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エンドファイトで病害虫防除・多収をめざす  土づくり推進フォーラム

 農産物の生産性向上をめざした土づくりや土壌保全を考える土づくり推進フォーラム(事務局:日本土壌協会)は12月5日、都内で「エンドファイト(endophyte)」をテーマにシンポジウムを開いた。

 エンドファイトとは植物体の組織や細胞内で生活するバクテリアやカビなどの菌のうち、病原菌でないものの総称。ほぼすべての植物内に少なくとも3、4種、多い場合は20種以上あり、自生植物はそれらによって自然界でも健全に生育できているとの研究もあり、微生物農薬や環境保全型農業に役立つ資材としての活用が期待されている。


◆カメムシ類を抑制する牧草

 (株)前川製作所の伊沢剛氏は北海道の数JAと共同でイネ、大豆の病害虫防除と多収栽培に役立つエンドファイトの研究を行っている。平成20年から毎年100〜200haという大規模ほ場で、同社開発の微生物資材「イネファイター」を投与したところ、穂数・玄米収量ともに10%以上増加した上、斑点米、いもち病、ドロオイムシなどの病害虫被害が2〜8割以下に抑えられるなどの効果があった。大豆でも、異なるエンドファイトを栽培初期に1度処理することで、1割近い収量増を実現している。伊沢氏は「(エンドファイトは)減農薬や環境保全型農業を、農産物の品質、収量を維持したまま実現する技術になりうる」とした。
 農研機構の柴卓也氏は、斑点米発生など害虫被害リスクの大きい牧草地近隣での水稲栽培をめざし、カメムシ類の摂食障害を誘因しつつ家畜への毒性がない糸状菌・ネオティフォディウム(Neotyphodium)を組み込んだ牧草を研究している。すでにニュージーランドでは実用化され、140億円の経済効果を生み出すなど実績をあげており、「牧草地で農薬を使わずに病害虫予防ができれば、飼料生産の選択肢が広がり、耕作放棄地対策にもなる」と、さらなる研究に期待を寄せた。

 

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