【食料高騰】輸入小麦 売渡価格19%値上げ 上げ幅過去2番目2021年9月8日
農林水産省は9月8日、10月から輸入小麦の政府売渡価格を19%値上げすると発表した。引き上げ率は過去2番め。中国の大量輸入と米国、カナダの作柄悪化で国際価格が高騰していることなどが要因だ。
5銘柄の加重平均価格は1トン6万1820円で4月期にくらべて1トンあたり9890円、19%の値上げとなる。6年ぶりに6万円台となる。
過去最大の値上げ幅は30%。2007年から08年にかけて米国が中東依存の石油から脱却するとの名目でトウモロコシを燃料へ仕向ける政策や、インド、中国など人口大国の経済発展、気候変動などで世界的に穀物価格が高騰した時期だ。
08年4月には6万9120円となり、10月期には過去もっとも高い7万6030円まで引き上げられた。
小麦の政府売渡価格が変動相場制に移行したのは07年のこと。国際相場の変動が激しくなりはじめた時期にあたる。4月と10月に直近6か月間を買い付け価格の算定期間として算定する。
10月期の算定期間におけるシカゴ商品取引所の小麦相場は1ブッシェル(小麦1ブッシェルは27.2kg)平均6.8ドルで前期の算定期間より平均で1割上昇した。
上昇の要因の1つがトウモロコシ価格の高騰。中国がアフリカ豚熱被害から回復し畜産再建でトウモロコシを大量に買い付けるようになっている。豚の飼養方法で近代化を進めており飼料が大量に買い求められている。その影響で飼料用小麦の需要も拡大。世界一の1.3億tの生産量がある中国は飼料用も含めて小麦を買い付けている。
中国の2020年1月~5月の小麦輸入量は231万tだったが、2021年同時期では459万tと約2倍となっている。
天候の異変による作柄悪化も影響している。
米国の北西部では日本が製菓用として使用するソフト・ホワイトを栽培しているが、6月から高温乾燥で作柄が悪化している。パンや中華麺用となるハード・レッド・スプリングが栽培されている中西部北部も同様だという。
パン用に使用されるカナダ産のウェスタン・レッド・スプリングも作柄悪化が懸念されている。サスカチュアン州の小麦の生育状況を示す指標のひとつ、エクセレントの割合は今年は0%との評価だという。昨年の同時期には20%だった。
ブリティッシュ・コロンビア州リットンでは熱波による山火事で橋がなくなり一時期は貨物鉄道の輸送に影響したという。
価格高騰のもう1つの要因が海上運賃の高騰。海上輸送は新型コロナウイルスの影響でコンテナ船が不足するなか、一部のコンテナ輸送が小型バルク船に置き換わったことで船不足が生じ運賃が上昇した。バルク船の奪い合いの状況もあるという。
為替も算定期間中は1ドル平均111円と円安傾向が続いている。
こうしたことから10月から売渡価格が上昇する。小売価格に与える影響は食パン一斤あたり2円程度の増、外食の中華ソバで1杯1円程度、家庭用の薄力粉で1kgあたり14円程度の値上げになると農水省は試算している。
消費者物価指数(総合指数)に小麦価格改定が与える影響は0.016%程度だと試算している。ただ、4月期の値上げでは0.004%程度の影響だったことからすると影響は4倍に上昇した。
農水省は「外食産業をはじめ国民に価格転嫁の負担をかけることになる」としながらも、今回の値上げが世界的な需要の高まりと不作、海上運賃の高騰などが要因で「要因をきちんと説明していきたい」と話す。
製粉企業が小麦粉価格を改定するのは過去の例では3か月後で12月下旬になるとみられている。
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