新規就農者数全国一 環境制御システムの活用で園芸振興の担い手続々 現地レポート/JAさが・みどり地区トレーニングファーム(上)2026年3月2日
佐賀県では園芸振興をめざし、最先端の「環境制御システム」を導入したトレーニングファーム(TF)を2017年に設置、毎年、新規就農者を育成している。きゅうりでは新たに24人が就農し、TF設置前の栽培面積1200aが2024年には2300aへとほぼ倍増した。販売金額では6.7億円から16.7億円と倍以上に伸びた。環境制御システムの導入によって高収量を実現し、産地としての信頼も高まっている。現地を訪ね新たな担い手たちの思いを聞いた。
8期生と9期生、講師のみなさん
農業、人生、家族への思い
武雄市朝日町にあるきゅうりトレーニングファーム(TF)では現在、8期生3名と9期生2名が研修している。
TFは2年制で1年目はきゅうり栽培の作業の流れを実地研修するほか、土壌や病害虫、肥料、農薬の基礎知識や設備投資や収支シミュレーションなど経営管理を座学で学ぶ。さらに環境制御システムを使ったハウス内の温湿度管理や灌水の時刻や量の設定なども行う。
取材に訪れたときはきゅうりの苗の植え付けが行われていた
2年目は模擬経営と位置づけ、学んだ知識をもとに自らの判断できゅうり栽培を実践するほか、1年目の研修生を指導する。
8期生の財津祐希さん(26)は大分県出身。農業法人の社員として葉物の露地栽培をしていたが、独立営農をめざして佐賀県に移住を決意した。環境制御システムを使う最先端の施設園芸に「今までとは違う農業。難しいが学ぶことも多く、やりがいがあります」と語る。今年5月の卒業後は嬉野市の園芸団地で就農する予定だ。
佐賀県のTFの特徴はJA、県、関係市町、生産部会がしっかりタッグを組んで運営協議会を設置し、研修生をサポートしていることにある。とくに武雄市、鹿島市、嬉野市、大町町、江北町、太良町の6市町はそれぞれ園芸団地を整備し入植できる体制をつくっている。
研修中の家賃補助や、教育費、医療費支援など各市町に独自のメニューもあり、研修生は自分の家族の将来も見据えて、どの市町の園芸団地で就農するかを研修初期に選択できる。
「跡継ぎがいない、農地は余っていると聞き、では自分が、との思いはありましたが非農家にはハードルが高いな、と。しかし、TFでの研修後は市が用意する園芸団地に入れる。それなら、と人生をかけようと思いました」と話すのは坂井麻美さん(48)だ。研修2年目の今年は模擬経営に挑戦し、11月には7月植え付けの1作目の収穫を終えた。「反省点もありますが、なんとかやっていけそうです」と手応えを感じている。市役所勤務からの転身だ。
母親と、さらに将来は子どもも含めて一緒に働くことができたら、とTFに応募したのは田中美穂さん(38)だ。夫の営む建設業を手伝い、まったく農業の経験はないが「農業なら家族でできる」と決心した。
最新の環境制御システムを活用した農業に「ワット?、ジュール? 専門用語はまったく知りませんでしたし、画面に表示されるグラフも 何? というレベル。でも講師や先輩のみなさんに教えてもらい、失敗しても楽しく学んできました」と話す。

環境制御機器を操作する田中さん
9期生の生方聖人さん(24)は「自分の力で何かをしたい」と市役所職員から転職をめざし、坂井和幸さん(54)は35年間の工場勤務に区切りをつけ、第二の人生で「きゅうり」栽培に挑戦する。技術も資格も持っていないが、講師や先輩など「多くの人々から教えてもらえることに魅かれました」と地域の関係機関が一体となったTFのサポート力に後押しされたと語る。TFに応募できる要件は一応、50歳未満だが、それ以上でも「やる気を重視」(JAさが)している。
きゅうりの神様
研修生がこのTFで学び農業経営者になろうと決断した大きな理由として口をそろえるのが「きゅうりの神様が先生だから」だ。
"神様"とはTFの講師を務める山口仁司さん。30年ほど前からハウス内の環境制御に着目し、「勘や経験」の農業から、データに基づいた農業への転換をリードしてきた日本でも有数の農業経営者だ。
山口さんは「データ農業というが、作物に向き合うことが大事。そのためには数多く観察すること」と基本を説く。そのうえでその土地の特徴や気象条件に合ったデータを見出し、ハウス内の環境をコントールすることが重要だという。「つまり、いかに作物の成長を手助けする環境を作るか、です」。
山口仁司さん(左)と大串和義さん
講師の大串和義さんは山口さんの研修生への指導について「知識をオープンに伝えていますが、ヒントは言っても答えは言わない。自分で考えなさい、ということです」と話す。それはTFの目的が「農業経営の社長を育てること」だからだ。
重要な記事
最新の記事
-
新規就農者数全国一 環境制御システムの活用で園芸振興の担い手続々 現地レポート/JAさが・みどり地区トレーニングファーム(下)2026年3月2日 -
【特殊報】クサシロキヨトウ 県内で初めて確認 沖縄県2026年3月2日 -
【注意報】サトウキビにメイチュウ類奄美地域で多発のおそれ 鹿児島県2026年3月2日 -
【JA全農の若い力】全農ET研究所 中西果歩さん 経験積み技術磨く2026年3月2日 -
【JA全農の若い力】全農ET研究所 硲野健さん 受精卵移植で農家を笑顔に2026年3月2日 -
【JA全国青年大会記念座談会】食と農と地域の再建へ! どうする農協運動(1)2026年3月2日 -
【JA全国青年大会記念座談会】食と農と地域の再建へ! どうする農協運動(2)2026年3月2日 -
【JA全国青年大会記念座談会】食と農と地域の再建へ! どうする農協運動(3)2026年3月2日 -
自給率の低い農産物拡大へ支援を 日本農業法人協会2026年3月2日 -
米のとう精数量 前年比94.1% 米販売低調裏づけ2026年3月2日 -
3月の野菜生育状況と価格見通し ばれいしょ、たまねぎ等 平年の価格を上回って推移 農水省2026年3月2日 -
子どもたちが農機に試乗 井関農機が「ファーマーズ&キッズフェスタ 2026」に出展2026年3月2日 -
飲食店向け「カスタマーハラスメント」対策ガイドラインを策定 農水省2026年3月2日 -
JR-Crossと「ニッポンエール」コラボ飲料「栃木とちあいか 苺」新発売 JA全農2026年3月2日 -
【今川直人・農協の核心】創造は人間、助手は機械(1)2026年3月2日 -
バッテリー診断技術を有する電知と資本業務提携 JA三井リース2026年3月2日 -
「食と農の科学館」が全面リニューアル スマート農業・AI研究など最新成果を発信 農研機構2026年3月2日 -
コメ市場から日本の経済と社会と政治を見る【森島 賢・正義派の農政論】2026年3月2日 -
地震時の地すべり移動量を簡便に推定 能登半島地震災害の復旧を支援 農研機構2026年3月2日 -
高水分の水稲収穫に適応可能なコンバインの車速制御技術 井関農機と開発 農研機構2026年3月2日


































