特集

新たな協同の創造とJA共済事業
JA共済事業特集

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農協運動の原点に戻り地域にどう貢献するか

生命共済が計画を22%上回り目標達成
農業は国民の命の源ときちんと位置づけて考え方の転換を

◆厳しい環境下でも着実な実績をあげる  平成20年度のJA共済事業は、新仕組であ...

◆厳しい環境下でも着実な実績をあげる

 平成20年度のJA共済事業は、新仕組である一時払生存型養老生命共済が好調だったことから、生命共済が目標を22%も上回り19年度に引き続き18兆円を超える実績をあげた。また、生存保障ニーズに応えた医療系共済も19年度を上回る実績をあげた。
 一方、需要が一巡した建物更生共済は19年度を下回る実績となったが、生命共済と建物更生共済をあわせた実績は30兆円強となり、これも19年度に引き続き30兆円の大台を確保した。
 国内における新車販売台数が伸び悩み損保各社が苦戦するなか、JA共済の自動車共済は、件数で約845万件、金額では3168億円と19年度を上回る実績をあげた。自賠責共済は掛金の引き下げがあったため掛金額では19年度を下回っているが、計画に対しては101.7%と目標を上回る実績をあげた。
 原油や飼料、肥料原料価格の高騰などによって農家経営が圧迫される一方で、昨年秋以降、米国の金融危機に単を発した経済危機が自動車や電機など輸出に依存している日本経済を直撃し「100年に1度の大不況」に直面している。そうしたなかで、共済・保険業界の競争はさらに激化し、文字通り「生き残りを賭けた」厳しい状況にあるといえる。
 そうした厳しい状況下にもかかわらずJA共済が「当初計画に近い実績をあげることができた」のは、第一線で活躍するLAを初めとするJAの役職員の方々やJA共済連の役職員がこうした状況に負けてはならないとがんばってこられた成果だといえる。
こうした成果を踏まえて展開される21年度は、19年度から取り組んできている3か年計画の最終年、仕上げの年であり、10月には今後のJAグループの方向を決める第25回JA全国大会が開催される大事な年だといえる。

◆第25回JA全国大会のメインテーマをどう考えるか

 第25回JA全国大会のメインテーマは「大転換期における新たな協同の創造〜食料・農業・地域への貢献とJA経営の変革〜」となっている。
 そこで今特集では、安田舜一郎JA共済連経営管理委員会会長に、この全国大会のテーマの意味をどうとらえ、「新たな協同の創造」のために何をしなければならないのか。そしてそのなかでJA共済事業はどのような役割を果たすのかを、村田武愛媛大学連携推進機構教授に聞いてもらった(記事参照)
 このなかで安田会長は現在の状況について「経済がグローバル化するなかで実態のないマネーが躍り、食料まで投機的なマネーが入り込むような市場原理主義経済が、アメリカの金融危機をきっかけに破綻した結果」だと語った。そして、社会に対する経済のあり方や価値観が大きく変わろうとしていると「大転換期」を位置づけ、「農協運動は“運動”であって、利益を追求する企業体ではないという原点に戻り」大転換期の意味を考え行動することで「どう地域に貢献していけるかがこれからの課題」だとした。
 それは農業は「食すなわち国民の生命の源をつくるものだいうことを国としてきちんと位置づけることで、構造的にも考え方の大転換をはかり、そのうえで総合事業としてのJAの運動を復活」することだとも。
 そして「日本の農業の基礎は水田」であり、「そこをしっかりした政策で対応しなければいけない」とし、従来からの「減反政策から意識を変えないといけない」と指摘した。具体的には、これまでの米6割、他の品目4割という米を中心とした「面積による施策」よりも、「麦・大豆・野菜・飼料用米や米粉原料など4割のなかでしっかり計画生産する政策と予算を組み」、面積規模で担い手を決めるのではなく「この計画生産に取り組んでくれる人はすべて日本の食料を担ってくれる担い手だと位置づける」ことだと語った。
 さらに「条件不利地で水田農業を営むこと自体が、国土保全であり環境保全」だと考え「施策をうたないといけない」とも語った。
 またJAの今後のあり方について「農業協同組合のコアの部分である営農経済を強化し、地域コミュニティーへの参加を通じて、信用・共済も含めて一体化した総合事業としてどう関わっていくかが問われている」つまり「農協運動の原点にたって見直すこと」が大事な時期だと語った。
 3か年計画の最終年度を迎えたJA共済事業については、金融・経済危機が実態経済に大きな影響を与え厳しい環境にあるが、こうした環境下だからこそ「契約者やJAに貢献するために割戻しや配当を昨年度同様の水準に維持したい」。
 そしてこの3か年計画で「総合事業の一環として取り組んできた“3Q訪問活動”を内容あるものにすることが必要」であり、この運動にしっかり取り組み「組合員・利用者や地域の人たちの信頼を深めることで、JA共済へのニーズをどんどん発掘していける」。そして「発掘されたニーズに的確に応えて、商品の仕組みや制度を変えていく」ことで地域に貢献できるような取り組みにしたいと決意を込めて語った。

◆優積組合表彰の大賞受賞組合を紹介

 この特集では、JA共済全国優績表彰で大賞を受賞された愛知県のJAあいち豊田JAあいち知多、静岡県のJA遠州中央の3JAを紹介する。
 「人材育成」は3か年の重点課題の一つだが、今回はLAやスマイルサポーター(窓口担当者)とともにJA共済事業を支える共済事務担当者を指導・育成するために18年度に設定された「共済事務インストラクター」制度について紹介(記事参照)
 「保障の提供」とともにJA共済の「車の両輪」と位置づけられている「社会貢献活動」についても、交通安全対策活動を中心に紹介する(記事参照)

(2009.05.14)