高齢・過疎化する団地の課題解決策を議論 東京・多摩ニュータウンの「ネコサポステーション」で研修 JA全中教育部・ミライ共創プロジェクト(1)2025年2月26日
JA全中教育部は2月13、14日、東京都の多摩市と町田市でミライ共創プロジェクトの第4セッションを実施し、高齢化と人口減少に直面する多摩ニュータウンで社会・地域課題解決のビジネスを行うヤマト運輸の「ネコサポ」事業の視察と議論を行った。全国のJAから11人が参加した。
町田市のネコサポステーション町田木曽
ミライ共創プロジェクトはフィールドワークとワークショップを通じて着想の幅を広げ、地域の人々に新しい価値を提案・提供できる経営人材の育成を目的にしている。24年度は全国のJAから中堅職員11人が参し、地域・社会の課題解決につながる事業構想の作成と発表をゴールにしている。
地域に密着して課題を解決
グリナード永山のネコサポステーション
13日は多摩市の永山駅(京王線、小田急線)に直結する商業施設グリナード永山の「ネコサポステーション」と永山団地などの視察からスタートした。「ネコサポ」は地域に密着した課題解決のための相談、解決の場と位置付けられている。永山団地には2016年に「ネコサポステーション」第1号を開設して9年間運営してきたが、今年1月末に閉店。現在はグリナード永山に集約している。
永山団地に開設したのは、ヤマト運輸の「過疎で生活が不便になっている地域で、自治体との協力によるプロジェクト」(渡辺桂祐ヤマト運輸ネコサポ事業開発部ネコサポ事業推進課係長)の一環。「東京都下の団地でも同様に高齢化や過疎化が進み、買い物や家事に不自由を感じている住民に民間企業として何ができるか」を課題として試行錯誤を続けてきたという。
閉店した永山団地のネコサポステーション
永山団地を含めた多摩ニュータウンは1966年から開発され、周辺4市(多摩、町田、稲城、八王子)にまたがる広大な団地群。緑地を残し環境はいいものの、歩道は車道と分離され階段で昇降する場所が多い。古い団地は中層でもエレベータが設置されておらず、宅配業者も苦労する。団地内には商店街もあるが、空き店舗も多く、診療所の閉鎖やスーパーも撤退が噂されている。
そのため「居住者の居場所を作り、コミュニティと買い物や家事サービスなど暮らしの相談場所」として商店街や地域の民生委員、包括支援センターなどと連携する「永山モデル」としても定着してきた。しかし、収益性などの面から「多摩市全域でのサービスは継続するが、拠点は集約」する苦渋の決断をした。
「ネコサポステーション」が置かれるグリナード永山は駅直結の商業施設で開業から50年を超え、地域住民の生活に密着している。施設内という立地を生かし、施設運営者と館内テナントとの協力・連携により、購入した商品をまとめて当日に配送する「買い物便」や専門スタッフによる各種の家事代行、店内を時間貸しするレンタルスペースなど多種多様なサービスを提供している。メーンのユーザーは周辺団地の高齢者を中心とした居住者だけではなく、近年増えている「メルカリ」などのフリマサイトのユーザーとしており、月間平均4000人が来店する。
イベントスペース設置し地域特産の物販も
ネコサポステーション町田木曽では物販も行う
町田市のネコサポステーション町田木曽は、木曽団地(東京都住宅供給公社=JKK東京)が整備したコミュニティ拠点の施設運営事業者として23年5月にオープンした。道路を隔てた山崎団地(UR都市機構)とも隣接する。メーンユーザーは70~80歳代の団地居住者。コミュニティ拠点という性格から、レンタルスペースも設置(2カ所。利用料は1時間770円と1320円、LINE登録で15%オフ)し、地域の団体などがヨガ・プラティスや麻雀、体操、手芸、少林寺拳法など様々なイベントを定期的に行っている。
商業施設内とは違い、物販を行っているのも特徴だ。町田市にある老舗の醤油や調味料、クッキーなど地域の社会福祉法人との協働商品、あるいは震災の被害にあった能登の加工品なども販売する。
木曽・山崎両団地を視察すると、平日の午後ということもありシャッターを閉めている店舗が多い。永山団地同様にNPO(非営利法人)や社会福祉法人が運営する店舗も目立つ。永山との違いは、若い客層向けのカフェやパン屋などが目立つことだ。近隣では2020年に桜美林大学の町田キャンパスが開校し、学生の利用もあるという。和菓子店では若い職人の姿も見られた。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日
-
キウイブラザーズ新CM「ラクに栄養アゲリシャス」篇公開 ゼスプリ2025年4月30日
-
インドの綿農家と子どもたちを支援「PEACE BY PEACE COTTON PROJECT」に協賛 日本生協連2025年4月30日