米保管義務は誤解 農水省の支援事業 需要に応じた判断で2024年8月20日
主食用米を長期計画的に販売するために保管料を支援する「米穀周年供給・需要拡大支援事業」は今年度も公募が行われ、9事業体から23年産米5万tが申請されている。この事業で保管料支援を受けるためには最低限この10月までは保管しなければならない。そのため店頭に米が並ばない事態も起きる状況のなか、国が米の保管を義務づけるのか、との一部から批判の声も聞かれるが、農水省はこの事業について「10月まで保管せず販売しても、ペナルティーがあるわけではない。事業の目的は需要に合わせた販売。保管料支援はなくなるが計画的に販売してもらえばいい」と強調している。
この事業は需要に応じた生産を行っても天候の影響で豊作になった場合に、主食用米を長期計画的に販売(翌年の11月以降に販売)したり、海外向けや業務用向け、さらに非主食用に販売する取り組み行う産地を支援する事業で2015年度に創設された。
この事業は生産者が拠出して積み立てを行い、産地の取り組みを国が支援するもので事業を活用するための生産者積み立てなどの体制整備を行っているのは41道府県、47事業者となっている。2024年度予算では前年度同様50億円が措置されている。
保管料の支援対象経費は、保管経費のほか金利、米の倉庫への集約経費など。支援の対象となるのは翌年の10月までは保管し、その後、翌々年3月までに販売する。3月末の時点でこうした保管と販売が行われたか農水省に報告し支援要件に当たる数量を確認する。支援が行われるのはそれからだ。
今年度は5月末時点で23年産米5万tが9事業体から申請されている。ただし、実際に申請どおり保管せず販売しても来年3月末時点で支援要件に当たらないと判断されるだけで、農水省は「ペナルティーがあるわけではない」と説明する。6月末の民間在庫量は156万tとなっているが、申請された5万tもこの在庫量としてカウントされている。つまり、在庫量から隔離して保管されているわけではない。
実際、23年度は22年産米25万tが保管料支援事業に申請されたが、10月まで保管されたのは17万tで8万tは販売されたというのが実態だ。
「保管料支援」という言葉から、保管を義務付けるような印象を持つからもしれないが「需要に合わせて計画的に販売することを支援する事業」と農水省は説明する。あくまで産地の判断だが、市場の動向に合わせてこの5万tが供給される可能性はあるといえる。
農水省は来年度予算でも需要に応じた米の生産・販売が行われる環境を整備するこの「米穀周年供給・需要拡大支援事業」を概算要求に盛り込むという。
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