工場とかで一部の企業が儲ければそれでいいじゃないかと。そういうような方向性を今強めてしまってる。
でも、それは一部の人たちが儲かって、それによって政治に金が入ったとしても、農家も国民も日本の地域自体、日本人の命が守れなくなるという事態を加速してるということについて今認識して改めないともう間に合わない。そのことを我々はしっかりと認識して、訴えていかなければいけない。そういうふうに思います。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】ウメ、モモなどに果樹カメムシ類県内全域で多発のおそれ 佐賀県2026年3月26日 -
【サステナ防除のすすめ】IPM防除の実践(雑草編)基本は"根こそぎ"(1)特殊報は要警戒2026年3月26日 -
【サステナ防除のすすめ】IPM防除の実践(雑草編)基本は"根こそぎ"(2)雑草の耕種的防除2026年3月26日 -
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】農家のコスト割れ補填をせず、フードテックを推進する「整合性」2026年3月26日 -
JA超えた産地づくりも 共同利用施設の再編集約・合理化シンポジウム2026年3月26日 -
長引く米の「買い控え」 1人当たり米消費の前年割れ12ヵ月に 米穀機構2月調査2026年3月26日 -
宮城県で鳥インフルエンザ 国内23例目2026年3月26日 -
苦くて甘かったアケビの若葉・新芽【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第382回2026年3月26日 -
エシカルラム酒「てんさいラム」限定300本 25日発売 JAグループ北海道2026年3月26日 -
R&I格付で「A+」更新 JA愛知信連2026年3月26日 -
【牛乳スマイルPJ】消費拡大「ヨコ展開」 Jミルクが7優良事例表彰2026年3月26日 -
よこはま動物園ズーラシアに「GREEN×EXPO 2027」公式ストア 4月2日にオープン2026年3月26日 -
熊本県阿蘇郡における蓄電所事業へ参画 JA三井リース2026年3月26日 -
しゃりしゃりジューシー「ホームランバー いちご&メロン」新発売 協同乳業2026年3月26日 -
地域インフラ・地域経済活性化促進へ 静岡県磐田市と事業連携協定を締結 タイミー2026年3月26日 -
生鮮野菜の機能性表示食品「スルフォラファンブロッコリー」新発売 カゴメ2026年3月26日 -
かつおと昆布の旨み「タネビッツ 関西だし」新発売 亀田製菓2026年3月26日 -
捕食性原生生物が土壌微生物群集を制御 普遍的な仕組みを初めて実証 国際農研2026年3月26日 -
鳥インフル 米国からの生きた家きん、家きん肉等輸入を一時停止 農水省2026年3月26日 -
大潟村産「金芽米」軸に資源循環モデル確立へ 三者協定締結 東洋ライス2026年3月26日


































