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「生き残った農家はみんな篤農」 崖っぷちの酪農現場から問う食と牛乳の未来2026年3月4日

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「酪農がヤバい」――その叫びから3年。日本の酪農発祥の地・千葉でも離農の波は止まらない。昨年のトラクターデモを経て、なおも続く生産現場の苦境と、3月29日の「令和の百姓一揆」に託す思いを実行委員会事務局で酪農家の金谷雅史さんに聞いた。

「厳し過ぎる中、生き残ってきた農家は全員、篤農家だ」と牛舎を背に話す金谷雅史さん(千葉県千葉市)「厳し過ぎる中、生き残ってきた農家は全員、篤農家だ」と牛舎を背に話す金谷雅史さん(千葉県千葉市)

米生産にとどまらない窮状

農業、農村の衰退を止め国産の食料を守るため、農政転換を訴えた昨年3月30日、東京での、令和の百姓一揆・トラクターデモは大きな反響を呼び、全国26都道府県で実行委員会が結成された。

令和の百姓一揆実行委員会(実行委)は今年、3月29日、トラクター&軽トラパレードと提灯行進を行い、広く参加を呼びかけている。

24年から米価が上がり「時給10円」といわれた米農家の窮状は緩和したが、米の需給は緩み、米の取引価格は再び急落し始めた。将来が見通し難い構造問題は何も解決していないのだが、問題は米ばかりではない。牛乳やバターを供給する酪農もまた、深い危機の下にある。

酪農をめぐる課題状況と「令和の百姓一揆」に込める願いを聞くため、立ち上げから実行委事務局に加わっている酪農家・金谷雅史さん(42)を訪ねた。

千葉市で酪農、30頭を飼育

金谷さんの牛舎は千葉県千葉市にある。金谷さんは、酪農の専門農協、千葉酪農農業協同組合(ちばらく)の理事でもある。

現在は、搾牛乳15頭、育成牛15頭を飼育し、1日350~400kgの生乳を出荷している。生乳を集荷して「千葉酪農3.6牛乳」などの牛乳やヨーグルト、アイスクリームを製造。小中学校やスーパーなどに販売するのが専門農協ちばらくの役割だ。

異説もあるが、千葉県南房総市は日本の酪農発祥の地とされ、大消費地・東京に近いこともあって、千葉ではかつて酪農が盛んだった。金谷さんも祖父から続く3代目だが、「酪農家はどんどん減っていて、この地区でもうち1軒になりました」と金谷さんは言う。

酪農ヤバいです

1年の収入(売上)はいい時で4000万円で、今は飼料や機械の高騰、需給の緩みで頭数を絞ったため、2000万円ほど。人件費・経費を引いて残る所得は「良かった時で600万円」。

2014年頃、生乳生産量が減ってバター不足になると、国は生乳増産のため、酪農家の大規模化を支援した(クラスター事業)。ところが20年、コロナ禍による学校休校などで需要が落ち込み、需給が緩んだ。そこにウクライナ戦争や円安による飼料高騰が追い打ちをかけ、酪農は「時給10円」どころか深刻な赤字に見舞われた。

22年11月、金谷さんは仲間たちと農水省前に行き、「酪農ヤバいです」と声をあげ国に支援を迫った。それから3年余、今はどうか。金谷さんは「最悪の時期は過ぎ何とか生き残ったが、もうかるようにはなっていない」と話す。

米問題とは異なる構図

農家への支援を求め、令和の百姓一揆実行委にも最初から加わった。多くの参加者、海外プレスも含めた報道に手応えを感じたが、「米問題に隠れて酪農のことが日の目を見ない」もどかしさも感じた。

「欧米並みの所得の補償を」というスローガンは、「農家を守れ」という願いを込めた最大公約数だが、田んぼの面積をベースにした米農家向けの所得補償は酪農には少し合わないので、独自の制度設計がいると金谷さんは考え、「国も支援してくれているのですが、もう少ししっかりしたセーフティネットがほしい」と願う。

生き残った農家はみんな篤農

大規模な担い手、篤農(熱心で研究的な農業者)に農地を集積すべきなのに、所得補償をバラまくとやる気がない農家も残ってしまうというのが、財務省などの「所得補償反対」の論拠の一つだ。それに対し金谷さんは「うちみたいな小さな酪農家も、酪農のインフラを支えています。今まで厳し過ぎた中を生き残ってきた農家は、みんな篤農だと思うんです」と力を込めた。

精米前で低温倉庫があれば数年単位で取っておくことができる米と違い、生乳は保存できない。需要減退期にはバターを作るが、同時にできる脱脂粉乳が余っている。生乳では、米とはまた違った需給調整が重要になる。「冬休みと春休み、ゴールデンウィークには消費が落ち込むんで、その時期に牛乳を飲んで欲しいですね」(金谷さん)

販売のその先に

ちばらくでは「販売なくして生産なし」を掲げ、販売に力を入れてきた。健康志向の強まりもあって、ヨーグルトの売れ行きが好調だ。金谷さんは「販売」だけでなくその先に「消費」を見据え、「消費なくして生産なし」と考えている。

消費ニーズに応えて生産する。地消地産に通じるが、「安ければ安いほどいい」ではない消費者理解の醸成も課題になる。「令和の百姓一揆」はその面で、生産者と消費者とが崖っぷちに立たされた地点で手を取り合い、相互理解を深める回路でもあった。

「酪農ヤバいです」デモの後、十分ではないものの農水省は酪農家の支援に乗り出した。昨年のトラクターデモなど「食と農を守れ」と願う世論を背に、農林水産予算も少し増えた。

声を上げることには意味がある。酪農への理解も進むことを願って、金谷さんは、行進する車両の後ろに「牛乳飲んで」と書いたシールを貼るつもりだ。

 ◇   ◇

令和の百姓一揆 トラクター&軽トラパレード・提灯行進
3月29日(日)14:30~
青山公園南地区・多目的広場(地下鉄千代田線「乃木坂駅」下車・歩4分)
16:00~トラクター&軽トラパレード出発
17:00~人行進(提灯行進)
1000円以上の会場カンパに対し提灯を渡す(1000個用意し、なくなり次第終了)

今年の「令和の百姓一揆」トラクター&軽トラパレード・提灯行進のチラシ今年の「令和の百姓一揆」トラクター&軽トラパレード・提灯行進のチラシ

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