米の安定生産に不安の声も 備蓄で意見分かれる 食糧部会2023年3月2日
農林水産省は3月1日、食糧部会を開き米の基本指針の見直しなどを審議した。農水省は昨年10月に設定した需要量の見通しについて、その後の販売動向調査結果をふまえて見直しは行わないとし部会はこれを了承した。
農水省は米の販売動向について2022(令和4)年9から23年(令和5)年1月を調査したところ、前年の同期間に比べて1.3%増加したことが分かった。
これを年間で見ると約8万tの増加となる。一方、相対取引価格が上昇すると需要量が減少することも明らかになっており、令和4年産米の出回りからの平均価格が60㎏当たり前年産+1104円となっていることから、2万t減少すると見込まれるという。すなわち6万tの増加が見込まれる。
一方、トレンドから算出した令和4/5年(2022年7月~23年6月)までの需要量に増加分を加えると「691万t~697万t」となり、10月に設定した水準と同水準となることから見直しを行わないことにした。
米の需給環境は改善し米価も上昇、販売量もコロナ禍の影響が長引いた前年よりやや増えた。
需給改善に向けては主食用以外への作付け転換に産地は取り組み、5年産についても1月時点の作付意向調査で主食米を増やす県は見られない。委員の山波剛山波農場代表は「川下の需要に合わせて生産することが大事。引き続き一丸となって(需給が)崩れないように取り組みを」と需要に応じた生産の必要性を強調した。
平田勝越山形県農業法人協会会長は需給が改善し価格も持ち直したものの「生産コストが上昇しており、5年産に向け元気一杯のスタートではない。地域では70歳以上が半数で離農の引き金にならないか心配。食料安保のリスクにもなる。再生産できる持続可能な農業ができるか深刻に受け止めている」と現場の実情を話した。
菅原紋子ファーム菅原常務は「輸入をしているのに米の作付けを減らされているのは矛盾。価格も上がらず離農する人増えるのではないか不安」と話し、二村睦子日生協理事は「急激な高齢化で生産量の急減にも目くばりしなければならない」など生産力への不安を指摘した。
また、藤尾益雄神明ホールディングス社長は23年産が適正生産数量の699万tだった場合、24年6月の民間在庫量が180万t~186万tまで縮減する見通しになっていることから、これまでの例で米価が高騰するのではないかとして「価格の乱高下が生産者も含めて経営を混乱させる」と米価の安定対策が必要とした。
宮島香澄日本テレビ解説委員は食料安保の観点からも「価格の変動を抑えることが必要」と指摘し、「需要に応じた生産が次の世代につなげることになる」と話した。また、米の備蓄については需要も考えて水準を決めるべきで民間備蓄の役割も必要だとした。
これに対して馬場利彦全中専務は「100万tの米備蓄は食料安保の要であり慎重に考えるべき。民間備蓄で棚上げ備蓄はできない」と反論するとともに、価格については「再生産に配慮された価格をめざして需要に応じた生産に取り組んでいる」と強調した。
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