JAの活動:シリーズ
【農協時論】米の買い取り―青果とは別次元 安易な判断懸念元JA富里市常務理事 仲野隆三氏2025年7月23日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならないのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は元JA富里市常務理事で百姓の仲野隆三氏に寄稿してもらった。
元JA富里市常務理事 仲野隆三氏
2023年9月の千葉県の産直米は5kg1700円だった。1年4カ月後3700円まで値上がりした。備蓄米が2000円で放出され消費者受けは良かったが、すでに田んぼの稲穂が伸び1カ月半後に新米が収穫される。組合員は新米の値段がどうなるのか心配する。
一言で言えばコメ騒動は長年続いた農林水産省の減反政策に元凶を為すと考える。戦後食糧不足を解消するため「天まで耕すと米は1400万トン生産した」この時の自給率は60数%に達した。1973年作付け過剰に対し減反政策がはじまり、水田現地確認が行われ農協、役場、農業委員会などから8人が動員され49集落の谷津田や畑灌漑稲など自家消費米のわずかな面積もカウントされた。初めは10%の減反率が年々増え、最後は30%となり組合員から協力を頂けない事態となった。減反に非協力組合員は制度資金や後継資金借入認定が遅れるなど差別を受けた。
さらに米の出来具合を決める作況指数も数値把握に疑問が残る。ひどいのは「米はある(足りている)」とした農水省の説明だ。結果は「米びつを開けたら米がなかった」ことに尽きる。4000円の米は高すぎると災害時など保管した備蓄米に手を突っ込み随意契約で流通させたことなど、まことにお粗末極まりない食料需給政策である。
小泉農水大臣の言動に米の買い取りが述べられたが、買い取り販売は組合員にとってメリットがあるか考えてみたい。JAの販売事業は受託販売と買取販売の二つがあり、米の買い取り販売は不可能ではない。米大産地のJA担当が中・外食企業などに契約取引で動いていると聞く。最近も通信関係大手企業のコンサルから米の取引産地を探している情報がある。JAの買い取り販売は取引リスクがあるため直販の人材育成がポイントとなる。米は取引先情報や債権回収など青果卸のような機能がないため、安易に直販「買い取り販売」取引はしない方がよいと考える。
野菜の直販取引について少し事例紹介する。直販はほとんどが組合員からの買い取り販売となっている。まず3カ月前にバイヤーとJAが取引交渉する。その内容をJAが組合員に取引提案、取引項目は納品の時期、規格・数量、価格の4条件となる。組合員とバイヤーが条件で合意したら契約書(覚書)の締結をする。取引はJAが組合員から野菜を買取り指定して場所に配送する。JAは毎日数量を連絡調整して取引の安定をはかる。取引トラブルはJA担当者とバイヤーで協議解決する。
買取り販売を希望する若手中堅農家の経営意識は、どこにあるか考えてみたい。
団塊の世代が70歳を過ぎ、父親は50歳の中堅、倅は30歳の三代が引き継ぐ新たな経営に見る。
値段の分からない農業経営から値段のわかる経営の転換を進める。これまでの経営規模はタネ地3haだったが、借地含め10ha、20ha、50haと数年で規模を拡大。課題は委託販売と青果市場の高騰暴落により経営が定まらず、雇用賃金など管理費や施設機械投資(借入返済)など悩みとなっていた。営農計画も複数作目の組み合わせから数を減らし、逆に作目を絞り込み出荷期間を長くする経営に転換。販売は実需と直接販売することでキロ及び1本(1個)単価の契約取引にできた。
JAは通関コンテナやフレコン袋など準備、パレツトで荷造り調製の時間短縮が進み取引容器と輸送コストの削減も可能となった。買い取り販売で最も大きな効果は価格変動がなく営農作業と収支が安定したこと。これまでの委託販売のように毎日実需者が変わり、その都度値段が異なるのでは農業後継者は育たず、安定した専従者(雇用)の確保はできなかった。
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