農政:今こそ 食料自給「国消 国産」 いかそう 人と大地
【今こそ食料自給・国消国産】JA組合長座談会 国民的課題の自給力 誇りと所得を両輪に(1)2022年10月20日
日本の農業の未来は、いうまでもなく各地域の特色ある農業の振興にかかっている。JAはその核になる組織であり、地域住民、消費者との結節点としての役割発揮が期待されている。地域農業振興と「国消国産」の実現に向けJA組合長に話し合ってもらった。

【出席者】(写真左から)
JAぎふ組合長(岐阜県) 岩佐哲司氏
JAグリーン近江組合長(滋賀県) 大林茂松氏
JA松本ハイランド組合長(長野県) 田中均氏
(司会・進行)文芸アナリスト 大金義昭氏
「積み上げ方式」で農業振興ビジョン
大金 長引くコロナ禍やウクライナ戦争、円安など直近の厳しい情勢の中で、お三方とも大変なご苦労をなさっていることと存じます。まずはそれぞれの地域が抱える問題・課題や取り組みからお話しいただけますか。
田中 問題は農家数の減少と高齢化、これに尽きるかなという気がします。数字でいうと、ここ十数年で毎年1%、数にして百数十戸ずつ農家戸数が減っています。新規就農者も30~50戸あるのですが追いつきません。
特に販売農家は20年前と比べ3分の1減っています。農協の取扱高も30年前、松本平農協の時に200億円あったのですが、去年の数字は192億円。今年は何とか200億円いけそうな感じですが、30年前200億円あったものが、3回の合併を経てまだ到達しない。「車座集会」を開き、どういう品目をどの程度やっていこうかと。上から「これだけやって」でなく「積み上げ方式」で農業振興ビジョンを作っています。
農業元気づくり支援対策では、3年間で約1億6000万円の「真水」の支援をしました。JA全中のセミナーで刺激を受け、野菜から果樹から機械から10くらいのメニューを作りました。目玉は野菜です。いろいろ考えたのですが「面積拡大でストレートにいこう」とし、1反(10a)増やすと、増えた1反に対し3万~12万円出すことにしました。翌年、翌々年、継続していなければ返してもらう。事務方は大変でしたが、おかげでけっこう増えました。次の3年間は「夢づくりサポート事業1」ということで、同じく3年間1億6000万円規模で中核農家への支援を実施。今は「サポート事業2」、対象は多様な農家にしました。それだけで大きくは変わりませんが、背中を押すことはできます。
もう一つは営農指導ですね。今のままだと赤字が大きいので、営農指導員は減らさざるを得ない。減らしても機能を維持するため、営農指導員の下に営農相談員を設け、部会会計や情報連絡など営農指導のお手伝いをしてもらう。要は営農指導員が営農指導に専念できる体制づくりです。営農指導センターを果樹は四つ、野菜は九つ、現場に近いところに設置しています。あとは、先進農家の皆さんに若手の営農指導員を育てる営農アドバイザーをしてもらっています。張り合いがあるようです。ただ、高齢化は深刻で、65歳以上が70%で75歳以上が4割。10年たったらどうなるかが危惧されます。
誇りが持ててもうかる「活力ある農業」を
JAぎふ組合長(岐阜県) 岩佐哲司氏
岩佐 中期経営計画を作るとき「活力ある農業と豊かな地域社会をめざす」というキャッチフレーズを考えたのですが、理事会で「活力ある農業とは?」と問われ、私自身明確な返答ができなかった。そこで常勤役員で議論しました。そして、「農家が誇りを持てる農業」「もうかる農業」、この二つができたら活力ある農業ではないかとなったんです。そこで考えたのは、誰かに「ありがとう」と言ってもらえ、誇りが持てる農業にするには、デジタルを使った発信など単協ではむずかしいので、デジタルではなくてアナログではないかということです。
アナログは地産地消。でも地産地消には、「俺が作ったものお前食えよ」みたいな上から目線がどこかあります。ではなくて、「あなたが欲しいものを我々が生産します」ということなら、消費者は「いつもありがとう」と言ってくれる。すると組合員は「また頑張って作ろうか」となる。そういう地域を作ることをめざしています。
有機農業は、尖った消費者が望むものを尖った生産者が「マルシェ」を通じて結ばれているというイメージがありますが、こういうやり方では広がっていかないんじゃないか。ただ、農協が加わり、面として広げようとすると問題は二つ。一つは良質な堆肥をどう作るか。もう一つは、生産者は有機・無農薬アレルギーということです。たしかに果樹はなかなかできない。でも、米はわりと確立されています。できるものから作りたいと思っています。広げるためには栽培暦が必要です。暦は研究機関や県に協力を仰ぎながら作っていきたいと考えています。
堆肥については、JAぎふでは牛ふん堆肥を作り2tトラック1車4000~5000円で出しています。ペレット化も難しくて、有用菌が過熱すると死んでしまうことをどうクリアするか。カーボンニュートラルでバイオ燻炭にするという手法もあるようなので、研究しています。高品質な有機肥料を作れるかが肝になると思っています。
