日本の酪農家 1万戸割れ 半数の酪農家が離農を検討 中央酪農会議2024年12月3日
中央酪農会議は12月2日、指定団体で受託している酪農家の戸数を集計した結果、2024年10月に初めて1万戸を割り9960戸となったことを発表。酪農家の6割が赤字で、8割が経営環境の悪さを実感。半数の酪農家が離農を検討していることがわかった。
酪農業を営んでいる全国の酪農家236人を対象に、経営状況に関する緊急調査を行った結果、酪農家の6割が赤字で、8割が経営環境の悪さを感じていた。また、生産コストの上昇や収入の減少に直面し、酪農家の半数が離農を検討している。一方、月1回以上牛乳等を購入している生活者の98%は、国産の新鮮な牛乳を飲める環境を維持したいと回答した。
世界的な乳製品の需給のひっ迫が懸念される中、酪農家の減少が続けば、国産の牛乳・乳製品が入手しにくくなる可能性が懸念される。北海道大学大学院農学研究院の小林国之准教授は、「持続的な酪農経営のためには、経営構造のシフトが必要。そのためにも経営転換への支援と、消費者との対話と理解が不可欠」とコメントしている。
日本国内の酪農家の戸数の推移
図1
中央酪農会議の調査によると、指定団体で受託している酪農家の戸数を集計した結果、2024年10月に初めて1万戸を割り、9960戸にまで減少(図1)。指定団体の受託農家戸数の前年同月比増減率からは、2022年以に、酪農家戸数の減少が加速していることがわかる(図2)。
図2
日本の酪農家の経営状況に関する調査
現在、酪農業を営んでいる全国の酪農家236人を対象に実施した、経営状況に関する緊急調査で、現在の酪農経営の環境を聞くと、半数が「とても悪い」(50.0%)、33.1%が「まあ悪い」と回答。酪農家の83.1%が経営環境が「悪い」と感じている。経営環境が悪いと感じる196人に、悪い影響を与えている要因を聞くと、「円安」(91.8%)が最も多く、次いで「原油高」(68.4%)、「ウクライナ情勢」(67.9%)が挙がった。
また、酪農家の98.7%が「上昇している生産コスト」、 96.2%が「減少している収入」があると回答した。上昇を感じる生産コストは、「濃厚飼料費(配合飼料等)」(94.4%)、「農機具費」(86.7%)、「光熱水料・動力費」(81.1%)など。減少を感じる収入は「牛販売の収入」(95.2%)などが挙がった。
また、2024年9月の経営状況を聞くと58.9%が「赤字」。こうした厳しい環境の下、酪農家の約半数が離農を考えることがある(47.9%)と答えている。
酪農経営が悪化する中で、社会に伝えたいことを酪農家に聞いたところ、「酪農家が減少し続ければ、日本の食卓から乳製品と牛肉が気軽に食べられなくなる」「酪農経営は365日休まず生乳を生産している。牛乳や乳製品などを少しでも多く消費してもらいたい」などの声が届いた。
生活者(月1回以上の牛乳等の購入者)の調査
調査概要
一方、消費者への調査では、月1回以上牛乳等を購入している生活者2884人を対象に、日本の酪農について聞いた。
国産の新鮮な牛乳が飲める環境を維持したいと思うか聞くと、98.0%(「とても思う」65.5%+「まあ思う」32.5%)が維持したいと答えた。一方、日本の酪農家が約1万戸まで減少していることについて知っているか聞くと、42.5%が「あまり知らない」、22.9%が「まったく知らない」と答え、月1回以上の牛乳等の購入者の65.4%、3人中2人は「知らない」と答えた。
9割以上は「日本の酪農家を応援したい」
国産の新鮮な牛乳が飲める環境を維持するには、その土台となる日本の酪農の生産基盤の維持が不可欠。日本の酪農家を応援したいと思うか聞くと、57.9%が「とても思う」、39.5%が「まあ思う」と答えており、97.3%が日本の酪農家を応援したいと答えた。
また、日本の酪農の生産基盤を維持するために、消費者として支援する行動をしたいか聞くと、91.1%(「とても思う」30.9%+「まあ思う」60.2%)が支援したいと回答した。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日