JAの活動:米価高騰 今こそ果たす農協の役割を考える
小泉発言「木を見て森を見ず」 ありえない"米の全量買い取り" JA福岡中央会会長乗富幸雄氏2025年7月7日
JA福岡中央会の乗富幸雄会長は「持続可能な農業へ加速を」考えたい、と抱負を述べていた。その間「食料・農業・農村基本計画」見直しが発表され、また「令和の米騒動」で大騒ぎになりこのことについて「緊急発言」した。(聞き手=髙武孝充・元JA福岡中央会農政部長)
JA福岡中央会会長乗富幸雄氏
「農業の多面的機能を語る資格」はない。
「食料・農業・農村基本計画」見直しは、国民に対して「食料安全保障=食料自給率の向上」が政府の第一に来るべき目標であるのに、大区画を更に大規模にして、60kg9500円程度で30か所の輸出基地から35万tを目指すという。米を輸出することに反対はしないが、40%の中山間地の維持することも真剣に考えないと「農業の多面的機能」を語る資格はない。
「令和の米不足」は何故起こったのか・政府は安易に口を出すべきではない
長年、全農ふくれん時代から米問題をやってきた。「令和の米騒動」に関して言えば、長い間コメ価格は赤字で推移してきた。生産者はそれでも米作りに励んできたが、意欲が自然となくなってきたと思う。
私も、毎年1haで米を作っているが、この数年国が発表する作況程に収穫できてないと感じていた。高温に耐えうる米品種は福岡県にはまだ少ないので米粒が大きくなる時期に高温であれば、生育障害がでる。今回の騒動はこうした事が一気にふきだしたと考えている。また、作況指数で採用しているふるい目1・7ミリと生産者やJAが流通させているふるい目は1・8ミリ~1・9ミリの食い違いである。これだけで、流通量は数㌫少なくなる。農水省に何度も言ったが納得できる回答は何も帰ってこなかった。前農相の江藤拓氏に変わって登場した小泉進次郎農相は、「政府備蓄米を随意契約にして5kg2000円の店頭価格」「古古古古米も店頭に並べる」「JAは米の買い取り制度にすべきだ」「輸入米も店頭に並べる」などなどいろいろ発言されているが、私は「木を見て森を見ず」と感じている。米は安ければ良いというものではない。自民党の森山裕幹事長は「消費者に安い米を安定的に供給することも大切だが、生産者が再生産できる価格にすることも大事なことだ」と発言したが最も大切なことで十分理解できる。
私は、古古古古米とは言いづらいので鶏米と言っている。また「備蓄米はカビ毒が発生する可能性があるので安全性には最大の注意を払うべきだ」。政府は安易に口を出すべきではない、と考える。
JAの米買い取りは安易にすべきではない。インボイス制度はデメリットを十分理解して判断すべきだ。
小泉農相は「JAは米の買い取りを実施すべきだ」とも発言した。全農は米の買い取りは実施し生産者の判断に任せている。小泉農相の発言が全て買い取り制度をやれ、というのであれば現実問題として不可能だと言わざるを得ない。個人農業者にとっては、インボイス制度(注)という複雑な手続きを得る必要があり、全て買い取りとなれば大変なことになる。
政府備蓄米には数年はかかる。その水準はせめて3カ月分180万~200万t程度が必要で国民は安心しない。
政府備蓄米90万tを取り崩した。残り10万では備蓄とは言わない、単なる在庫米だ。政府備蓄米は絶対必要である。問題はその備蓄水準で、国民に安心感を与えるためにはせめて3カ月分、180万~200万tくらいは最低限必要だ。
(注)インボイス制度は、2023年10月に新たに導入された消費税の制度の一つで、個人事業主(農業者)はインボイス制度による影響をなんらかの形で受ける。制度開始後、免税事業者のままでは取引先の課税事業者が取引に際して仕入税額控除を受けられないため、相手に損をさせてしまうことになる。これを嫌って、取引先の業者に契約を切られ、ほかのインボイス登録済み業者に乗り換えられるおそれがある。
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