みんなバラが大好きなのに消費が激減【花づくりの現場から 宇田明】第19回2023年10月5日
日本人が好きな花は?
どのアンケートでもバラはベスト3に入っています。
いまは農業もマーケットインの時代、消費者ニーズを重視した生産が求められています。
それなのに、なぜみんなが大好きなバラの消費が激減しているのでしょうか。
たとえば朝日新聞のアンケート「花を買っていますか?」(2023年4月1日)。
自宅に飾りたい花のダントツ1位はバラ。
ちなみに2位はチューリップ、3位はカスミソウでした。
ダントツ1位であるバラの消費(生産量)が激減しています。
2000年のバラの生産量は、国産が4.6億本、輸入が0.6億本、合計5.2億本でした(図)。
それが2022年には国産が1.9億本、輸入が0.4億本、合計2.3億本です。
2000年対比43%。
この間、全切り花の輸入は148%と増えていますが、バラは63%で輸入も減っています。
キクやカーネーションなど主要な切り花は、輸入が増えたために国産が減ったといわれていますが、バラは輸入が減っているのに国産はもっと減っています。
消費者が大好きなバラの消費が減ったのには、ネット・アンケートとバラ自身の問題が考えられます。
①消費者アンケートの問題
花のヘビーユーザーはシニア世代の女性で、ネット・アンケートには無縁です。
ネット・アンケートで花の消費者ニーズを調査するのは、下戸に好きなお酒を聞くようなもの。実際に花を買うひとの意向が反映されていません。
②消費者は花の名前をしらない
14回のコラムで紹介したように、消費者は花の名前を知りません。
そのため、ネットでも対面でも、いきなり好きな花を聞かれると、反射的に名前を知っているバラやチューリップと答えてしまう傾向があります。
③価格が高い
バラはまさに「高嶺の花」。
気軽に自宅に飾れるような値段では買えません。
俵万智の短歌
「卒業式の前の日に知る バラが3本千円で買えないことを」
主要な品目では、ギフトは高価な国産と、自宅用は安価な輸入とのすみ分けができています。
残念ながら、バラには消費者が満足する安くてそこそこの品質の輸入がありません。
初期の輸入バラの中心であったインド産が安かろう悪かろうであったため、消費者に輸入は品質が悪いというイメージが定着したことも輸入が増えない理由です。
④花屋でのバケツ戦争に敗北
市場経済の基本は「お客さまに応える」。
切り花のお客さまは、エンドユーザーの前に花屋がいます。
花業界の鉄則、「花屋が売りたくない花は売れない」。
バラは花屋にとって、なくてはならないが手間がかかる花。
店頭に並べるには、きっちり水あげをして、トゲをとらなければならない。
店に置けるバケツの数は決まっている。
トルコギキョウも置きたい、オリエンタルユリも、ラナンキュラスも、ダリアも・・・。
豪華で魅力的な花が増えました。
かくして、バラが占有できるバケツの数が減りました。
では、どうすればバラの消費を回復させることができるのでしょうか?
それは、お手頃価格でホームユース用のバラを供給することです。
バラはもはや植物工場生産。
低温期の暖房はもちろん、高温期の冷房も不可欠。
当初はヒートポンプによる夜冷だけでしたが、いまではパッドアンドファンなどで昼も夜も全日冷房。
さらには低日照時の補光、炭酸ガス施肥、灰色かび病予防のためには除湿、光合成促進には加湿の湿度調節。
これだけ重装備では、市場価格が相当高くないと採算に合わないのはあたりまえ。
したがって、ブライダルや高級ギフトの高価格マーケットだけを目標にせざるを得ない。
その結果が花屋だけでなく、消費者のバラ離れ。
バラの消費を回復させるためには、重装備・高品質・高単価の一本足打法経営に加えて、軽装備・ホームユース品質・お手頃価格の経営が必要です。
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