農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(95)JIRACの分類【防除学習帖】第334回2026年1月31日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っており、そのことを実現するのにはIPM防除の活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探りたいと考えている。
IPM防除では、みどり戦略対策に限らず化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせ、必要な場面では化学的防除を使用して防除効果の最大化を狙うのが基本だ。その際、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できればみどり戦略対策にもなるので、本稿では現在、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理し、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道がないかを探っている。そのため、登録農薬の有効成分ごとに、その作用機構を分類し、RACコードの順番に整理を試みている。
前回までにFRACコードの表日本版(2023年8月)に基づく整理が終了したので、今回からJIRACの分類表(2023年9月版)にもとづいて整理し紹介していこうと思う。整理の都合上、JIRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
表記する項目を次の5つにわけ、それぞれの以下の意味・内容で整理する。

1.アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤 (カーバメート系)
(1)主要作用機構:アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害
この主要作用機構グループには現在のところ、カーバメート系と有機リン系の2つのサブグループがある。今回は、カーバメート系を紹介し、次回有機リン系を紹介する。
(2)作用分類:神経作用
(3)サブグループ名:カーバメート系/IRACコード[1A]
(4)有効成分名(農薬名):
カーバメート系に属する有効成分は8つあり、それぞれの[農薬商品名]は次のとおり。
[1]:カーバメート系/アラニカルブ[オリオン]
[2]:カーバメート系/ベンフラカルブ[オンコル]
[3]:カーバメート系/NAC(カルバリル)[デナポン]
[4]:カーバメート系/カルボスルファン[アドバンテージ・ガゼット]
[5]:カーバメート系/BPMC(フェノブカルブ)[バッサ]
[6]:カーバメート系/メソミル[ランネート]
[7]:カーバメート系/オキサミル[バイデートL]
[8]:カーバメート系/チオジカルブ[リラーク]
(5)アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤の作用機構と特徴
害虫が行動を起こす時、神経細胞が信号を受け取り、それに対する行動を起こすべく、隣接細胞へと新たな信号を発信するという情報処理が行なわれている。この時重要な役割を果たすのが神経伝達物質であり、神経細胞はこれを使って他の神経や筋肉細胞と通信している。神経伝達物質は神経細胞から放出される小さな分子で、速やかに隣接細胞へと拡散し、たどり着くとある決まった反応を促す。その反応の種類は、神経伝達物質によって異なり、GABAは情報の行き来を阻害し、アセチルコリンは主に信号を神経細胞から筋肉細胞へ運ぶ仕事を担っている。運動神経細胞が神経系から特有の信号を受け取ると、シナプスから筋肉細胞へとアセチルコリンが放出されて、筋肉細胞上にある受容体を開いて筋肉を収縮させる。この役目を終えるとアセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼの働きで速やかに分解されるのだが、本グループの殺虫剤は、アセチルコリンエステラーゼの働きを阻害してアセチルコリンを分解されないようにする。そうなるとアセチルコリンが蓄積して、筋肉を収縮する信号が発信続けられることになり、害虫は運動障害を起こし、殺虫効果が現れる。
(6)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
カーバメート系殺虫剤の各有効成分のリスク係数と基準年のリスク換算量およびリスク換算総量を次表に示した。アラニカルブはADIが設定されていないが、カーバーメート系殺虫剤全体のリスク換算量を算出する目的でアラニカルブの代謝物であるメソミルのリスク換算係数を当てはめて算出した。
これによると、カーバメート系殺虫剤のリスク換算量の合計は158.7トンと基準年のリスク換算総量に対し0.68%に過ぎないことに加え、農薬の再評価制度に伴い、有機リン系殺虫剤の執行や作物登録失効が予定される中、カーバメート系殺虫剤が代替農薬として重要であることから本系統の殺虫剤は削減を考えることなく、可能な範囲で使用継続した方が得策と考えられる。
(7)カーバメート系の農薬登録がある主要害虫一覧
カーバメート系殺虫剤の主要作物・対象害虫名の一覧を次表に示した。現在登録を有している有効成分を列記したが、再評価制度の進行に伴い登録内容が変更される場合があるので、次表は防除対象害虫ごとの殺虫剤選定の参考とし、農薬の実際の使用にあたっては製品のラベルをよく確認して使用すること。
重要な記事
最新の記事
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(97)JIRACの分類【防除学習帖】第336回2026年2月14日 -
シンとんぼ(180)食料・農業・農村基本計画(22)水田政策の見直し2026年2月14日 -
農薬の正しい使い方(70)アミノ酸合成阻害【今さら聞けない営農情報】第336回2026年2月14日 -
ローマで一度は訪れたい博物館――国立ローマ博物館【イタリア通信】2026年2月14日 -
【人事異動】JA全農 部課長級(4月1日付) 2月13日発表2026年2月13日 -
全中トップフォーラム【情勢報告】JA全中常務 福園昭宏氏 役職員で意義共有を2026年2月13日 -
【実践報告①】JA十和田おいらせ組合長 畠山一男氏 支店長を核に出向く活動2026年2月13日 -
【実践報告②】JAセレサ川崎組合長 梶稔氏 相談体制と職員育成に力2026年2月13日 -
【実践報告③】JA富山市組合長 高野諭氏 トータルサポート室奏功2026年2月13日 -
【実践報告④】JAたじま組合長 太田垣哲男氏 "地域ぐるみ"接点強化2026年2月13日 -
【実践報告⑤】JAえひめ中央理事長 武市佳久氏 新規就農の育成に力2026年2月13日 -
【実践報告⑥】JA鹿児島みらい組合長 井手上貢氏 "考動"し実践する職員に2026年2月13日 -
【特殊報】キュウリ退緑黄化病 県内で初めて発生を確認 三重県2026年2月13日 -
【サステナ防除のすすめ】IPM防除の実践(病害編) 生態系、環境に配慮(1)生物的防除とは2026年2月13日 -
【地域を診る】気仙沼・陸前高田を訪ねて 「思い込み」からの解放を 京都橘大学学長 岡田知弘氏2026年2月13日 -
【サステナ防除のすすめ】IPM防除の実践(病害編) 生態系、環境に配慮(2)物理的防除法2026年2月13日 -
【サステナ防除のすすめ】IPM防除の実践(病害編) 生態系、環境に配慮(3)耕種的防除法2026年2月13日 -
2週連続で価格上昇 スーパー米価5kg4204円 高止まり、いつまで2026年2月13日 -
米価高騰背景、純利益55億円の「過去最高益」 木徳神糧25年12月期決算2026年2月13日 -
【26年度生乳生産】5年連続減産、初の都府県300万トン割れか2026年2月13日


































