米は白未熟粒増え、乳牛は乳量が減り、ミカン産地は大幅減 環境省が「気候変動影響評価報告書」 自給率向上の重要性示唆2026年2月17日
気候変動はもはや将来の予測ではない。米の品質低下や乳量の減少など、日本の農業現場では既に深刻な事態が進行している。環境省が公表した最新の報告書は、対策を怠れば今世紀末には食料生産基盤が揺るぎかねないという、強い警告を発している。

すでに始まっている食の危機
環境省が二月一六日に公表した「第3次気候変動影響評価報告書」は、気候変動適応法にもとづいて、最新の科学的知見を踏まえ中央環境審議会の意見を聴いて、環境大臣が気候変動影響の総合的な評価についておおむね5年ごとに作成、公表する。今回の報告書は、2024年5月に中央環境審議会に諮問、26年1月に出された答申を踏まえ、作成された。
報告書では、農業・林業・水産業、水環境・水資源、自然生態系、自然災害・沿岸域、健康、産業・経済活動、国民生活・都市生活の7分野を細分化した80の項目ごとに、重大性、緊急性、確信度(現在の状況や予測の確からしさ)の3つの観点から気候変動影響を評価している。
農業への影響には「気温や水温、CO2濃度の上昇といった気候変動の直接的な原因によるものと、水資源量の変化や自然生態系の変化を介した間接的な原因によるものがある」(報告書p40)。
水稲:白未熟粒が急増、高温耐性品種に効果
水稲では、1日あたりの平均釣果温度が1℃上がるごとに全国の一等米比率が15ポイント低下するとされるが、猛暑となった2023年は全国平均で超過が1.8℃に達し、一等米比率は60.9%と、2004年以降最低を記録した。白未熟粒も増加傾向にあり、斑点米カメムシ類の分布拡大も温暖化による越冬可能域拡大との県連が示唆されている。
RCP8.5シナリオ(4℃上昇シナリオ)では、21世紀中頃にわずかな増収、21世紀末には約20%の減収が予測される。白未熟粒率は、21世紀中頃で約20%に達し北日本にも広がる。21世紀末には約40%に達する。
高品質米では、品種の高温耐性を2ランク向上させた場合、温暖化が2℃程度進行しても、白未熟粒率30%以下の生産量を維持できる。だが、それ以上の温暖化では、生産量の低下が予想される(報告書p42)。
施設栽培のトマトは病害、ばれいしょも収量減
野菜では、すでにホウレンソウ、タマネギ等で高温・多雨あるいは少雨による生育不良、生理障害や収量・品質の低下が生じている(報告書p45)。
2℃上昇の場合、タマネギは九州南部や首都圏の一部で収量低下がみられるが、多くの地域では収量が増加すると予測される。ばれいしょは、開花期から収獲までの日最高気温が28℃を超える日数は、2℃上がると約2倍、4度上がると約3倍に増加すると予測され、それぞれ収量を約7%、約16%低下させる要因となる。
施設栽培のトマトは、RCP8.5シナリオにもとづく葉先枯れ症の発症葉率予測では、2030年代に比べ2090年代は栽培初期に20%ほど増加し、症状多発による被害蔓延、収量大幅減が懸念される。
温州ミカンの栽培適地が激減、乳牛の乳量も本州全域で低下

果樹では、すでにブドウ、リンゴ、温州ミカンで、夏季の高温による果皮の着色不良、日焼け、浮皮等が多発している(報告書p46)。SSP5-8.5シナリオでは温州ミカンの栽培適地が北または内陸に広がり、21世紀末には適応策なしでは生産が難しくなる地域が大幅に増えることが予測される。逆にアボガドは気温上昇に伴って栽培適地が拡大し、SSP5-8.5シナリオでは21世紀中頃には温州ミカンの栽培適地の多くがアボガドの栽培に適するようになると予測される(報告書p46)。
畜産では、すでに夏季の高温による生産性・成長量・繁殖率の低下が発生している。泌乳牛についてはSSP2‐4.5シナリオ(CO2排出が今世紀半ばまで現在の水準で推移)の2030年代以降、乳量の大幅な低下が本州全域で進行し、気温上昇とともに拡大する。肥育豚では、関東以南や九州沿岸で10%以上の生産性低下が予測される(報告書p49)。
食の危機は世界的、「国消国産」が重要
また、世界全体で、気温上昇が主要穀物等(小麦、大豆、トウモロコシ、米)の収量を減少させ、食料需給に影響を及ぼすと予測される。また、干ばつ、洪水、熱波の強度と頻度の増加、海面水位上昇が食料安全保障のリスクを高めることが予測されている(報告書p125)。
財務省・財政審議会は2024年11月に出した建議で、「(食料)輸入に関しては、現在の輸入品の大宗が、政治経済的に良好な関係の国からのものであることを踏まえれば、こうした品目については、あえて国民負担で国内生産を拡大するということではなく、輸入可能なものは輸入し、ほかの課題に財政余力を振り向けるという視点も重要である」と主張し、食料自給率向上にも消極的な議論を展開した。だが、輸入元の国と日本とが「政治経済的に良好な関係」にあったとしても、温暖化や自然災害のためにその国で食料の生産が低下するリスクが高まる可能性が高いことを「気候変動影響評価報告書」は示唆している。農業では高温耐性品種の普及などの技術的対応と併せ、「国消国産」、自給率向上を進めていくことが重要である。
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