米の「5次問屋」どこに? 流通のせいで高騰? 小泉農相とドン・キホーテの意見を検証2025年7月16日
小泉進次郎農相が強調する「米の流通は複雑怪奇」。この持論は、米取引は5次問屋まである「多重構造」のために「流通量の減少や価格上昇」が引き起こされると指摘したドン・キホーテ運営会社の意見書とも問題意識が重なる。だが、「5次問屋まである」との見方も「そのために価格が上がる」との主張も、取引関係者には疑問の声が多い。
「多重構造で価格高騰」と指摘
ディスカウント店「ドン・キホーテ」の運営会社、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH、吉田直樹社長)は5月28日、小泉進次郎農相に米流通に関する意見書を提出した。
米流通には5次問屋まで存在する多重構造があるため、中間コストに加えマージンがそれぞれのることで価格が高騰する、などと主張したものだ。
「5次問屋」はあるのか
だが「5次問屋」などあるのだろうか。
米の流通のメインルートは、農家が生産した米をJAや商系集荷業者が集荷し、米卸業者を経て小売、中外食などに渡る。PPIH意見書にある「問屋」とは米卸をさすとみられるが、米卸の役割には精米・袋詰め(加工)、品揃え・物流、販売があり、米流通の要を担っている。
ドン・キホーテが仕入れる卸に取材すると
ドン・キホーテは、店頭で販売する米の多くを米卸の野上米穀(新潟県)から仕入れている。同社の野上茂会長に聞くと、「そもそも『何次』というのが決まっているわけではなく、必要に応じて米を融通しあっている。特に昨年からは米が足りないので、いろいろな問屋さんに声をかけて集めた」と話した。
「あきたこまち」がカドミウムの基準値超えで自主回収された際、農水省と秋田県が作成した秋田県のある農家から出荷された2024年産米の流通・販売経路の資料がある。それによると、農家から住友商事東北(宮城県)が集荷し、住商フーズを経て野上米穀が仕入れ、ドン・キホーテ156店舗に納めた。住友商事東北を集荷業者にカウントすると、住商フーズが1次問屋、野上米穀は2次問屋となる(=図「秋田県の農家から出荷された2024年産米の流通・販売経路」参照)。

同じく住友商事東北、住商フーズを経由し、野上米穀から杉田商店(埼玉県)が仕入れ、首都圏のスーパー、小売店、飲食店に売った流れもある。その場合は、杉田商店は3次問屋にあたる。なぜ大きな1次問屋から仕入れず野上米穀から仕入れているかを杉田商店に聞いてみると、「野上米穀さんからは精米の委託を受けており、当社は下請けにあたる」(担当者)とのことだった(=図参照)。
このように、通常の米取引では「5次問屋」は登場しない。なお、自社の取引でも「5次問屋」から仕入れることがあるかなどをPPIHに問い合わせたが、「本件に関するご質問については、回答を差し控えさせていただきます」(広報室)とのことだった。
プレーヤーが多いと価格が上がる?
それでは、プレーヤー(取引業者)が多過ぎる「多重構造」によって供給不足や価格上昇が起こったのだろうか。
農家とスーパーの間に何社もの「問屋」が介在することでコストが膨らみマージンもどんどん載せられて価格が釣り上げられ、値上がり期待から一部の「問屋」が米を抱え込むことで供給不足が起きる――というのは、話としてはわかりやすく、マスコミにも取り上げられやすい。
だが、野上米穀の野上会長は「(小泉)大臣が米卸をもうけすぎのように言うなど、流通を悪者にするのは腹立たしい。米を転がして価格を釣り上げたなんて、聞いたこともない」と話す。
過当競争で利益が出にくい構造
実際、2022年までもプレーヤーは多かったが、米価は再生産コストを割り込むほど低かった。商取引では、プレーヤーが多ければ過当競争が起きやすく、価格には引き下げ圧力が働く。全米販の「米穀流通2040ビジョン」でも、業者数が多いことも背景に、「米穀卸間での低価格競争や精米工場の稼働率低下など、流通過程において採算性の低下する要因が蔓延っている」(同p9)と分析されている。
米麦卸売業の事業所数の推移をみると、2012年は2262だったが2021年には1732に減った。北海道を除く全地域で減少傾向にある(同p42)。また、日本政策金融公庫「業種別経営指標」(2023年8月4日)によれば、米麦卸売業の売上高平均利益率は平均値で-3.2%と赤字であり、黒字企業だけを集計しても1.6%にとどまる。低米価と過当競争の中、米卸は利益を出しにくい業態になってきた。
米穀卸業者の全国団体、全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)は「米卸は薄利多売の業界だ。玉(米)を業界内でぐるぐる回してそれぞれが利益を取り価格が上がっていくなど、極めて考えにくい。米の価格は需給で決まる。昨秋から上がったのは玉が不足していたからだ」(業務部)と説明する。
実需に届くまで5社が関わるケースも
「5次問屋」があるかどうかについて全米販は「私たちに『5次卸』があるか聞かれても困る。青森の米を普段扱っていない卸が、青森とのパイプが太い卸にお願いして調達するような業者間売買はあるが、それは1次、2次といった上下関係ではなく水平関係だ」(業務部)とする。
取引形態によっては農家と実需との間に入る会社が5社にのぼることはあるというのは東京の取引関係者だ。
「一般的ではないが、ブローカーや決済会社が間に入れば、『5次』と呼ぶかどうかはともかく、関わる会社が5社になることはある。大手卸から安定して仕入れるのではなく、都度安い米を仕入れようとするディスカウント店等では、そういうケースもあるのではないか」(同関係者)
昨年来のにわか集荷業者やブローカーの米取引参入は、米価高騰の原因というより結果だろう。そうした業者のせいで米価が上がったというより、流通の各段階で米が不足し米価が上がったからそうした業者が利益を上げる余地が生まれたのだ。
米の自給を守るには
全米販の「米穀流通2024ビジョン」でも分析されているように、米流通にも課題はある。ただ、昨年からの米価高騰の主因を流通に求めることはできない。
野上米穀の野上会長はこう話す。
「今回の『米騒動』が米の生産や流通を見直すきっかけになってほしい。生産者にわたる価格が60kg2万円台で安定し、100%自給できる米を守らないと」
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