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コラム:TPPから見える風景

【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

2018.04.26 
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 4月23日(月)、「TPPプラスを許さない!全国共同行動」が呼びかけたTPP11(CPTPP)についての政府説明と質疑を戦わせる院内集会があった。昨年から数えて7回目だ。

 その帰り、国会議事堂前の駅で"安倍を監獄へ"というステッカ-を鞄に貼った初老の男性に遭遇し、驚き半分"頑張りましょう"と声を掛けた。「72歳になってこんなこと初めてですけれど、25年間自民党やっていたんです。」「安倍はひどい!」とおっしゃった。
 その安倍首相は、米国に行き、続いて韓国ムン・ジェイン大統領にも電話を掛けてお願い事をしたようだ。北朝鮮への強い圧力は現時点で必要としても、安倍政権は関係6ヶ国中で唯一、その他の戦略・平和構想を持てないまま、自国の課題である拉致被害者救済を米韓にお願いし、短中距離ミサイル問題に至ってはテ-ブルに乗せることさえ出来ないで手を拱いている。
 そして、分けのわからない投資・貿易に関する2国間交渉というお土産を持って帰ってきた。6月中旬以降にも第1回協議があるようだ。

 

◆掛け声と"やってる感"だけで、結果を出さない安倍首相の譲歩の連鎖

 日本外交は、要求を突き付けられると、何とかうまくまとめようという前のめりになり、決裂を覚悟しないゆえに、譲歩を重ねる傾向がある。TPPから日EU・EPA、そして日米2国間協議とその連鎖は終わっていない。
 米国を繋ぎ止めるためにTPP原協定の批准を急ぐと言い、今度は日米FTAを回避して米国をTPPに復帰させるためにCPTPPの発効を急ぐ、といつも前のめりだ。結局戦略でも何でもないただの独りよがりだけで、実現のための戦術が示されたこともなく、最後は"国益を損なわない範囲"といって譲歩を続ける。米国が中間選挙迄の成果を迫って来るのに対して、CPTPP発効まで引き延ばしたい日本、切実な利害のある米国に対して、明確な立場を明言さえしない日本。力関係で勝りかつ切実な米国、安倍首相の譲歩は今度も要注意だ。

 

◆ガラス細工・パンドラの箱CPTPP、日本政府の選択肢は?

 日本政府は、米国の復帰を可能とするため、CPTPPをまとめる過程で各国の要求を調整、また絞り込んで凍結項目を22項目に抑え、カナダの文化例外とベトナムの労働法整備についてはサイドレタ-としたと説明する。また、4月23日の院内集会でも、"農業分野の日本の懸念について協定6条だけでなくサイドレタ-の交換もあって然るべきでは?"との質問に対して、"市場アクセスまで各国が凍結を求めたらパンドラの箱を開けたようになりかねない"といった趣旨の説明があった。
 米国が復帰に際して再交渉を求めてきたら、更にガラス細工のような合意は壊れてしまいかねない。
 日米協議、日米FTA更にガラス細工のCPTPPと各国の利害の調整など、に直面した場合の日本政府の選択肢はどうなるのだろうか?

 

◆異なる2つの協定の並存?

 2つの協定があることについて、上述の4月23日の院内集会でも、事前に提出した市民団体からの次のような質問に対して、政府出席者は「2つの異なる協定だ」と説明した。意味が分からないので終了後「未だ協議されていないと理解してよいのか?」と確認を求めたら、「そうだ」との一言があった。

○米国の復帰はTPP原協定を意味するのか、CPTPPなのか?
○どちらか一方の場合、他方の協定の効力はどうなるのか?
○仮に米国のTPP原協定復帰の前にCPTPPに参加した11ヶ国以外の国があるとしたら、彼らの立場はどう扱われるのか?

 米国の復帰がある場合、"2つの別々の協定が(未発効ではあるものの)並存"する場合に何が想定されるのだろうか? CPTPPでは基本的には、参加国の合意によりTPPの凍結項目は解除され、その他の内容は基本的にTPP原協定が組み込まれるとされているが、CPTPPに合意した11ヶ国はTPP原協定と一致しない様々な交換文書も互いに結んでいる。前文と附属書を除けばCPTPPは1~7条、実質3ペ-ジに満たない協定だが、"並存"への解は読み取れない。

 ※CPTPPの条文(内閣官房)
環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定

 CPTPPのガラス細工は、米国の動き、発効までの時間軸によってもその壊れやすさは違うだろうし、特に米国がTPP復帰に際して再交渉を明らかにすれば、CPTPPのガラス細工は益々壊れやすくなるだろう。更に日米協議も天秤にかけながら"ディ-ル"を求めてくれば、日本は一層米国への譲歩の道に入りこみかねないのではないかと懸念される。

 

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