農福連携で担い手対策に貢献、JAとの連携にも期待 日本農福連携学会設立2026年3月3日
日本農福連携学会が2025年12月14日に設立された。農業の担い手不足が深刻化するなか、農福連携への期待が高まっている。同学会の会長である千葉大学大学院園芸学研究院の吉田行郷教授に聞いた。
吉田行郷会長(千葉大学大学院園芸学研究院教授)
――学会設立の背景は。
会員は現在約170人で、農業分野だけでなく、老年医学や作業療法学、社会福祉学など医療・福祉分野の研究者も参加しています。国は2024年に「ユニバーサル農園」を打ちだし、支援していくこととしており、農福連携の対象が拡大しています。これを受けて、多様な分野の研究者が、現場の実務者とも連携して、研究成果をフィードバックする共通のプラットフォームが必要だと考え、それには学会という形がいいだろうということで設立しました。
ユニバーサル農園は、オランダのケアファームが先行例で、障がい者が働く農場というより、農業を通じてケアを行う場です。引きこもりの方などの社会復帰支援や、認知症のケアを行うことを目的としています。海外の研究では農作業で認知症の進行が緩やかになり、要介護化を遅らせる効果も報告されています。障がい者中心だった農福連携を、社会的課題を抱える人達にも広げていくために政策的に位置づけられました。
――具体的な事例の数は。
農家の労働力不足と福祉の障がい者就労の場の確保のニーズが合致し、現在は福祉事業所約4000、農業経営体側約4000と、全体で約8000主体まで拡大しています。すでに、就労系福祉事業所の約2割が農福連携に取り組んでおり、農業県では、これが3~4割に達します。農家側はまだ全体の1%未満ですが、日本農業法人協会の調査では会員の25%が実施していました。これは、農福連携が収穫期だけの労働需要にも対応できるためで、農福連携がなければ大規模法人の経営が難しくなる可能性もあります。
――JAの役割は。
日本農福連携学会設立総会の様子
引きこもり支援では、JA全農おおいたの「菜果野(なかや)アグリ」が象徴的で、日雇いで好きな時間に働ける仕組みにしたことで、多くの引きこもり状態にあった人が参加して「見えない労働力」を確保できたと言われています。JAの出荷調整施設は障がい者に適していて、JA土佐くろしおではベルトコンベア速度を遅らせて、障がい者の能力に応じた働き方と賃金体系にしました。JA甘楽富岡では出荷調整での障がい者の雇用から始まり、現在は人手不足の農家へのマッチングへ発展しています。JAぎふの特例子会社「はっぴぃまるけ」も障がい者雇用の先進例で、ノウフクアワードを受賞しています。熊本のJAでは重量判定機械の導入で障がい者の作業可能範囲が広がり、JA帯広大正では特別支援学校の生徒が実習として長いもの選別に参加しています。現場は広がっていますが、横展開が課題です。
一方、非農家出身の若者が農業法人や農福連携に取り組む社会福祉法人で経験を積み独立する流れも出てきています。鳥取県では新規就農対策として農福連携を位置づけており、新規就農者と福祉事業所とのマッチングに力を入れています。農福連携は地縁のない就農者にとって大きな支えになります。こうした新規就農者への支援を、JAにも期待したいですね。
――外国人労働者との関係は。
外国人技能実習生は通年雇用が前提になりやすい一方、農福連携は繁忙期のみでも対応できます。静岡県磐田市の大規模法人では両者を併用しています。実習生は数年で帰国しますが、障がい者は時間をかけて成長し長期的に戦力になります。役割が異なるため併用することが合理的との考えによるものです。
――今後の活動は。
農福連携の効果についてエビデンスの蓄積構築が重要です。認知症は診断から要介護まで平均2年とされていますが、進行が遅くなれば、医療費削減にもつながります。知的障がい者は、支援次第で20代後半まで知的に成長できると言われています。こうした科学的根拠を示すことで社会からの農福連携への理解が進むでしょう。
千葉県松戸市の「小金わくわく農園」では、週末に活動を行っていますが、平日にも作業日を設けて、静かにゆったり作業できる時間を提供することで、引きこもりの人達の参加が進みました。静岡県伊東市の「富戸ケアファーム」や大阪の「晴耕雨読舎」など、認知症でも関われる農園づくりも始まっています。
知的障がい者の方も、3年ぐらい継続して農作業を行えば、能力が大きく伸びます。その後も20年以上も戦力なることを考えれば、戦力になるまでは研修期間と考え、能力の向上に合わせて賃金を上げていくことも可能です。増員も1人ずつ入れて、丁寧に育てていけば貴重な戦力になります。こうした取り組みでのJAの支援に期待したいですね。また、障がい者の方でも簡単に操作できるユニバーサルな農業機械が開発・普及すれば、障がい者や高齢者、女性も農業に参加しやすくなり、農業の持続可能性は高まると考えています。
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