線虫が昆虫を殺生する新たな手法を発見 生物防除資材の開発に期待 森林総合研究所2025年2月13日
森林研究・整備機構森林総合研究所関西支所とノルウェーの研究グループは、線虫が寄生した昆虫に毒成分を注入して死亡させるという、これまで知られていない線虫による昆虫殺生手法を発見した。 線虫の生産する毒成分が昆虫にも有効であることを示す初めての例となり、今後、新しい生物防除資材の開発に役立つと考えられる。
図:A タマバエの成虫、B タマバエから離脱した線虫、C線虫寄生を受けたタマバエ幼虫、
D 線虫寄生を受けたタマバエ成虫。タマバエ成虫の体長は約2.8mm、線虫の体長は約0.9mm。
同研究グループは、昆虫に外部寄生し、毒成分を注入して宿主昆虫を死亡させる線虫を世界で初めて発見。線虫が昆虫を殺生する(死亡させる)方法としてこれまで知られているのは、昆虫体内に侵入して過度の栄養吸収を行い栄養失調で死亡させる例、もしくは昆虫体内で昆虫病原細菌を放出して敗血症を起こさせるという例しかなかった。
同研究では、ノルウェーの森林において、タマバエの1種、Xylodiplosis nigritarsis(図A)から、昆虫寄生線虫、Ektaphelenchus winteri (図B)を検出し、そのタマバエへの影響、線虫の形態観察、DNA解析を行った。この線虫は、過去に一度だけ、イギリスでタマバエの外部寄生虫として報告されているが、昆虫への直接的影響は調べられていなかった。
観察の結果、この線虫は口器が針の形をしており、この針を外部からタマバエに突き刺して体液を吸うという形で寄生していることが確認された(図C(幼虫)、図D(成虫))。寄生されたタマバエの状態を観察したところ、いずれも麻痺、もしくは死亡していた。
今回発見された昆虫殺生方法は、線虫が昆虫体内に侵入するのではなく、外部から、口器にある針を用いて、毒成分を注入するというもので、寄生よりは捕食に近い形であると考えられる。
線虫の中には、他の線虫に針を刺し、麻痺毒と消化液を注入して獲物の内部を溶かしながら捕食する、線虫捕食線虫というグループがある。同研究の線虫のDNA解析を行ったところ、線虫捕食線虫に近いことが確認されたことから、線虫の昆虫殺生能力は、この線虫捕食能力に由来するものであると考えられる。
研究グループは、こうしたな線虫が日本でも発見されれば、害虫防除の新規手法開発につながると考えている。
同研究成果は2月5日、『Nematology』誌でオンライン公開された。
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