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農業協同組合研究会

2007年度 第1回課題別研究会
改正卸売市場法下で農協共販は生き延びることができるか


 農業協同組合研究会(会長・梶井功東京農工大学名誉教授)は7月7日、東京・大手町のJAビルで2007年度第1回課題別研究会を開いた。テーマは「改正卸売市場法下で農協共販は生き延びることができるか」。相対取引の認可、手数料の弾力化、買い付け集荷の自由化など規制緩和を進めた卸売市場法の改正によって、野菜、果実など青果物の流通にどのような変化が起きているか、また、今後、農産物流通はどのように変化していくのかなど専門家の報告をふまえ、農協共販の今後のあり方を探った。参加者はJA関係者のほか市場関係者も多く約90人が集まった。

2007年度 第1回課題別研究会


ディスカッション

◆JAに求められる提案型の共販戦略

 東京農業大学教授の藤島廣二氏は報告のなかで、法改正によって市場を経由する青果物が減少しているが、その原因はよく言われる直売所の設置による市場外流通の増加ではなく、輸入を含む加工品の増大にあることをデータで示した(下図)。
 また、卸売会社は買付集荷によって量販店などへの安定供給を実現する動きも強めざるを得ないことから、収益確保のためにはこれまでと違い、産地と価格面で利害が相反する関係になるともみる。
 全農青果サービス(株)社長の森口俊氏は農協共販の新しい課題を提起。卸売市場は農協にとって重要な市場ではあるが、販売先の一つの選択肢と考えるべきだと強調した。また農協には提案型の販売戦略や実需者と接点を持つことによる消費者起点の商品開発などへの努力が求められることなどを提起した。

野菜の加工品輸入量と市場外流通量との相関図(1985-2002)

◆変化に合わせる柔軟性を

 2氏の報告を受けた参加者との討論では農協の販売事業をめぐって意見が相次いだ。
 農協が実需者との接点を持つ取引を強化していけば農協自体が一部の生産者から買付集荷することも必要になるのではないかとの意見があった。
 これに対して森口氏は「まさに事業論と運動論のせめぎ合いになるところ」としながらも、農協によっては買い取りも課題になるとし「卸売市場法が柔軟になったことに対応して農協共販も委託販売だけでなく多様化をはかるなど柔軟性が求められる」と語った。
 また、仲卸業者からは外食産業で事前取引を要求されたため、産地JAに持ちかけたところ断られたという経験が紹介され「それをきっかけに輸入野菜へのシフトが始まった。産地が変わらなければいくら外食産業などの提案をつないでもいつまでもマッチングしない」と輸入野菜の増加の一因を指摘した。
 同時に産地によっては実需者との商談の場に生産者も参加させ、価格や栽培法などに納得した生産者だけでも取引を始める手上げ方式で改革を進めているところもあり、そこから取引量の拡大につなげている例も紹介された。
 藤島教授は「輸入野菜は400万トン。国産は600万トンと多く加工・業務用野菜に対応できていないわけではない」と指摘しJAも契約取引等の対応を強めるべきことを強調した。
 一方、JA関係者からは取り組みの実態や課題などが報告された。
 千葉県のJAでは青果物販売は卸売市場出荷が中心で、今後の課題として直販の比率をどの程度にするかを見極めていると報告。ただ、共販運動の中心は生産者部会でそこが主体となって出荷、販売方法を決めているという。
 和歌山県のJAからは市場出荷50%、直販30%、市場外流通10%の割合になっていることが報告された。直売所のほかネット販売も行うなど多様化しており、品目によっては事前取引が半数を占める。今後は買付集荷も検討していくという。
 また、選果場の統廃合にも取り組むことでほぼ年間稼働する流通センターを実現しただけでなく、整備にあたっては市場関係者と議論して等階級の簡素化にも合意した。ただ、多様なパッケージ化など実需者のニーズに応える場合、「コストを誰が持つかは今後の課題ではないか。JAはあくまで生産者の手取りを確保する使命がある」と強調し、市場関係者との連携で解決すべきことも多いことを指摘した。
 そのほか販売事業の改革を進めるための職員の人事考課制度や、コストダウンのための施設整備の課題、さらに農協が共販の主役とはいえ全国、県段階の役割をさらに検討していく必要性も指摘された。(「東京農業大学教授 藤島廣二氏の報告」へ)

(2007.7.20)


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