JAの活動:米価高騰 今こそ果たす農協の役割を考える
【米価高騰 今こそ果たす農協の役割】水田活用に直接支払い必須 JAグリーン近江組合長・大林茂松氏2025年7月16日
政府は米の増産に舵を切る方針を示しているが、海外依存から脱却しようと現場ではブロックローテーションによる麦と大豆の生産にも力を入れてきた。今後、これをどう支える政策がもとめられるのか。今回はJAグリーン近江の大林茂松組合長が問題提起する。
JAグリーン近江組合長・大林茂松氏
まず、初めに私が組合長として先般総代・組合員・地域の利用者に向け発したメッセージをご覧いただきたい。
◇
マスコミは連日、政府備蓄米や水田農業政策に関する報道に多くの時間や紙面を割いていることに加え、インターネットメディアでは、マスコミ以上に様々な情報が飛び交っています。
そのなかには、国民への食料の安定供給を懸命に支えてきた生産者やJAグループの努力を踏みにじる、現場の実態をふまえない報道も多くみられます。
長らく、「生産者が受け取る米代」は下落の一途をたどり、その価格は生産コストを割り込み、「米作りだけでは赤字」が続く状況で、今般、ようやく30年前の価格に戻り、「営農継続」そして「農業の魅力」に一筋の光が見えてきたところでした。
私たち生産者およびJAは、「とにかく消費者の米代がどんどん上がればいい」とは思ってはいません。ただ、少なくとも生産者が受け取る米代が、「生産コストを賄え、営農を継続しうる、再生産可能な『適正な価格』」であることを求めています。
また、JAも、「1年に1回しか収穫できない」米を、「1年(周年)を通じて、安定的に国民に提供」するために、米の共同販売・共同計算、また共同利用施設や低温倉庫等の運営をはじめ、わが国の食料安定供給を担う組織として、その役割と責任を果たしてまいりました。
当初、国は備蓄米の放出は「流通の目詰まりを解消するため」と説明し、価格には関与しないとしていました。しかし、農林水産大臣が替わり、備蓄米の放出が価格調整のために使われ、その際に生産者への説明は一切ありませんでした。米が安い時には何もせず、高くなったら国が関与して価格を下げる。
今般の一連の動きには「消費者へのアピール」はあるものの、「生産者への配慮」は置き去りになっています。
JAとしては、国に対して、「消費者目線」だけでなく、「生産者目線」をもっと大切にした政策の展開を強く求めていきます。
「主食用米増産にシフト」など、国が米政策の方針を転換するような報道があります。
JAとしては、それは「あまりに拙速」と考えております。
米・麦・大豆を主体として、農作業効率の限界まで最適な労力配分をしながら労働生産性を高める、いわゆるブロックローテーションを確立してきた本県において、急な主食用米の増産には、まずもって労働力(人手間)が不足しています。また、現状の水利や施設ではすぐに対応できる状況ではありません。
さらに、主食用米の増産によって、国産麦・大豆の生産量の激減が見込まれ、食料安全保障上の懸念が生じます。
それらに加えて、根本的な「米の需給バランスの崩壊」などへのリスク対策、そしてそのための財政措置も明確にしないまま、拙速な議論・判断は行うべきではありません。
国は、今般の備蓄米の放出に至った経過をふまえ、まずは、「生産・流通・販売・備蓄のあり方」などについてしっかり検証を行い、必要な対策を講じ、その結果を踏まえ、令和9(2027)年度以降の水田政策の見直しに向けて具体的な議論を進めるべきです。
JAグリーン近江とJAグループ滋賀は、「多様な担い手が、将来に希望を持って農業を継続できる環境」を構築し、生産基盤を維持し将来にわたって主食である米を消費者へ安定供給できるよう、「適正な価格形成の仕組み」ならびに、価格下落時における生産者への「直接支払いによる所得補償制度の実現」を両輪に、持続可能な農業生産の実現に向けたJA活動を強力に展開してまいります。
◇
このメッセージは、最近の米や農政に関する報道などを踏まえた情勢と、グリーン近江農業協同組合の組合長としての考えを伝えるために、総代会及び広報誌等で組合員・地域の利用者皆様に当てたメッセージである。
このことから、本稿のテーマである「米価高騰 今こそ果たす農協の役割」を考えてみる。
(1)米の適正価格
まず、米の適正価格については、いろんな議論はあるが、JAは生産者の立場から米価格の適正性を示し、消費者の理解を目指すこととする。
