ネオニコチノイド系殺虫剤の新しい作用機構を解明 薬剤抵抗性獲得の仕組みも発見 近畿大学2023年3月13日
近畿大学農学部応用生命化学科教授松田一彦らの研究グループは、筑波大学、東北大学、国立遺伝学研究所、SyntheticGestalt株式会社とロンドン大学との共同研究により、世界的に広く使用されている「ネオニコチノイド系殺虫剤」の作用機構を解明。さらに、標的遺伝子の破壊や抑制により薬剤への抵抗性を獲得するというこれまでの常識を覆し、遺伝子の抑制によって薬剤への感受性が高まるという、逆の仕組みを初めて発見した。
ネオニコチノイド系殺虫剤の作用機構の概要図
近年使われている殺虫剤は、昆虫の神経に作用して効果を発揮する薬剤、脱皮や変態など昆虫の成長を制御する薬剤、昆虫に筋収縮を引き起こし摂食停止させて死滅させる薬剤などの数種類に分類される。なかでも、神経に作用する薬剤が多く、世界で最も広く使われている「ネオニコチノイド系殺虫剤」は、昆虫の中枢神経に存在するニコチン性アセチルコリン受容体の機能を阻害することで行動に影響を与え、殺虫効果をもたらす。
ネオニコチノイド系殺虫剤はヒトに対しては安全と知られているが、使用の拡大とともに、ハチなど殺虫対象ではない昆虫のへの影響が懸念されている。さらに、一部の水生生物や昆虫を捕食する鳥類への影響も報告されていることから、ネオニコチノイド系殺虫剤の詳細な作用機構解明が求められている。
ネオニコチノイド系殺虫剤の効果に関わる昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体は、αサブユニット(ショウジョウバエでは7種)とnon-αサブユニット(ショウジョウバエでは3種)が5つ集合した構造。5つのサブユニットの組み合わせの種類は膨大にあり、ネオニコチノイドはそれらのいくつかに選択的に結合することで昆虫の神経伝達を阻害すると考えられるが、詳しいメカニズムは不明だった。
今回研究グループは、特定の神経細胞内で一緒に発現しているサブユニットを特定し、独自の技術を用いて、ニコチン性アセチルコリン受容体を再構築。その受容体を用いて、各サブユニットがネオニコチノイド系殺虫剤の効果にどのように影響するかを検証した。
その結果、α2サブユニットが存在すると、ニコチン性アセチルコリン受容体に対するネオニコチノイドの活性が低下することがわかった。さらに、ショウジョウバエのα2サブユニットの遺伝子を抑制したところ、ネオニコチノイド系殺虫剤への感受性が高まることも判明。一般的に、標的遺伝子の量が減ると薬剤の効果は低下するが、逆のケースも存在することが明らかになった。
同研究成果により、ネオニコチノイド系殺虫剤の作用機構の一端が明らかになり、これまで常識とされていた薬剤への抵抗性獲得の原理を覆す仕組みが存在することが示唆された。
同研究に関する論文は2月16日、遺伝学やゲノミクスに関する国際的な学術誌『PLOSGenetics』にオンライン掲載された。
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