量販店等に終売通告を行う白米卸も【熊野孝文・米マーケット情報】2024年4月23日
先週、東京で開催された全米工の東日本取引会で規格外米が1俵1万6700円で成約したほか、くず白米では比較的品位の良いものがキロ315円で買われた。全米工の取引会ではこうしたいわゆる裾ものと言われる品位のものが取引されるが、成約された価格だけ見ると裾ものという範疇を超えている。最近の取引会ではヤケ米や砕米の取引も増えており、その成約価格も従来の感覚では考えられないような価格になっている。それだけ加工原料用に使用される原料米がひっ迫しているということの証だが、ひっ迫しているのは原料米だけではない。ドラッグストアー等に白米を納入している卸は「今ある在庫分限りで白米の納入を止めると相手先に伝えた」という。
全米工は取引会前に情報交換会が開催され、そこで全国各地から出席した組合員から各地の情報が伝えられた。
北海道=最低気温が低かったので苗の生育を心配していたが、今週に入って気温が上がって来て順調に生育している。カントリーで籾摺りしているところには、びっくりするような価格を提示して買いに来るところもあるが、売り手も強気。
秋田=このままでは出来秋まで売るものがつながらない。5年産がないので6年産の買い取りを打診するところがあるなどの声が騒がしくなっている。田植え前から庭先でヒートアップしているので先行き戦々恐々。4月に横手で30度超す日があり、今年も高温障害が懸念され、雪が少なかったので夏場のかけ流しの水が足りなくなるのではと心配。
宮城=米菓・味噌の原料米は昨年まで安定していたが、10月から一変、供給量を5分の1まで減らしてもらった。宮城は作況104でコメは穫れていたはずだが、民間も少ないしどこに行っているのか不思議な感じ。
茨城=田植えが4月に入って気温が上がってきたので少しずつ始まっている。農家や業者に在庫があるのかないのかはっきりしたことがわからない。
埼玉=極早生の五百川は先週までに田植えは終わった。高温耐性がある品種の注文が増え、にじのきらめきの種子は完売している。埼玉で新しい高温耐性の新品種が出来ており、これを試験栽培することにしている。高温対策としては田植え時期を遅らせるか、肥料としてリン酸をドローンで散布することにして農家に案内している。リン酸は人間にとってのポカリスエットと同じ役割を稲体に果たす。
新潟=6年産加工用米の交渉を行っているが、5年産米まで喜んで加工用もち米を生産者に作ってもらっていたが、あまりにもうるち米の価格が上がったので、今年もち米を作ってもらえるのか心配している。餌米を作っていた人の4割ぐらいが主食用米に転換するのではないか。
東京=丸米の取引価格は4月に入って上がり過ぎている。あっという間に2万円を超している銘柄もある。産地では大豆や大麦を作っていた生産者までコメを作付けするようになるというところもある。高温対策としてヒマワリの種で作った溶剤を播いて稲体を下げることをやる計画のところもある。
兵庫=加工用米の購入を増やす酒造会社もあるが、品種を指定されると対応するのが難しくなっている。
福岡=南九州の早場米が待ち遠しい。それぞれの思惑でスポット売買は狂乱。
執行部からは、今後、端境期に向けどんどん相場が上がっていく可能性があり、相場に翻弄されないようにして欲しいと要請するとともに、組合員の関心が高い政府備蓄米の売却に関して、農水省から「調査をしてみないとわからない」という回答があったことだけが報告された。
政府備蓄米の売却要請は19日の酒造組合や米菓、味噌、穀類などコメ加工食品業界が農産局長に直接要請した。特に米焼酎組合ではGI表示で国産米使用を謳っていることや仕込み最盛期が間近に迫っていることから強く政府備蓄米の売却要請を行ったが、農水省からは「慎重に検討する」というこれまでの返答以上の回答しか得られなかった。
政府備蓄米の緊急売却の要請はコメ加工食品業界ばかりでなく、米穀小売商組合も独自に農水省に要請している。これは仕入先の卸に供給余力がなくなっていることから米穀小売店への販売を制限していることなどが原因。ディスカウントストアーやドラッグストアーなどをメインにコメを下ろしている卸の中には手持ちの在庫がなくなり次第終売することを取引先に伝えたところもある。これは値入交渉しても玄米価格の異常な値上がりで差損をカバーできる範囲ではないとの判断で、中にはスーパーに並んでいる白米を購入して取引先の業務用店に納入した方が差損が少なくて済むというところさえある。
6年産新米のハシリが出回り始めるまであと4か月で市況変動によるリスクだけが限りなく大きくなっていることだけは間違いない。
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