JAの活動:農協時論
【農協時論】令和の米不足―「主穀」軽視改め食糧法に倣う時 元JA福岡中央会農政部長 髙武孝充氏2026年2月27日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は元JA福岡中央会農政部長で農学博士の髙武孝充氏に寄稿してもらった。
元JA福岡中央会農政部長 髙武孝充氏
1993年の「平成米騒動」は天災だったが、「2025年の米不足」は、すでに23年から不足のきざしがあり、それに対応しなかった農水省に責任があり、いわば人災であった。農水省は人口減を意識して需要は毎年10万t減少するものと思い込み、需要の逆転に対処できなかったのである。減反政策が単年度需給方式を前提にしていたことも問題であった。
メディアが「令和の米騒動」の原因を語らせた評論家のなかに、「自民党・農水省・農協のトライアングルがわが国の農業をダメにした」と非難してきた山下一仁氏がいる。山下氏は著書『コメ高騰の深層―JA(農協)の圧力に屈した減反の大罪』(宝島社新書、25年8月)で、米不足による米価高騰の原因は挙げて減反にあるとし、しかもJAが農水省に押しつけたものだとした。元農水省官僚であった山下氏が、食管制度下の生産過剰に対して、EUや米国のように輸出補助金をつけて過剰分を輸出で処理することができず、減反で生産量を抑制する以外になかったことはよくわかっていたはずである。しかも農協に責任を押し付けるなどもっての外だと、本紙の2025年8月15日付に九州大学名誉教授の村田武氏と共同執筆で「新自由主義礼賛・相互扶助否定」と題して、山下氏を厳しく批判したところである。
安倍政権下の米価低落のなかで、米生産農家、とくに10ha以上の販売量の多い農家は、JAへの出荷よりも高い価格で売れる米屋や消費者への直売に走らざるをえず、西日本のJAの多くは集荷率を30%台にまで落としていた。そこに降って涌いたような「令和の米不足」である。米の店頭価格の高騰のもとで、25年産の概算金の設定に各県の全農とJAは苦労させられることになった。米の卸売・小売業者だけでなく、「これはもうけられる」とばかりに一般流通業者までもがにわかに米市場に参入し、生産農家からJA概算金に一定の上乗せをした価格で、しかも即金で買いまくる動きに出たのである。各県全農とJAは、概算金を24年産の2倍前後にまで引き上げざるをえなかった。
さて、JA・生産農家にとって恐れるのは米価の暴落である。1998年に導入された「米経営安定対策」は、補てん基準価格を過去3カ年の移動平均によるものとし、下落した当年産価格との差額9割を生産者に補てんする。毎年基準価格が下がれば、補てん金も毎年下がる仕組みである。それがこの間の生産費を下回る米価となって、生産者を苦しめてきたのである。
メディアは消費者が安心して店頭で買える価格を「適正価格」だとし、高騰したままの店頭で精米5kgが4000円半ばの米価を適正ではないとしているようだ。確かにこの価格は異常な高値である。そもそも農産物価格が需給変動率を大きく超えて変動することは常識である。だからこそ米不足の戦前で政府は米穀の管理に苦労し、ついには戦時下の1942年には「食糧管理法」で、米の生産と流通を全面的な国家管理にせざるをえなかった。「生産者米価」は生産費を判断の基準とし、「売渡価格」は都市消費者の生活に配慮して決めるものとされた。
戦後も米不足が続き、農地改革後の自作農の経営安定も必要であったことから、「食糧管理法」は廃止されることなく継続された。さらに「米価審議会」によって、高度成長期には都市と農村の所得格差に配慮した「生産費所得補償方式」で生産者米価はインフレに応じて引き上げられた。それが米の生産でまともな所得が得られる稲作農家の生産を励まし、生産量が1400万tに達するまでになったのである。
精米5kgが4000円半ばという米価は、貧困化する消費者にとっては手が出ず、明らかに「適正価格」とはいえない。米に「適正価格」が求められるのは、それが国民食生活の「主穀」であるからだ。だから、WTOに対応して廃止せざるをえなかった「食糧管理法」に替わって制定された「食糧法」も、その第1条で「主要食糧の需給及び価格の安定を図る」としている。
ウクライナ戦争を契機に、肥料(とくに窒素肥料)や農業機械・資材の高騰はとどまるところを知らない。米生産費は経営規模が10haを超える生産者にとっても玄米60kgが1万8000円~2万円になっている。これを基準にJAの概算金が支払われれば、市場での相対取引価格は2万円~2万3000円になろう。これからすると、店頭での精米5kgの価格は3300~3500円(消費税を含む)程度である。
前農相の小泉進次郎氏が「価格破壊」をするのだと備蓄米を2000円で放出したのは「食糧法」を無視したものであった。
貧困家庭や学校給食・社会福祉施設などには、低価格ないし無料で政府が米を供給すべきである。米増産で店頭価格が下がり、JAは概算金を「再生産可能な価格」以下に引き下げざるをえなくなった場合には、その差額を「食糧法」に沿って、「直接支払い」で補てんすべきだというのが生産者・JAの願いである。
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