焼き芋ブームを食文化に 農協がブームの火付け役 茨城で焼き芋サミット2026年1月23日
「焼き芋がブームになって20年。それを食文化に定着させよう」。今やスーパーの店頭だけでなく、コンビニやドラッグストアでも焼き芋が売られている。その火付け役となったのが”なめがた農協(現なめがたしおさい農協)”。その本拠地の茨城県行方市「レイクエコー」で16日に「全国焼き芋サミット」が開かれ、全国から焼き芋愛好家、生産者、行政、農協関係者、焼き芋業者、研究者など350人が集まり、焼き芋をブームから文化に定着させるための方策などを語り合った。(客員編集委員 先﨑千尋)
焼き芋ブームを食文化にと訴える金田組合長
サミットの冒頭、同農協の金田富夫組合長は「農協では約30年前に主食用だったサツマイモを焼き芋として販売しようと考え、スーパーの店頭で販売することを始めた。しかし、焼き方や品種などで1年を通しておいしい焼き芋を提供することは難しかった。工夫を重ね、マニュアルを作り、今では全国約4000店舗で通年販売している。焼き芋をブームで終わらせるのでなく食文化にしていきたい」と話した。同農協甘藷部会は2017年に、日本農業賞と農林水産祭天皇杯を受賞している。
サミットでは最初に、茨城県の職員時代にサツマイモの病害虫研究に携わってきた、東京大学大学院特任教授の渡邉健さんが、サツマイモの栽培で問題となっている「基腐(もとぐされ)病」「立枯病」「つる割病」対策などについて解説。「基腐病を必要以上に怖がらないでほしい。病気が発生したら焼却処分が最も効果がある。ネットで販売している苗は要注意。病原菌を持ち込まない、増やさない、残さないが基本」と、注意を呼びかけた。
基調講演は、サツマイモに特化したイベント「さつまいも博」を2020年に始め、現在は冬と夏の2回開いている実行委員会委員長の石原健司さん。「焼き芋を『あるとうれしいもの』から『あって当たり前。生活を豊かにするもの』と消費者に位置づけられれば、ブームから文化として定着したと言える。そのためにはコア層だけでなく、軽く興味があるライト層や子供世代、インバウンド(訪日客)へ視野を広げていく必要がある」と訴えた。同博はサツマイモ関連のイベントでは最大の動員数を誇る。
トークセッションでサツマイモの明日を語るパネラー
「焼き芋業界のいま、そしてこれから」というテーマのトークセッションでは、サツマイモ生産者や焼き芋業者らが登壇。サツマイモアナウンサーの鳥越佳那さんが司会を務めた。焼き芋店主のよっしーさんは「焼き芋で笑顔に」を合言葉に、北海道から九州まで各地の百貨店やイベントに出店し、イモの皮まで旨味や香りを感じる焼き芋を、生産農家の想いも伝えながら全国の焼き芋ファンに届けている。その技術や考え方を学びたいという弟子が40人もいるという。
茨城県龍ヶ崎市でサツマイモを栽培しながら商品開発、イベント、コンサルなどを手掛けている橋本亜友樹さんは「ブームを一過性で終わらせずに継続的に発展させるためには、サツマイモの品種名とブランドが混同している、新規の育成品種が広がりにくい、輸出拡大にはブドウのシャインマスカットのように品種の流出がリスクになる、などの問題がある」と指摘した。
10年前に葉タバコ生産からサツマイモに切り替え、現在は18種類を生産している行方市の渋谷泰正さんは「焼き芋の原料となるイモを安定して供給することが大事。そのためにも、輪作するなどして土地を休ませる。土づくりも欠かせない。後継者を外から呼び寄せる仕組みづくりも必要だ」と提案した。
なめがたしおさい農協甘藷部会で青年部「TEAM FUTURE」を率いている箕輪雅里さんは、50人のメンバーとともに国内外の販路拡大や販売強化に取り組み、栽培技術の勉強会や販促活動を続けている。「後継者が残れるようにしていきたい」と話した。
サミットの最後は分科会。参加者が、生産、焼き芋市場・消費トレンド、地域・観光・体験農業、暮らしと女性の視点に分かれて討議した。生産の分科会では、基腐病や立枯病などの対策に関する生産農家からの質問、意見が多く出されていた。
今回のサミットを主催した行方市は、2024年11月にさつまいも課を立ち上げ、行政と農協、生産者がワンチームとなって、サツマイモの取引や商品開発、企業とのコラボレーションなどを行っている。課と言っても、固定した職員がいて部屋や机があるわけではなく、内容によってそれぞれの問題、課題に取り組むというユニークな仕組みだ。既にキリンビール、カルピス、JR東日本などと新たな企画に取り組んでいる。
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