温室効果ガス削減 中干し延長でJクレジット、今後さらに広がる勢い2024年10月3日
温室効果ガスの排出削減をクレジットとして売ることができるJクレジットで、2023年度、約4600ヘクタールとなった水稲の中干し延長に取り組む面積が、3年後、さらに広がろうとしていることが農協協会の調査からわかった。
この調査は、(一社)農協協会が全国各地のJAの協力で行った「JAの安心・安全な米づくりの防除対策について」の2024年度調査である(結果の概要は9月15日付「農業協同組合新聞」既報)。
市場の仕組みを使って温室効果ガス削減を進めるため、排出削減・吸収量を「クレジット」として国が認証し、取引できるようにするのがJクレジット制度だ。削減を進めた農業者らが売却するクレジットを企業などが買うことで、農業者らは所得が増え、企業などは購入したクレジット分を自社の排出量と相殺できる。
温室効果ガスの一つ、メタンは、日本での排出量の約4割が水田から排出される。メタン生成菌は嫌気性のため、中干し期間を延長して落水期間を長くするとメタン生成菌の活動が抑えられ水田からの排出量が削減される。水稲の中干し期間延長は2023年4月にJクレジットの対象となった。直近2年以上の平均より7日間以上中干しを延ばせばJクレジットが認証される。
近畿農政局が9月に公表した資料では、近畿地方にある10ヘクタールの水田のケースとして想定収入13万円としている(クレジット販売価格1万円/tCO2)。ここから取りまとめ事業者に手数料を払った残りが、中干し延長に取り組んだ農家の所得となる。
農水省によると、23年度は全国で約4600ヘクタールで水稲の中干し延長が実施され、認証されたクレジットは二酸化炭素(CO2)換算で1万4996トンだった。
農協協会調査では、Jクレジットによる中干し期間延長に取り組む農家の割合は全国平均で4%にとどまるが、農家の意向としては28%が「3年後の中干し期間延長」を予測していると回答。予測しているJAのうち、延長される面積の割合は27%になると見られる。
農水省大臣官房みどりの食料システム戦略グループは、「農業分野のJクレジットは、温暖化対策とともに、農家所得を向上させ経済を回す施策だ。中干し期間延長は農業分野でJクレジット認証の対象となる他の方法と比べ農家の負担が少ないこともあり、広がってきた」とし、「中干し延長のプロジェクトでは17社が登録されているが、4600ヘクタールはそのうち5社が取りまとめたもので、今年度は残り12社の分も加わりさらに広がると見込んでいる」と説明した。
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