農政:今こそ 食料自給「国消 国産」 いかそう 人と大地
【今こそ食料自給・国消国産】「国消国産」 自分ごととして実践を JA全中会長 中家徹氏メッセージ2022年10月17日
本紙特集「今こそ食料自給「国消国産」 いかそう 人と大地」にJA全中の中家徹会長にメッセージを寄せてもらった。ロシアによるウクライナ侵攻、気象災害など最近の世界情勢もふまえ、食と農の大切さを情報発信するとともに、多くの国民が「国消国産」の意義を理解し「自分ごと」として、生活のなかで実践してもらうことに期待を込めている。
JA全中 中家徹会長
【基本法の検証】
まさに今、私たちの「食」を取り巻く環境が、大きな転換点を迎えています。
未だ収束が見通せないロシアによるウクライナ侵攻、円安の影響、さらには、頻発する自然災害などにより、「食」を支える「農」を取り巻く環境は依然として厳しい状況にあります。特に、原料の輸入依存度が高い肥料、燃料、飼料といった生産資材の高騰が続くなか、営農継続が危ぶまれるほどの事態になっています。
これまで想定しえなかった新たな食料・農業を巡る課題に直面し、身近な国民の食と農への関心があらためて高まっていると実感しています。
こうした現状をふまえ、政府では、1999年に制定された「食料・農業・農村基本法」の見直しに関する議論が始まり、私も現行法の「検証部会」の委員として、参画することとなりました。
今後、JAグループとしても、基本法の見直しにかかる基本的考え方をとりまとめていきますが、とりわけ3つの視点が必要だと考えています。
1点目は、現在の食料安定供給リスクの視点です。「食料自給率の低迷」、「生産基盤の弱体化」、「多発・激甚化する自然災害」、「世界的な人口増加」、「国際化の進展」といったリスクは、基本法施行後のこの20年余りで、少しずつ増大・増幅しているにも関わらず、国民・消費者のなかで十分理解をされてこなかったと感じています。あらためて、基本法の制定時から今日に至る環境の変化や将来の見通しをふまえ、検討していくことが重要です。
2つ目は、「食料安全保障の強化」の視点です。これまでも「食料安全保障の確立」を一貫して訴えてまいりましたが、基本法の検討においては、国内の農業生産の増大を図ることを基本に、食料自給率の向上をはじめとする食料安全保障の強化の視点が重要であると考えます。
3つ目は、「国民理解」の視点です。食料安定供給リスクとあわせて、農業・農村の現状の厳しさもなかなか理解されていないというのが実態ではないでしょうか。生産コストが上昇するなか、農畜産物は価格転嫁が難しい現状があります。適切な価格形成ができていないというのが大きな悩みになっています。消費者の皆さまにもご理解いただくことが重要であり、持続可能な食と農をどのように実現していくか、消費者の皆さまに「食」と「農」への理解を深めていただくことが不可欠です。
【国消国産】
こうした状況をふまえ、JAグループでは、一昨年から「国民が必要として消費する食料はできるだけその国で生産する」という「国産国消」の考え方を提唱しています。昨年は、国連が制定した10月16日の「世界食料デー」に合わせ、同日を「国消国産の日」に制定し、さらに本年は、10月を「国消国産月間」と位置づけ、重点的な情報発信をすすめています。
具体的には「国消国産月間」では、国民的オピニオンリーダーであり、JAグループサポーターである林修先生と連携し、消費者に向け、「食料安全保障と国消国産」について考えてもらうための資材を作成しており、これを活用し、全国のJAグループ各組織がそれぞれの工夫のなかで、イベントや街頭宣伝の開催、JA広報誌やウェブ・SNSを通じて、PRに取り組んでいます。
この資材を読んでいただいたことを契機に、JA全農が運営するJAタウン内に開設した送料無料キャンペーンサイトにより、旬の国産農畜産物を購入していただき、満足してもらうこと、その後も国産農畜産物を継続的に購入するという行動変容につなげたいと考えています。
