コラム

「正義派の農政論」

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【森島 賢】
TPP問題で農協に悪態をついた元内閣官房長官

 仙石由人元内閣官房長官が、またしても、得意の悪口雑言を吐いた。こんどは、TPPに反対する農協が相手である。友情ある批判には、ほど遠い。
 発言の内容をみると、中身は全くない。だから、これは批判ではない。ただ、農協が憎い、というだけの発言である。批判なら、どこの農協の、どの活動が...、という具体的な指摘がなければならない。だが、それはなくて、TPP反対で農協が「わめいている」、というだけある。失礼でさえある。ちょうど、幼児が「○○ちゃんは嫌い」というのと同じである。
 元長官は、この発言で全国の農協と、農協に共感する人を敵に回してしまった。
 論評するに値しない発言だが、現政府の有力な後ろ盾であるだけに、見逃すことはできない。TPP推進派の若い閣僚たちをかばって、悪役を引き受けたつもりかもしれない。だからといって見過ごすわけにはいかない。

 これは、先月29日の軽井沢での発言だが、7日にも都内で同様な発言をくり返した。ともに内容がない。
 国論を2つに分けて議論している内容を、ほとんど吟味していないのだろう。だから、このような浅薄な発言しかできない。

 1つだけ意味のある発言は、農協が金融や共済だけに力を注いでいるかのように言っている部分である。
 アメリカが日本の金融、保険市場に重大な関心を持っていることは知っているらしい。そのことが、頭の中にすり込まれているのだろう。
 だが、元長官は、農協の金融、共済活動の実態を、ほとんど見たことがないようだ。だから、具体的な批判ができない。

 TPPについて語るなら、アメリカが盟主になろうとしているのだから、アメリカが日本に対してどんな要求を持っているかくらいは、知っておくべきだろう。
 アメリカの対日要求である「日米経済調和対話」の中には、金融、保険をはじめ、食品安全、医療「改革」や、郵政、公正取引委員会の「改革」など、日本の制度への内政干渉ともみられる要求が、いくつもある。
 もしも、日本がTPPに参加すれば、アメリカは国益にそって、これらの全てを日本に要求してくるだろう。それを拒否する外交力は、いまの政府にはない。

 農業を他の分野と分断して攻撃しよう、としていることも透けてみえる。だが分断はできない。農業だけの問題ではなく、全国民の食糧安保の問題なのである。
 医師だけの問題でもない。病気がちの全ての高齢者の問題であり、医療を必要とする全ての人たちの問題なのである。
 日本の医療は、すでに崩壊しつつある。このことを高齢者や患者やその家族は、日常的に身をもって感じている。そして、怒っている。だから、TPPに参加することで、この動きが加速されることに反対している。
 だからこそ、全国の各地で反対の声をあげている。

 岡田克也元外相なども、こうした発言をくり返している。このような発言がでてくるのは、TPP問題が、いよいよ煮つまったからだろう。明日にも首相がTPPに対する態度を決めるという。
 首相が世論を冷静にみれば、TPPは不参加しかない。大多数の国会議員もTPP慎重派である。

(農協が行った「TPP交渉参加反対の国会要請」の紹介議員になった議員と 紹介議員にならなかった議員を、下に示した。昨日、全中が発表した改訂版である。) ※11月10日更新

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「TPP交渉参加反対の国会要請」の紹介・非紹介議員一覧(画像をクリックすると大きくなります)


(前回 TPP問題で自ら暴露した経産相の農業オンチ

(前々回 わが県の国会議員はTPP参加に反対か

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(2011.11.09)