(464)「ローカル」・「ローカリティ」・「テロワール」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月5日
最近、ローカルだけでなく、テロワールという言葉をよく聞くようになりました。今回は食と「土地」に関わる混乱しやすい言葉を少し整理してみます。
ローカル・フード(local food)という言葉が持つ印象は人それぞれである。外来語としてローカルもフードも定着しているため、そのまま受け入れられているようだ。
ただ、ひとつだけ気をつけるとすれば、農産物や食品に関する文脈でローカル・フードという言葉が用いられた場合、それは基本的に「地理的・物理的な近さ」を念頭に置いた表現であることだ。そのため、地産地消やフードマイレージなどとの相性が良い。さらに、地理的に近くであれば新鮮、輸送コストが少なく、環境負荷も小さいと考えられるため、行政や業界関係者は好んでローカル・フードという言葉を使いがちである。
実は日本語と英語の意味の世界には微妙な違いが存在するが、その多くは曖昧にされている。ローカル・フードもその例のひとつである。
例えば、「ある土地らしさ」を表している料理や食品のことまで、多くの場合ローカル・フードという表現でまとめられてしまう。フード・ロスとフード・ウェイスト(廃棄)を全て食品ロスにしてしまったようなものだ。
それでは「ある土地らしさ」を表す料理や食品とはどのようなものか。正確に言えば、単に地理的にその場所で生産されただけではなく、その料理や食品がその土地ならではの「文化・歴史・風土・物語性」などを伴うレベルに昇華したものである。英語ではこれをローカリティ・フード(locality food)と呼ぶ。ただ、ここに誤解の要因がある。
例えば、筆者が住んでいる宮城県には「ずんだ」がある。これは宮城県で作られた大豆を中心に「ずんだ〇〇」が食べられているが、他県産の大豆を使用している場合もあるであろう。では、新潟県産大豆を使用し仙台で販売している「ずんだ○○」は仙台のローカル・フードと言えるか、という問題が生じる。
ローカルの概念を地理的なものと理解していれば、これは妥当しない。ただし、県内外の人にとって、例えば仙台でずんだを食べることはその土地の食文化を味わうことでもある。そう理解すれば、いずれの土地で作られた大豆であっても、それはローカリティ・フードを味わうことになる。つまり、ローカルに文化的要素が加味されたものが、ローカリティ・フードという訳だ。東京で食べる牛タンもローカリティ・フードである。
残念なことに日本の農業・食品産業はこうした内容を理解はしていても、正確に伝えていない、場合によっては隠す様な姿勢が垣間見えるため、誤解が生じる。
さらに、最近ではテロワール(terroir)という言葉が流行っている。これは何か。この言葉はフランス語であり、元々はワインやチーズなどの業界で使用されていたものだ。習慣や文化というやや曖昧さが残り、それをまた厚さや深さとして尊重するローカリティの中に、自然科学的な条件(土壌、気候、水、微生物、地形など)を厳密に食品特性の規定要素として埋め込んだものである。日本でも日本酒などでは用いられている。いわば類似品との差異について、科学的説明が可能な特定の土地が作る「味の土地性」、これがテロワールである。
以上をまとめてみると、土地とそこから取れる農産物や食品などを見る場合に、ローカルは単に距離、それにその土地の文化・習慣的要素が加わるとローカリティになり、さらに、文化に自然科学的根拠が加わるとテロワールになると理解すればよい。
全国の生産者や食品関連業界では、地域ブランドを強調している。それは、単なる地理的な近さだけでなく、土地の意味や習慣などの文化、そしてさらに科学的根拠までもが備えられてこそ、最強の地域ブランドが構築されるという点を是非、覚えておいてほしい。
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