【緊急寄稿・米産地の声】「現在の適正価格は5キロ3500円」JA北つくば(茨城)川津修組合長2025年6月11日
昨年4月、JA北つくばの組合長に就任した川津修氏は、自身でも4haの水田を耕作している。川津組合長に、最新の同農協における米事情と今後の計画、展望などを聞いた。(客員編集委員 先﨑千尋)
JA北つくば(茨城)川津修組合長
同JAは米は県内有数の産地。米生産農家の所得最大化を目指し、2008年から買い取り米制度を導入している。海外輸出にも積極的に取り組んでおり、昨年度の実績は、前年対比で1.6倍の2271トン。小玉スイカや関城梨などの特産品がある。
買い取り米が中心、米の輸出も
――昨年は出来秋から米不足が言われており、米商人の動きが活発でした。北つくば農協での集荷状況はどうだったのでしょうか。また、買い取り米の販売は順調に進んでいますか。
川津 管内には8500haの水田があり、そのうち6400ha、生産者で2200人が農協に出荷しています。
昨年の買取価格は玄米60kgで2万6000円に設定しましたが、集荷競争が激しく、3万トン(50万俵)の目標に対し91%の実績でした。この地域でも生産者の大規模化が進んでおり、120人くらいの生産者で集荷量の6割を占めています。
買い取り米の販売は既に売り先が全量決まっており、これまでに66%を出荷しています。前年対比では30%増えています。輸出も増えているので、「北つくば農協米輸出協議会」をつくり、海外需要の把握や新たな市場の拡大に取り組んでいます。
――大規模農家は増えていますか。米生産農家の経営は改善されていますか。
川津 なかなか増えませんね。30年もの長い間米価は下がる一方で、一昨年まではほぼ半分。一方、農機具や乾燥施設、肥料農薬などの資材、労賃などすべてが値上がりし、資材代は5割上がっています。昨年上がったと言っても、これまでの負担増をカバーできていません。
――管内での米商人の動きはどうでしょうか。
川津 田植え前から活発に動いています。青田買いですね。農協の買い入れ価格よりも高く買うからと言って。
――政府の備蓄米放出で米価は下がると思いますか。米の適正価格はどれくらいの水準だと考えていますか。
川津 備蓄米の放出によって小売り段階の米価を下げるという政府の意図に、一定の効果はあると思います。ここでの買い取り米2万6000円をベースに考えると、精米、流通、小売店のマージンなどを加えて、5kgで3500円前後が妥当な価格だと思います。
備蓄米の放出と、米価が上がったことによる主食用米増産の動きも見え、米が余ってくるのではないかと心配しています。

――水田農業や家族経営農業に対しての国の農政のあり方をどう考えますか。
川津 水田農業は、地域の協同、共生というムラ社会、そして我が国の伝統文化の源です。米作りに水は不可欠で、地域社会が一体となって管理していかなければ水田は保たれません。その基本となるのは家族経営農業で、このことを政策の中にきちんと入れることが大事だと考えています。
米は日本人の主食です。市場原理に任せるのではなく、生産者には、再生産可能な価格で所得補償をし、消費者には安心して買える価格にと、切り離して考えるべきだと思います。
――50年続けられてきた米の生産調整(減反)を、国はやめる方向のようですが。
川津 米を自由に作らせるということのようですが、耕作放棄地が増え、農業をやる人がどんどん減っています。今できないのに、米価が上がったからといってすぐに米の生産農家が増えるとは思えません。
――今年の稲の生育状況はどうですか。
川津 5月20日現在で田植えは90%終わりました。低温の日があったので、やや分けつが少ないですが、今後天候が安定すれば、平年どおりにいくと思います。
――米に対して農協が果たすべき役割をどのようにお考えですか。また農協として、農業の振興、生産の維持をどう図っていかれますか。
川津 農産物は、工業製品とは違い、自然が相手です。日本人の主食である米は、消費者には安定供給と適正価格で、生産者は米作りで生活できるように。まじめにしっかりやっている人々が暮らしていけるような世の中にしていくことが農協の役割だと考えてきました。
北つくば農協では「産地振興ビジョン」を策定し、組合員に10年後の地域農業のあるべき姿・目標を示しました。
農業者の高齢化、担い手不足、労働力不足が顕在化しています。地域農業の維持発展には新たなサポート体制をつくることが不可欠という考え方に立って、生産基盤の確保、戦略的販売に基づく産地振興、作物別施設投資計画を立てて、行政ともタイアップしながら進めていきます。
担い手育成のプロジェクトも立ち上げました。生産者が減っても現在の販売額180億円を維持できるように、米も、作業マッチング事業や作業受委託事業、スマート農業を普及して、3万トンの出荷数量を目指します。
【JA北つくば】
茨城県の北西部にある大型農協。1993年に第1次合併し、2006年に岩瀬町農協と第2次合併。管内は、筑西市、結城市、桜川市の3市にまたがる。桜川市の一部を除いて平坦地が多い。
組合員は、2025年1月末現在2万3038人(正1万4242、准8796)。職員は606(内常勤嘱託285)人。2024年度の農畜産物販売高は182億円、購買品供給高64億円、貯金2335億円、長期共済保有高4859億円。
重要な記事
最新の記事
-
飼料用米の支援 見直しを 財政制度等審議会が建議2025年12月3日 -
緑茶の輸出額 前年比2.3倍 農林水産物・食品の10月輸出実績2025年12月3日 -
JA貯金残高 108兆731億円 10月末 農林中金2025年12月3日 -
米の安定供給どう支える? 直接支払めぐり論戦 共助の「基金」提案も2025年12月3日 -
平和的国防産業の寿命【小松泰信・地方の眼力】2025年12月3日 -
【農と杜の独り言】第6回 野菜・あなたのお生まれは? 食の歴史知る機会に 千葉大学客員教授・賀来宏和氏2025年12月3日 -
童門氏の「恕」 混迷時こそ必要 "協同のリレー" JCA客員研究員・伊藤澄一氏2025年12月3日 -
【異業種から見た農業・地域の課題】担い手が将来展望を描けること 金融×人材×資源で強靭な地域に 一消費者の視点から 元大蔵省・藤塚明氏に聞く2025年12月3日 -
ご当地牛乳「リソルホテルズ」でウェルカムドリンクとして提供 JA全農2025年12月3日 -
毎年大人気!希少な岐阜の「堂上蜂屋柿」を販売開始 JAタウン2025年12月3日 -
稲作生産者の生産現場に密着 生産者ドキュメンタリー動画を公開 JA全農2025年12月3日 -
JAタウン「ホクレン」北海道醸造の日本酒10商品「送料負担なし」で販売中2025年12月3日 -
冬休みの牛乳消費拡大を応援「メイトー×ニッポンエール 冬のおいしいミルクコーヒー」発売 JA全農2025年12月3日 -
「佐賀県産うれしの茶フェア」5日から全農直営19店舗で開催 JA全農2025年12月3日 -
病院経営の改善に求められる課題は? 「医療の質と生産性向上」セミナー 日本文化厚生連2025年12月3日 -
安全性検査クリアの農業機械 1機種7型式を公表 農研機構2025年12月3日 -
【人事異動】日本製紙(2026年1月1日付)2025年12月3日 -
鶴岡共乾施設利用組合第1回総会開く JA鶴岡2025年12月3日 -
【役員人事】井関農機(12月1日付、12月31日付、1月1日付)2025年12月3日 -
鳥インフル 米国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年12月3日


































