鳥インフルエンザウイルスの地理的拡散と進化 2024年シーズンの遺伝子を解析 農研機構2025年10月30日
農研機構は、2024年シーズンに国内で検出された高病原性鳥インフルエンザウイルスが、4シーズン連続で確認された1種類と当該シーズンに初めて確認された5種類を合わせた、計6種類の遺伝子型であることを明らかにした。全ゲノム解析により、異なる渡り経路の野鳥集団間でウイルスの共有と遺伝子再集合が進んでいることが新たに分かった。
図:各野鳥集団におけるウイルス多様化のイメージ
農研機構は、2024年シーズンに国内の家きんおよび野鳥・環境試料から得られた高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)ウイルス225株の全ゲノム解析を実施。4シーズン連続で確認された1種類と、当該シーズンに初めて確認された5種類の計6種類の遺伝子型のHPAIウイルスを確認した。
特に注目されたのは、異なる繁殖地から渡って来る野鳥集団間でウイルスの遺伝子再集合が進んでいたこと。これまでの報告では、野鳥集団が持つHPAIウイルスのHA遺伝子は安定的で、異なる野鳥集団由来のHA遺伝子に置き換わる例は報告されていなかった。このため、HA遺伝子は野鳥の繁殖地ごとにグループピングでき、HA遺伝子から野鳥の渡り経路を推測できる。
今回の解析では、HA遺伝子のみが別の集団由来の遺伝子に置き換わり、他の分節はすべて同一集団由来であるウイルスを確認。また、置き換わったHA遺伝子は異なる遺伝子グループに属しており、異なる繁殖地の野鳥由来のウイルスとの間で遺伝子再集合が起こったことが示唆された。
これは、ある野鳥集団の持つウイルスが野鳥と共に移動し、日本またはその周辺に到達した際に、異なる渡り経路を持つ野鳥集団に共有され、それぞれの繁殖地に持ち帰られたことにより、新たな遺伝子型が形成されたことを示唆している。こうした現象により、ウイルスの多様化が加速し、国内に持ち込まれるウイルスの種類も増えていると考えられる。
ウイルスの多様化は野鳥の移動と密接に関連しており、今後も野鳥集団間でのウイルスの動態を注視する必要がある。野鳥で確認されたウイルスの遺伝子型の一部は、家きん飼養施設でも確認されており、2025年シーズンも十分な警戒が必要。農研機構は、全ゲノム解析を継続し、国内外のウイルス流行動態の把握と防疫体制の強化につなげる。
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