JAの活動:未来視座 JAトップインタビュー
農のある豊かな社会を(1)神奈川県JAはだの組合長 宮永均氏【未来視座 JAトップインタビュー】2024年9月2日
「協同組合らしいJAづくり」を一貫して追求する神奈川県のJAはだの。2021年に代表理事組合長に就任した宮永均氏に「新たな協同」の方向や「共助」の意味を文芸アナリストの大金義昭氏が聞いた。
「積小為大」心に 夢持てる共生へ
神奈川県JAはだの組合長 宮永均氏
大金 副都心の新宿から小田急線でおよそ1時間、秦野市は丹沢山塊などの懐に抱かれた自然豊かな盆地の街です。JAはだのは協同組合運動の原則を誠実に貫き、個性的な歴史を積み重ねてきました。
宮永 秦野はかつて水府(茨城)や国府(鹿児島)と並ぶ日本三大葉タバコの産地として知られ、わが家も父の代まで葉タバコ栽培農家で、私はその長男として1958年に生まれました。葉タバコ栽培の収穫期は朝3時、4時に起きて畑に出る過酷な労働を強いられていました。小学生の頃は畑にお中飯(おやつ)を届けに行かされました。祖父と父は葉タバコ栽培を続けながら、今から65年前に温州ミカンの栽培にも着手しましたが、1960年代後半には開発の波がどっと押し寄せ、家の近くの畑は一部を宅地化しました。
農家の長男は農家を継ぐということで、高校卒業後JAに就職しました。他にやりたいこともあって反発したのですが、祖父はもちろん親類までやって来て説得されました。
大金 入組後に早稲田大学に?
宮永 大学では環境学を専攻し、地域資源論ゼミで学び卒業しました。大学での勉強はとても役だっています。また、なんと、人事課係長時代に労働組合執行部としても活動しました。人事課長を経て、二つの支所で支所長を4年経験。時間の合間を見てはできる限り組合員宅を訪問しました。現場は楽しかったですね。
大金 陸上競技のアスリートとか?
宮永 若い頃は陸上競技の全国大会で100㍍と4×100㍍リレーに出場した経験があります。
JAではその後、企画部門に異動しJA合併の事務局もしました。近隣5JAで合併の話が出ていたのですが組合員に反対の声が強く、理事会の決定により離脱しました。その後、金融・共済部門から企画管理部に戻った時も合併の話があったのですが、これも離脱しました。
大金 参事に就任したのは?
報徳に共感地域づくり
宮永 51歳の時です。役員からは改革を求められ、先輩職員からは突き上げられ、板挟みで苦労したこともありましたが、約6年間良い経験をさせてもらいました。57歳で退職し、地域からの推薦で専務を2期6年。2021年2月、山口前組合長の急逝で、次期に内定していた私が急きょ組合長に就任し、同年5月に再選されました。
今から三代前の組合長松下は叔父にあたります。身内に厳しかったのですが、二宮尊徳が幕末の農村を立て直した「報徳仕法」を学びました。秦野出身で「報徳運動」を広めた安居院(あぐい)庄七に光を当て、「組合員講座」などの教育文化活動にも力を入れて、JAをよりどころにした地域づくりに力を注いできました。
大金 「小さな協同」を組み込み、「至誠・勤労・分度・推譲」を現代的に実践してきた印象が強いですね。「訪問活動」なども「継続は力なり」の象徴です。
宮永 全職員が毎月26日と27日に現在約1万2000世帯にJA機関紙を配っています。職員時代には「こんな非効率な!」と思いましたが(笑)、50年続けています。しかし、長く続けると風化するので、現在では、毎年10月を「組合員訪問強化月間」に設定し、組合員訪問の必要性の認識を高めるようにしています。2003年からは組合員拡大にも取り組み、「6800人の組合員を1万人に!」「1万人を1万世帯に!」という目標を掲げ、いずれも達成してきました。そして、JA組織の男女共同参画を積極的に推進し、現在では、女性組合員37%、女性総代18%、女性理事は5人で20%になっています。
大金 座右の銘は?
宮永 二宮尊徳の言葉「積小為大(小を積んで大と為す)」です。小さな努力をコツコツ積み重ねれば大きな達成が得られるということです。
大金 JAを訪ねてびっくりするのは、本所のホールにグランドピアノが置かれ、フロアの壁面にはたくさんの絵画が展示されていて、美術館かカルチャーセンターのような雰囲気です。
宮永 グランドピアノは、2006年に私が提案して購入しました。購入の提案に役員は「はあ...? グランドピアノ!」という返事でしたが説得しました(笑)。現在でも女性部趣味の会コーラスグループなどに活用していただいています。また、JAはだのは市内の小・中・高校生を対象に「図画・書道・作文コンクール」を開催しています。
これは1997年の第21回JA全国大会で決議された三つの共生運動「次世代・消費者・アジア」の取り組みで大切にしてきました。アジアとの共生は、韓国の京畿道高揚市にある知道農協と1999年に姉妹提携、さらに京畿道にある韓国農協中央会披州市支部とも2008年に友好提携して、人の交流や文化交流をしています。
アジアとの共生は「次世代とアジア」を結びつけて、子どもたちの書道・図画の交換からはじめました。
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