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JAの活動:JAの現場から考える新たな食料・農業・農村基本計画

【シリーズ:JAの現場から考える新たな食料・農業・農村基本計画】実践こそ不可欠 JAの存立問われる10年 阿部勝昭JA岩手県中央会副会長理事2020年4月16日

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 新型コロナウイルス感染症の拡大という事態のなかで、人々は生存に不可欠な食料を支える農業は「国の基」だとの実感を持つ。農業者が少なくなるなかでJAはこれまで地域の協業組織を基盤に食料供給を担ってきた。阿部氏はJAグループ一体となった新基本計画の実践が必要だと提起する。

阿部勝昭 JA岩手県中央会副会長理事阿部勝昭 JA岩手県中央会副会長理事

◆「国の基」実感するとき
 新たな「食料・農業・農村基本計画」が新たな年号、令和元年度末に閣議決定された。

 時あたかも、新型コロナウイルスが全世界的規模であらゆる分野、方面に影響を落としているなか、各国とも特に食料については自国供給を優先している旨、報道されている。

 日本国内においても、「緊急事態宣言」に伴い食料のまとめ買いが進んでいるが、こうしたかつて経験したことがない状況下にあって、食料自給は「国の基」と感じる国民は、決して少なくないのではないか。

 新たな基本計画は1999年に制定され、向こう10年を期間に策定し概ね5年ごとに見直されてきた。閣議決定に当たって江藤農林水産大臣は次世代に継承するための今後10年間の農政の指針となるものだとコメントしており、同様に中家JA全中会長も基本計画の「実践」こそが不可欠であり、JAグループは組織をあげて取り組む旨、談話を発表している。

 

◆地域営農ビジョンが基盤
 さて、県連JA、単位JAとしていかに目標達成に向け取り組んでいくかだが、初めて食料・農業・農村基本計画が策定されてから20年、平成30年までで農地面積は483万haから442万ha、農業就業人口は389万人から175万人となっている。農地は約1割減る一方で農業就業人口は半減以下となり、取り巻く環境が大きく変化している。

 この間、農地中間管理事業により特に水田を中心とする土地利用型の共同、協業組織であった任意組織は農地の受け皿となるべく法人化され農地の集積に拍車がかかったが、その基盤にあるのがJAが主体となって作成する「地域営農ビジョン」だ。それが基盤となって農地中間管理事業により集落営農法人の拡大につながったといえる。

 一方で法人化や営農組織の拡大により一見、農業者は少なくなったように見えるが、その多くの構成員は再受託による農作業の担い手となり、また農地の維持管理に従事している実態にある。
 加えて農地の集積、法人化の基礎に、JAが日頃活動している農家組合組織活動、女性部、青年部そして生産組織部会の育成が基本計画の基盤にもなっている。

 しかし、その組織基盤を支えるJAの経営が大きく変わってきている。総合JAとしての大方は信用・共済事業の利益により営農経済事業、組織、生活、文化活動を支えてきた構図が変わりつつある。

 

◆JA健全経営も「実践」
 信用、共済事業の利益が減少する中で、JAの本来あるべき営農経済事業が立ち行かなくなる先行き予想からJA組織の再編、いわゆるJA合併やJA内の支店再編、加えて採算性を指向した営農経済改革に取り組まざるを得ない状況にある。

 これに伴い従来まで農産物の生産基盤である生産部会、法人化や地域振興に寄与してきた農家組合や集落組織に従前のような対応が困難になっている状況にもある。

 こうしたJA経営と組合員・地域とともに築く農業・地域振興を両立するためJAが知恵を出し、現況の課題を乗り越えていくかが、JAグループとしての食料・農業・農村基本計画の「実践」に向けた端緒である。

 

◆食の変化に対応が必要
 今次の基本計画も食料自給率目標を10年後45%に目標に掲げているが、農業基本法から今回の新たな基本計画まで30年の間、目標に近づくどころか年々減少している。しかも分母である日本の人口も2008年にピークアウトしているにも関わらずである。これに伴い今回の基本法では、国内生産の状況を評価するための新たな設定として畜産物の飼料自給率を反映しない「食料国産率」を設定した。確かにこの設定では既に2018年で46%となっている。要はカロリーベース自給率では米や麦などの炭水化物消費が減少し、たんぱく質や油脂類の消費、家計支出が多くなった食の変化に対応しているともいえるが、それでも半分の食料は外国に依存しなければならない状況である。

 こうした、相変わらずの食料自給率目標であり、目標の数値は形骸化され色あせて見える。

 

◆農産物の供給責任果たす
 しかし、一方でJAグループは食料生産が基本であり国内農産物の供給責任を果たすことが基本である。そのために新たな基本計画の「実践」はもっともであり、前倒ししてまでやらなければならないと、中家JA全中会長の談話にもある。JAグループもプロダクトアウトからマーケットインに農産物生産の舵を切り、食の変化、多様化に応えようと変わりつつある。食の変化・多様化とともに生産現場も消費者の変化と多様化に対応しなければならない。

 そのためJAは生産基盤強化のため生産組織の法人化や農地集積、事業の導入を組織をあげて支援してきが、一方ではそうした支援先がJAから系統外への取り引きへと移行している事例も少なからずある。

 しかし、これで腐ってはいけない。せっかく支援してきた先にJAグループが一体となってマーケットインの実践提案をそれぞれ行っていくことが、カロリーベース自給率はもとより農業農村を支え、これから始まる基本計画の「実践」につながるはずである。

 この10年間は農業・農村の行く末を左右する正念場であることを国民の皆様にも実態を理解いただき、次の世代にしっかりつなぐことがJAグループとしての重大な役割であるとともにJAそのものの存立意義が問われると、肝に銘じなければならない。


 

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