キュウリのベゴモウイルス抵抗性遺伝子を特定 農作物のウイルス病被害低減 近畿大学2024年10月7日
近畿大学農学部(奈良市)農業生産科学科准教授の小枝壮太氏、近畿大学大学院農学研究科農業生産科学専攻博士前期課程2年の山本千尋氏(研究当時)、同2年の山本浩登氏(研究当時)らの研究グループは、世界で初めてキュウリのベゴモウイルス抵抗性遺伝子を特定した。
ベゴモウイルスに感染しても、抵抗性を持つキュウリでは病徴がほとんど見られない。
(A)上:感受性、下:抵抗性キュウリ、(B)左:感受性、右:抵抗性キュウリ、
(C)左:感受性、右:抵抗性キュウリ
農業生産において、ベゴモウイルスが世界中で引き起こしている経済的被害は甚大で、解決が強く求められている。ウイルスの感染は、タバココナジラミとよばれる昆虫により媒介されて広まるため、生産現場では従来殺虫剤の散布によって対策してきたが、過剰な農薬の使用により、現在では農薬が十分に効かないタバココナジラミが世界各地で発生している。
インドで初めて感染が報告されたベゴモウイルス種「tomato leaf curl New Delhi virus(ToLCNDV)」は、インド亜大陸だけでなく、地中海周辺国、中近東、東南アジア、東アジア(中国、台湾などを含む)にも分布を拡大。主にキュウリ、メロン、カボチャなどのウリ科作物において被害をもたらしている。
近年、同研究グループを含めたさまざまな先行研究により、トマトやトウガラシなどのナス科作物ではベゴモウイルス抵抗性遺伝子が特定され、ウイルス抵抗性品種の育種に利用されている。しかし、他の植物では抵抗性遺伝子が特定できておらず、特に被害の大きいキュウリなどのウリ科作物では、遺伝子の特定が強く望まれていた。
同研究グループは、先行研究で、スペインおよびインドネシアにおいてベゴモウイルスの一種であるToLCNDVを単離して、キュウリなどへの効率的なウイルス接種法を確立。これらの研究成果を用いて、キュウリのベゴモウイルス抵抗性を遺伝子レベルで解析することで、抵抗性遺伝子の特定を試み、約1.5万の遺伝子から1つの原因遺伝子「RNA-dependent RNA polymerase(RDR)」を特定した。
また、ウイルス誘導性ジーンサイレンシングを用いた解析から、RDRによりキュウリがToLCNDV抵抗性を獲得していることも明らかにした。ToLCNDVに弱い従来のキュウリと、抵抗性を示すキュウリが持つRDRのDNA配列を比較することで違いを発見し、その差異を判別するDNAマーカーを開発することで、ToLCNDV抵抗性の個体を確実に判別する手法を確立した。
同研究成果により、抵抗性を持つ個体を判別する手法も確立できたことから、今後、品種改良によってキュウリ生産におけるウイルス病の被害が軽減できると期待される。
同研究に関する論文は10月2日、植物学分野の国際学術誌『BMC Plant Biology』にオンライン掲載された。
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