わずかな広葉樹の大きな役割を検証 人工林内の広葉樹の保持が効率的に鳥類を保全2023年2月14日
森林研究・整備機構森林総合研究所、北海道立総合研究機構森林研究本部林業試験場、アメリカ地質調査所の研究グループは、針葉樹人工林内に生育する広葉樹を伐採せずに残存させることが費用対効果の高い鳥類保全手法となりうることを大規模野外実験の7年間にわたる調査から明らかにした。

人工林が世界的に拡大し、木材生産上重要な役割を担うようになった現在、人工林で木材を生産しながらいかに生物多様性を保全するかは重要な社会的課題。人工林の中に自然に生育する樹木を保持することは有望な手法だが、それにともなう木材生産量の減少に見合った保全効果を上げられるのか議論を呼んでいた。
北海道有林では、トドマツ人工林を伐採する際、林内に自然に生育する広葉樹を残す「保持林業」の大規模実験が行なわれている。同研究グループは、生育する樹木をすべて伐採して収穫する皆伐区、1haあたり10本の広葉樹を伐採せずに残す少量保持区、50本残す中量保持区、100本残す大量保持区を設定し、伐採の前から7年間にわたって生息する鳥類を調査。広葉樹の保持量に対して鳥類の個体数が伐採前後でどのように反応するのか検証した。
その結果を解析したところ、少量の広葉樹を保持(人工林の木材生産量をわずかに減少させる)ことにより、トドマツを伐採する前も後も多くの鳥類を保全できることが示された。
SDGsを達成するためには、木材生産と生物多様性保全を両立する必要があり、針葉樹人工林内に生育する広葉樹の保持が森林施業のガイドラインや森林認証制度等に組み込まれることで、林業分野で生物多様性の保全が促進されると考えられる。
同研究成果は、2022年12月22日に『Ecological Applications』誌でオンライン公開された。
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