JAの活動:第46回農協人文化賞
【第46回農協人文化賞】一途に農に寄り添い 特別賞・茨城県・ひたちなか農協元専務 先﨑千尋氏2025年7月16日
多年にわたり農協運動の発展などに寄与した功績者を表彰する第46回農協人文化賞の表彰式が7月4日に開かれた。
各受賞者の体験やこれまでの活動への思い、そして今後の抱負について、推薦者の言葉とともに順次、掲載する。
茨城県・ひたちなか農協元専務 先﨑千尋氏
農家の長男として生まれた私は、大学で学んだことを地元の農業、農村、農協のために役立てたいと考え、スタート時点では全国販売農協連合会(全販連、現全農)に就職した。ここでは、園芸畜産の新たな流通ルートの開拓に当たった。
1970年、当時「農協運動の希望の星」と言われた群馬県前橋市永明農協に転じ、清水淳組合長の下で、米の生産調整や、新都市計画法に基づく農協独自の線引きや宅地並み課税反対運動に関わった。新たに、農民の健康管理などの生活活動と独自の広報活動を展開した。
2年後に生家に戻り、合併した茨城県水戸市農協で生活と広報を担当。さらに常磐自動車道対策地権者会の事務局長として、道路の設計から用地買収まで、日本道路公団との交渉で農協主導の活動を行い、成果を収めた。広報活動では、全中主催の農協機関紙コンクールで入賞するなど、県内農協の仲間と共に機関紙を全国レベルに引き上げた。
38歳の時に、地元の瓜連町農協に移った。秋田県仁賀保町農協などに学び、母ちゃんたちと農産物自給運動を展開し、現在の直売所の前身と言える「青空市」を開設し、農産加工所を立ち上げ、農家の母ちゃんたちの拠点とした。地場産野菜の学校給食への納入も始めた。
60歳の時にひたちなか農協の専務に就任した。直売所、ファーマーズマーケットの立ち上げや、学校給食への地場産野菜の供給、生活活動の積極的展開などに力を注いだ。
ひたちなか農協専務のときにオープンした「東海ファーマーズマーケット・虹のなか」
永明農協在職時に「日本農業新聞」の通信員になり、以後、現場からの情報を全国に発信し続けた。さらに『農業協同組合新聞』『地上』『農業協同組合経営実務』『文化連情報』『全酪新報』などに寄稿を続けた。
1971年に農林省農業総合研究所駐村研究員、95年に茨城大学地域総合研究所客員研究員になった。87年には同大学人文学部非常勤講師に、以後、筑波大学、鯉渕学園、茨城県農業大学校、埼玉県農業大学校で教鞭を取り、地域社会論、農協論、有機農業論などを教えた。
74年に『永明農協12年のあゆみ』(永明農協)をまとめ、その後、職員としての経験や執筆した記事、茨城県の農民運動と農協運動などを整理し、『農協の地権者会活動』『農協のありかたを考える』『農協に明日はあるか』『山口武秀と山口一門―戦後茨城農業の後進性との闘い』(以上日本経済評論社)、『よみがえれ農協』(全国協同出版)を上梓した。茨城県関係の郷土史としては『ほしいも百年百話』『白土松吉とその時代』『前島平と七人組』(茨城新聞社)を刊行している。
永明農協時代に日本有機農業研究会を立ち上げた一楽照雄に出会い、有機農業運動と関わるようになった。山形県高畠町有機農業研究会、熊本県水俣市の甘夏生産者や茨城県内の有機農業生産者と交流を続け、80年に茨城県有機農業研究会を立ちあげ、事務局長に就任した。99年に有機JAS制度が発足したことにより翌年NPO法人有機農業推進協会を立ち上げた。
国は2006年に有機農業推進法を制定し、22年にはみどりの食料システム戦略を策定し、有機農業を農政の柱とすることにし、これまでの農政のかじを大きく切り替えた。隣の常陸大宮市は、行政と農協が一体となり、学校給食へ有機農産物の供給を始めている。
地元の常陸農協では現在農協直営の子ども食堂を開いているが、その開設にも関わった。
1976年に地元の瓜連町議に立候補し、農協職員と兼務で2期務めた。90年には農協婦人部員らの支援で、瓜連町長に当選。町民参加の総合計画づくり、中学生の海外派遣、ごみ収集の有料化、木造での小学校建設、地元の古代織・倭文織(しづおり)の復活、全国の自治体に呼びかけて始めた環境自治体会議の創設などを手掛けた。
【略歴】
まっさき・ちひろ
1942年11月25日生まれ。1967年慶應義塾大学経済学部卒業、全国販売農業協同組合連合会(現・全農)入会(70年退職)、70年群馬県永明農協(現・前橋市農協 72年退職)72年茨城県水戸市農協(現・水戸農協 81年退職)、76年茨城県瓜連町議会議員(84年まで)、81年瓜連町農協(現・常陸農協 90年退職)、90年瓜連町長(94年まで)、2000年ひたちなか農協理事・営農生活委員会委員長(03年まで)、23年同代表理事専務(09年退任)。
【推薦の言葉】
農業情報発信の雄
先﨑氏は、農村に生まれ、大学で農業経済学に精通し、農村を歩き、全農・四つの農協に就業し、直売所、生活活動、加工事業、広報活動に先駆的な実績を残した。さらに、行政の長、農協の専務、地域コンサルと生涯を通して農業・農村・農協問題に取り組まれている。
一方で、日本農業新聞、農業協同組合新聞、地方誌への投稿を続け、著書にも『農協の地権者会活動』『農協に明日はあるか』『ほしいも百年百話』など影響力のある著書を残している。
他方、初期からの有機農業運動の中心を担い、多くの地方史の研究、反原発運動など、数えきれない功績を残している。現在も後輩の育成のため多くの指導をしている。
幅広く、深く、継続して各種の問題に取り組まれ、功績を残してきた。
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