担い手としては、会社を辞めた人を集め、ほ場も提供し営農指導もしています。岐阜大学を退官した人は、「200坪で月10万円の農業をする」と言っています。月10万円なら、経費を引いて年100万円になる。そんな農家が100軒生まれたら1億円の売上高になります。そういった人から突破口を切り開いてもらう。若い専業農家に話すと「少しはやる」と言います。思いのある人たちに有機農業をやってもらって買い上げ、売っていくというのが「活力ある農業」でめざしている方向です。
先々月から職員向けにYouTubeで動画配信をしています。前回は有機について話しました。すると「今の産直店は午前中で終わる。そんなところでどう売るんですか」と辛らつな反応が返ってきました。それはそうだなと思い、生産者に売り場に立ってアピールしてもらうとか、野菜ソムリエに説明してもらうとかを模索中です。生協との提携も始めています。
「コロナ・ウクライナは災害」 積立金取り崩しも
JAグリーン近江組合長(滋賀県) 大林茂松氏
大林 私のJAは滋賀県東部の穀倉地帯で、以前は60万俵くらい米を集荷していましたが今は半分近くまで減ってきています。また、集落営農法人は現在130法人ほど組織化し、その構成員は6000人弱となっており、正組合員の約75%を占めています。そんな関係で平成16(2004)年には正組合員と准組合員との比率が逆転しました。この頃が、集落営農を進めてきた時期とちょうど合致します。後継者不足から集落営農を発展させてきたんですが、今はまた集落営農の後継者不足に直面しています。
組織した頃は40~50代の比較的若い人が多かったのですが、そのまま年を重ね、後ろを振り向くと後継者が見当たらないし生産性が向上しない問題も抱えています。米とか麦とか大豆を作る技術や知識がなかなか引き継がれないからです。一集落営農あたりの耕作面積は約40haくらいありますが生産量が落ちてきています。
そして、昨年あたりから経営が赤字になる集落営農法人もチラホラ出ています。米価が下がった影響が大きいですね。さらに、来年からの「インボイス制度」(売り手が買い手に対して正確な適用税率を伝える制度)における従事分量配当にかかる消費税問題も悩みの種で、それに肥料・農薬の値上げが追い打ちをかけています。
また、和牛の産地でもありますので、飼料の値上がりで大変です。酪農は配合飼料だけでなく牧草等の粗飼料も多く食べさせていますが、それも高騰してきましたので肉牛にはない厳しさがありますし、すでに廃業した酪農家も出ています。
今年の3月には、総額1億円の支援を農協独自で実施しました。以前からもしもの時に備えて3億円の積み立てをしていたのですが、コロナもウクライナも農業者にとっては災害だということで取り崩しました。しかし、まだまだ危機的な状況が続き、集落営農法人も大きな曲がり角に来ています。
現在集落営農も含めて認定農業者が600人ほどいますが、そのうち130~150人が法人化しており、残る約400人がほぼ大規模経営の農家です。JAではTACチャレンジ事業と銘打って、TACと相談し新しい作物にチャレンジする農業者に、毎年総額で2000万円ほどつぎ込んで支援しています。たとえば集落営農の育苗ハウスを使わない期間に小菊や、麦の新しい品種へのチャレンジや施設整備などにも支援しています。
それと、支店は15ありますが、もともとワンストップ支店、つまり「支店に行けば何でも済ませられる」という形でやってきましたが、そうすると営農指導員の専門性がなかなか保てません。そこで今年から営農振興センターを6カ所設置して営農指導員を集め、地域ごとに特徴を持った営農指導をしていこうと考えています。
米に代わる作物といっても出口対策が大事ですから、農協と行政と市民の方から出資いただいて、地域でとれたものは地域で食べていただこうと地域内中規模流通を具現化する地域商社「(株)東近江アグリステーション」を立ち上げて地元を中心に販売しています。
大金 様々な課題に挑戦される中で、食料自給率の向上についてはどうお考えですか。
大林 食料自給率問題がクローズアップされていますけれど、農水省は畜産では飼料を除いた自給率、食料国産率を出していますね。私はそうでなくて、自給率というなら牛など家畜が食べる餌も含めて考えるべきだと思います。たとえば牛が食べる牧草は200万tくらい輸入されていますし、トウモロコシも1600万t以上輸入されていて、約70%が家畜の餌です。餌も自給しないと自給率は上がりません。
JA管内には「近江牛」の大産地があります。水田はほ場整備が進み、米も野菜も牧草もトウモロコシも作れます。山間地では不向きな作物もありますけれど、全体的には管内の農地は汎用性が高い。その条件を生かして牛の餌を作り、牛から出るふん尿をほ場に戻すことでお互いがコストを抑えつつ地域の中で好循環が生まれると思っています。「耕畜連携」で水田の力を利用して「国産の餌」を生産し、よりおいしい牛肉を作ることにも挑戦しています。
畜産地帯の外のエリアでは、輸入の多いタマネギやジャガイモなど加工用に使われるものも含めて一大野菜団地を、集落営農組織を中心に210ha規模でやっていきたいと考えています。そのことで所得を上げて世代交代を促し、それがひいては自給率向上にもつながると考えています。
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