消えた先物価格を活用した収入保険Q&A【熊野孝文・米マーケット情報】2026年2月17日
2月12日に農政調査委員会が主催して開催された「第5回コメ産業・コメ市場取引に関する懇話会」では、はじめに近藤秀衛氏(元伊藤忠食糧(株)社長)が「アメリカの収入保険と先物取引」について講演した。講演ではアメリカの主要農業経営安定対策や農業保険の歴史や制度・仕組みについて詳しく説明した後、日本の収入保険制度についても言及、この中で農水省が令和6年8月に示した収入保険に関するQ&Aで、品目別の収入保険にすべきではないですか、という質問に対して、回答として意図的に収入を減少させるモラルハザードの発生が懸念されるとした後に「なお、米国には、品目別の収入保険が存在しますが、モラルハザードの防止や事務コスト低減のため、農業者個人では操作できない先物価格を使用する仕組みとなっており、対象品目も先物価格のあるものに限定されます」と言う記述が掲載されていたが、現在、この記述は削除されていることを指摘した。

近藤氏は、講演の初めにポイントとして①アメリカと日本の農業経営安定対策を俯瞰、対比し日本の収入保険制度の課題を考える②その課題解決に向け、アメリカの保険制度等を参考に、類似制度への重複加入、公平な市場価格としての先物価格の利用等を考える③定期的な制度の見直しを通じ、保険制度のさらなる充実、安定運用と農業者の経営安定を図ることを考える-3点を挙げ、まず、アメリカの主要農業経営安定対策について説明した。
それによると現在、アメリカの農業経営安定対策は「2018年農業法に準拠するプログラム(価格・所得支持PLC<価格損失補償>全国ベース販売価格が基準価格を下回るとき、差額を補填:ARC<収入損失補償>販売収入が基準収入の一定割合を下回るとき、下回る部分の一定部分を補償:MALP<価格支持融資>穀物等を担保とする短期融資制度、融資単価による最低価格を保証する価格支持(融資)」と連邦農業保険法に準拠する農業保険(作物保険、収入保険)の2つから構成されている。
その歴史は1933年の価格支持融資制度から始まり、概ね5年ごとにプログラム、財源等を策定している。現在は2018年のプログラムが延長されている。1938年に農業保険公社が設立され、1980年に農作物保険法が成立、1994年に制度改正が行われ、1996年に収入保険制度が導入された。
農業者は農業法に準拠するプログラムと農業保険への同時組み合わせの加入が可能で、過去と現在の異なる作付け作物における作物間の価格変動等による収入減少をカバーし、より現実に即した補償が得られる。また、PLC、ARCの支払いには全国平均販売価格が採用されるが、価格確定に1年を要し、結果支払いは収穫後1年になるため入金までの期間が長い。
一方、農業保険は収穫直後に支払いとなるので入金までの期間が短いため金融機関からの営農資金融資返済などへの資金繰りが出来る(金融機関は融資の際、農業保険加入を要件としている)。
この後、農業経営安定対策による支払額の推移や農業保険の種類や加入状況等のデータを示した。主要作物の農業保険面積加入率と収入保険シェアでは、コメはそれぞれ87.1%、38.2%になっている。他の作物も面積に占める収入保険の加入率は高く、必要不可欠な存在になっているとした。
収入保険の概要は、収入保険の保険金額に占める割合が最も高い(93%)RP(Revenue Protection)は「農業者個人の収穫量と先物価格・契約価格に基づく収入保証」で、その場合の先物価格は作付け前の先物価格か収穫時の先物価格のどちらか高い方を採用することになっている。収入保険における先物価格利用のメリットとして①栽培期間中の価格変動リスクに対応(過去の価格ではなく予測価格である先物を利用することで補償基準に収穫時の市況を反映でき、かつ2月と10月の先物価格の高い方を採用することで、栽培期間中の価格変動による収入減少のリスクが緩和できる)②先渡し契約にかかわる農業者のリスクを緩和出来る(収穫時のハーベストプレッシャーによる価格低下を避け、収穫期前の高い価格で先渡し契約をした場合、収穫時の価格上昇により期待利益の損失が生じるが、収入保証額に収穫時の高い価格を利用できるためリスクを緩和できる)
この後、日本の主要農業経営安定対策として農業共済や収入保険制度についても解説、課題として「アメリカの保険制度等を参考に類似制度への重複加入、公平な市場価格としての先物価格の利用等が今後定期的な見直しの中で検討され、保険制度のさらなる充実と安定運用が進み、農業者へのセーフティネットがしっかりと講じられ、経営の安定が進むことを期待したい」と述べ、講演を締めくくった。
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