農林中金の市場運用など検証、農業・食品産業への投融資期待する意見も 農水省の有識者検証会2024年9月27日
農林水産省は「農林中金の投融資・資産運用に関する有識者検証会」の第1回会合を9月27日に開いた。今後、数回の会合を経て検証会として農林中金への投融資などの「助言」を取りまとめる。
農林中金の投融資・資産運用に関する有識者検証会
有識者検証会は農水省の経営局長が主催する。
杉中淳局長は、農林中金が国際的な規制水準を超える十分な自己資本を持ち、さらに新たに1.3兆円の資本調達を実施するなどで「財務の健全性は確保されている」と強調し、財務の健全性への懸念がないなか、農業経営の大規模化や多角化・複合化が進む農業・食品産業への投融資や資産運用について検証することは「大変意義がある」と話した。
ただ、今回の検証会は、メガバンクが過去最高益などの利益を計上しているなか、農林中金は24年度決算で約1.5兆円の赤字となる可能性があることから農水省は検証会に農林中金の資産運用について検証・分析することも求めた。
農林水産省によると資産構成のうち、メガバンクでは14%から23%台の有価証券が農林中金では46%と高く、一方、貸出金はメガバンクが35%から40%台を占めるのに対し、農林中金は18%にとどまっている。
また、農業部門への貸付金残高は2011年の300億円台から2018年までに600億円と増やしたが、その後は横ばいで推移している。単体総資産96.4兆円のうち、農業関連出資としてはアグリビジネス投資育成(株)に23億円の出資、農業者には641億円の貸出を行っているが、合わせても総資産の1%以下となっている。
一方、農水省は日本政策金融公庫が貸出資金を拡大してきたが、今回の会合で年1%づつ農業関連資金の需要が伸びると仮定すると、公庫は人員削減などで融資拡大に限度があり、農協系統など民間が融資できないと2030年度には1000億円の資金ニーズに対応できないとの試算を示した。そのうえで農水省は「農協系統をはじめ民間資金の活用が不可欠」との問題意識を示し、検証会に農林中金の農業・食品産業への投融資についての検証も求めている。
第1回の会合では農水省がこうした状況を説明するとともに、農林中金からオブザーバーとして出席した奥理事長らが最近の経営状況や投融資の取り組みを説明した。
委員からは、欧米を中心とした各国中央銀行がインフレ抑制のために利上げを行った際の農林中金の対応についての意見、ポートフォリオのあり方も含めた市場運用の状況と運用体制などガバナンスについての意見、農業者や食品産業への投融資を増やすべきなどの意見や投融資を増やす際の課題についても意見が出たという。
次回の会合は未定だが、委員から農水省と農林中金に示された質問について回答したのち、農水省と金融庁が論点整理を示し意見交換する予定としている。
【委員】
◯座長 川村雄介・グローカル政策研究所代表理事(元大和総研副理事長)
荒川隆・食品産業センター理事長(農水省元官房長)
稲野和利・日本証券奨学財団理事(元野村證券副社長)
佐々木百合・明治学院大学経済学部教授
丸田洋・(株)Light Field代表取締役(新潟・稲作、野菜)
家森信善・神戸大学経済経営研究所教授
萬木孝雄・東京大学農学生命科学研究科准教授(協同組織金融)
【オブザーバー】
伊藤豊・金融庁監督局長
奥和登・農林中金代表理事理事長兼執行役員
八木正展・農林中金代表理事兼常務執行役員
北林太郎・農林中金代表理事兼常務執行役員
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