農薬:サステナ防除のすすめ2025
【サステナ防除のすすめ2025】大豆の畝間除草 雑草防除が品質左右2025年7月23日
国の国産大豆の生産振興政策に伴い、水田転作で大豆に取り組む担い手も多く、経営面積も大きくなる傾向がある。大豆は湿害等の根本的な課題の解決も重要だが、経営を安定させる鍵はいかにして作業効率を高めるかである。なぜなら、複合経営で経営面積が大きくなればなるほど、必然的に大豆ほ場にかける時間が少なくなるため、管理不足になって品質に影響することもある。特に、雑草防除は重要で、除草がうまくいかなかった場合、大豆の生育が雑草の生育に負けてしまい、収量が低くなるばかりか品質も悪くなってしまう。そのため、除草は丁寧にやる必要があるが、どうしても作業に時間が取られるので、時間がかからず、しかもきれいに除草できる技術が求められている。

大豆の除草を成功させるには、意外とひ弱な大豆の生育初期を、いかに雑草に負けないように管理して、大豆の生育を旺盛にしてやるかが重要である。そして除草手段としては、中耕による除草やシルバー人材を活用しての人力によるものもあるが、これらは規模が大きくなるとどうしても作業の効率性やコスト面で無理がある。このため、除草が必要な時期に、発生する草種に効果のある除草剤を上手に使うのが最も効率的である。
効率性を志向するサステナ防除的には、除草剤の種類をどんな使い方がよいかを整理したが、実際の使用にあたっては指導機関の指導を第一にし、農薬のラベルをよく確認して、正しく使ってもらいたい。
大豆畑で雑草害を起こす雑草は、メヒシバなどのイネ科雑草や、シロザやオオイヌタデといった広葉雑草が主なものだが、最近は、輸入穀物に混じって日本に侵入してきた外来雑草(イヌホオズキ類やアサガオ類など)が深刻な問題となっている。
現在使用されている除草剤は、イネ科雑草を枯らすのが得意なものと広葉雑草を枯らすのが得意なもの、あるいは両方を枯らすことができるものなど様々なものがあり、発生している雑草に応じて除草剤を選ぶことが重要である。
ただし、大豆は広葉の植物なので、広葉雑草を枯らすことができる除草剤を使用する時は、大豆にも薬害がある場合が多いので、使用方法や使用時期には特に注意が必要である。
大豆の生育ステージと除草剤
除草剤の特性を把握する上で必要なのが、大豆の生育ステージのどの段階で使用するものかということである。除草剤の使用時期は、大まかに分けては種前、は種後出芽(発芽)前、大豆生育期の三つがある。
これは、除草剤の有効成分の特性、いわゆる殺草メカニズムと大きく関係している。
まず、大豆のは種前とは種後出芽(発芽)前に使用する除草剤は、大豆に直接触れると薬害が起こるので、大豆が畑に存在しない状態の時に使用する。土壌表面散布する除草剤や非選択性の茎葉処理除草剤の多くはこの時期に使用する。
一方、大豆生育期に使用する除草剤は、大豆に除草剤がかかっても薬害が起きないか、あるいは影響がほとんど出ないので、大豆のあぜ間だけでなく、株間にもびっしり生えてくる雑草に対し、安心して大豆畑全体に除草剤をまいて雑草を一網打尽にすることができる。
実際、大豆に全くかからないようにして雑草にだけ除草剤をまくのはかなり難しいので、その点、大豆生育期に使える除草剤は作業上も効率の良い使いやすい除草剤といえる。
雑草の生育ステージと除草
雑草の発生前に散布する薬剤
除草剤の効果は、雑草の生育ステージによって異なる。
一般に、雑草のステージが小さい時、つまり発芽したての頃から葉っぱが1枚とか2枚ぐらいの幼少期が最も除草剤が効きやすい。したがって、できるだけ小さい雑草に除草剤が触れるようにしてやるのが除草効果を安定させるコツである。
除草剤の登録内容を見てみると、雑草発生前とか雑草発生初期と書いてあるものが多い。
これは、雑草の新芽や発芽したての雑草に除草剤成分を触れさせるように、雑草の発生前やごく初期に土壌表面に除草剤を散布して除草剤の層を作って雑草の新芽を枯らすためである。
そのため、このような除草剤は、雑草の芽が出てくる前、つまり大豆畑の整地や畦立てが終わったらできるだけ早い時期に散布すると効果も安定するようだ。
雑草生育期の除草剤
一方、雑草生育期に使う除草剤は、雑草の生育期(雑草が大きくなっていく過程)の雑草の茎や葉に直接散布して雑草を枯らす。ただし、雑草も大きくなってくるとだんだん除草剤を散布しても枯れにくくなり、除草剤によって枯らすことのできる雑草の大きさが異なる。
したがって、使用する除草剤がどの大きさの雑草まで効果があるのか、農薬ラベルの使用時期をよく確認して、その適期を逃さず散布するのが効果を最大にするコツである。
そのためには、常に畑の雑草生育状況を確実につかんでおくようにしてほしい。
土壌表面散布と茎葉散布
除草剤の散布方法には、土壌表面散布と雑草茎葉散布がある。
土壌表面散布は、雑草が生える前か発生初期に土壌表面に除草剤の層を作って、雑草の発芽してきた幼芽や幼植物を枯らすものである。このため、できるだけ雑草の発生前に土壌全面に均一に散布する必要がある。
雑草茎葉散布は、文字どおり直接雑草の茎や葉に除草剤を直接散布して枯らすものであるので、雑草の茎葉に十分量の除草剤がかかるように均一に散布するのがコツである。
専用ノズルを使用したあぜ間散布
大豆の雑草防除における理想の除草剤は、大豆の生育期に使えて大豆に薬害が無く、全ての種類の雑草に効果があるものである。
ところが、生育期に使える除草剤は、イネ科雑草を得意とする除草剤が多く、広葉雑草対策が難しくなる。広葉雑草も枯らせて、薬害が少ない雑草茎葉散布剤もあるが、使用時期や薬害を出さないための使用制限も多い。
この理想の除草剤に最も近いのが、専用の散布ノズルを使用した非選択性茎葉除草剤のあぜ間散布である。
この方法によれば、管理機等の乗用の機械を用いて、効率的かつ省力的に除草することができるので大変便利である。
一般に非選択性茎葉除草剤は、大豆にかかると、大豆まで確実に枯らしてしまうので、大豆生育期の畑全面散布には使えない。しかし、専用のつり下げノズルを管理機に装着して使用すれば、大豆に薬液がかかることなく、あぜ間に生えている雑草にだけ茎葉散布することができ、雑草だけ確実に枯らすことができる。
ただし、あぜ間だけの散布では、大豆の株間に生えている雑草に除草剤が届かず、大豆の株間で生き残った雑草が繁茂して害をなしてしまう。このため、大豆の株間に生えている雑草に除草剤を届かせることができれば、きれいに雑草を枯らすことができるが、実際には大豆に薬液をかけずに大豆の株間に散布することは不可能である。
そこで注目されているのが、バスタ液剤である。他の非選択性茎葉処理除草剤は、生育期にはあぜ間のみしか使用できないのに対し、本剤は株間散布にも登録を持っており、株間散布が可能な除草剤である。もちろん、つり下げノズルの高さを調節して、薬液がかかるのは大豆の地際の茎のみに止め、大豆の葉っぱには直接かからないようにする必要がある。
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