令和5(2023)年産米の生産費は60kg1万5948円(農水省:令和5年産)となっている。これにその他必要な経費(一般企業会計でいう販売にかかる経費や一般管理費、農機取得等に必要な資金のための内部留保など)(集落営農法人を参考)を加えると60kg2万2000円~同2万5000円程度になる。
そこで、仮に玄米価格を2万4000円(税込)に置き、精米歩合90%、卸等の諸経費kg120円、小売手数料20%の条件で算出してみると5kg3384円(3654円税込)となる。
この価格より集荷から出荷にかかる運賃、検査手数料、保管経費等、諸経費等を差し引くと2万2000円~2万3000円程度の生産者手取りとなる。
JAグリーン近江では5月に生産者に向け、令和7(2025)年産米概算金の価格水準について、品種により異なるがコシヒカリ、みずかがみの主要品種で60kg2万4000円で通知した。
この価格が生産に対する適正価格だと考えている。
(2)米の概算金制度
次に米の概算金制度について、小泉進次郎農林水産大臣は全中会長に米の買取方式の拡大を促した。農家がリスクを負うのではなく、JAがしっかりリスクをとって売っていくべきだと言及した。
概算金だと農家の所得向上につながらないとみているらしい。
基本的には概算金でいくのか、買い取りでいくのかは生産者が選択すればいいと考えるが、農業協同組合の基本は共同販売、共同計算であるはず。ところが近年JAの集荷率(量)が減少し、販売力そのものが低下してきた。そのことで、圧倒的な数量による本来のJA共販のメリットが出しにくくなってきているのではないか。
農産物価格はほとんど需要と供給のバランスで決まり、その上自然環境つまり気候や台風、降雪、霜などにも生産量や質が左右されそのことにより価格も大きく左右される。
米も例外ではなく、特にここ2年ほどは酷暑による影響もあり、今のような米騒動の大きな要因となっている。
さらに、米は1年に1度しか収穫できない。それを1年間かけて安全面や衛生面にも気を配り、保管しながら供給していかなければならない。そのためには低温倉庫や集出荷施設等の共同利用施設整備も必要であり、今日まで大きな投資をしながら、消費者に安全・安心と新鮮でおいしいお米を届けるために努力してきた。
日本全国にはカントリーエレベーターが726基あり、その処理能力は200万トンを超え、米集出荷の拠点施設、我が国の食料基地として重要な役割を果たしている。米の共同利用施設では消費者に安全で安心できるおいしいお米を届けるために、もみの形で年間を通じて保管し、必要な時にもみ摺りをし、新鮮でおいしいお米を安定して供給している。その性質上、年間を通じて出荷が終了しないと利用生産者ごとの玄米出来高が確定しない。どうやって重量が分からない米を買い取るのか。
また、消費税のインボイス制度については、農業協同組合や農業組合法人等の組合員、その他の構成員が農協等に、無条件委託かつ共同計算方式にて販売を委託した場合、組合員等から購入者への適格請求書の交付義務が免除されるいわゆる農協特例がある。
これらのことを考慮すると、買い取り方式がすべての生産者に有利になるとは考えられない。
生産者自らが有利な方式を選択すればよい。
今後も共同販売・共同計算を続けてゆくには、JAへの集荷量をもっと増やし、数量による本来のJA共販のメリットを出すべく努力しなければならない。
(3)米・麦・大豆等を含めた食料安全保障
令和の米騒動以来、米の価格ばかりがクローズアップされているが、日本で自給できる食料は米だけだ。ほとんどは輸入に頼っており、毎日の食生活にはなくてはならない、特に自給率の低い麦や大豆、飼料作物等の自給率も上げることが食料安保上極めて重要である。
今日まで米・麦・大豆を主体として、労働生産性を高めるブロックローテーションを確立してきたが、今さら米の増産と言われても急にはできない。今までの苦労は何だったのか。
米を増産すると必然的に麦や大豆の生産量は激減するだろう。そうならないために、米の適正価格だけではなく、麦・大豆や飼料作物の直接支払いも含めた適正価格も十分検討する必要がある。
特に主食の米については、生産者の適正価格と消費者の適正価格の差を埋める直接支払いによる所得補償制度が必要ではないか。
最後に米の適正価格で述べた米価格に対する消費税、共同販売・共同計算での消費税のインボイス制度の扱いについて、日本国民の主食というならば、消費税をゼロにすればよい。
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