さらに地域に密着した取り組みとして、全国約1500店舗のJA直売所を基点として、新鮮で安全・安心な農畜産物を楽しんでいただくことを目的とした国消国産キャンペーンを展開しています。
こうした取り組みの一環として、10月16日の「国消国産の日」当日には、東京有楽町駅前広場でキックオフイベントなる「国消国産秋まつり」を開催しました。
これら「国消国産」の意義等の情報発信を通じ、「食」や「農」の実態や課題に理解を深めていただくとともに、身近な食生活において、国産の農畜産物を手に取っていただくことが、食料の安定供給をはじめ、農業・農村を支えていただくことに繋がることと考えています。
【10年後のめざす姿の実現に向け】
昨年の第29回JA全国大会で決議した10年後のJAグループのめざす姿は、「持続可能な農業の実現」「豊かでくらしやすい地域共生社会の実現」と「協同組合としての役割発揮」です。環境がどのように変わろうとも、JAグループはそれぞれの事業活動を通じて、食と農を基軸として地域の根ざした協同組合であり続けていきます。特に、その土台として重要と考えるのは、「食」「農」「地域」の実態や「JA」の取り組みについて、組合員のみならず、地域住民や消費者の方々など幅広い関係者の信頼・共感が得られるよう、国民理解の醸成をすすめていくことです。
最近の世界情勢などもふまえ、「国消国産」の意義や、「食料安全保障」について理解を深めていただき、より多く消費者の皆さまに、生活のなかで、実際に国産の農畜産物を手に取っていただけるよう、より身近で「自分ゴト」として「国消国産」を実践していただくことをめざし、「国消国産月間」以降もJAグループ一体となった情報発信に取り組んでまいります。
重要な記事
最新の記事
-
飼料用米の支援 見直しを 財政制度等審議会が建議2025年12月3日 -
緑茶の輸出額 前年比2.3倍 農林水産物・食品の10月輸出実績2025年12月3日 -
JA貯金残高 108兆731億円 10月末 農林中金2025年12月3日 -
米の安定供給どう支える? 直接支払めぐり論戦 共助の「基金」提案も2025年12月3日 -
平和的国防産業の寿命【小松泰信・地方の眼力】2025年12月3日 -
【農と杜の独り言】第6回 野菜・あなたのお生まれは? 食の歴史知る機会に 千葉大学客員教授・賀来宏和氏2025年12月3日 -
童門氏の「恕」 混迷時こそ必要 "協同のリレー" JCA客員研究員・伊藤澄一氏2025年12月3日 -
【異業種から見た農業・地域の課題】担い手が将来展望を描けること 金融×人材×資源で強靭な地域に 一消費者の視点から 元大蔵省・藤塚明氏に聞く2025年12月3日 -
ご当地牛乳「リソルホテルズ」でウェルカムドリンクとして提供 JA全農2025年12月3日 -
毎年大人気!希少な岐阜の「堂上蜂屋柿」を販売開始 JAタウン2025年12月3日 -
稲作生産者の生産現場に密着 生産者ドキュメンタリー動画を公開 JA全農2025年12月3日 -
JAタウン「ホクレン」北海道醸造の日本酒10商品「送料負担なし」で販売中2025年12月3日 -
冬休みの牛乳消費拡大を応援「メイトー×ニッポンエール 冬のおいしいミルクコーヒー」発売 JA全農2025年12月3日 -
「佐賀県産うれしの茶フェア」5日から全農直営19店舗で開催 JA全農2025年12月3日 -
病院経営の改善に求められる課題は? 「医療の質と生産性向上」セミナー 日本文化厚生連2025年12月3日 -
安全性検査クリアの農業機械 1機種7型式を公表 農研機構2025年12月3日 -
【人事異動】日本製紙(2026年1月1日付)2025年12月3日 -
鶴岡共乾施設利用組合第1回総会開く JA鶴岡2025年12月3日 -
【役員人事】井関農機(12月1日付、12月31日付、1月1日付)2025年12月3日 -
鳥インフル 米国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年12月3日



































