【浜矩子が斬る! 日本経済】「参院選に向けての争点と生活保護費減額問題の関係」弱者の視点忘れずに2025年7月7日
参院選が公示されて、争点を巡る与野党の主張とそれらをフォローするメディアの報道合戦が盛んだ。もっぱらの焦点となっているのが、物価対策だ。物価高騰がもたらす人々の生活苦を軽減するために、何をするか。消費税減税なのか。現金給付なのか。この「二択」問題がメディアをにぎわせている。
 エコノミスト 浜矩子氏
エコノミスト 浜矩子氏
この点との関わりで、思うことが二つある。その一つが、何のための生活苦軽減なのかだ。そしてその二が、6月27日に最高裁が下した生活保護費の減額に対する違法判決の意義だ。
まず、生活苦軽減だ。与野党双方は、これを弱者救済というテーマとの関わりでとらえているのか。あるいは、活況に欠ける個人消費の盛り上がりを喚起する手段だと考えているのか。前者であれば、これは所得再分配問題だ。後者であれば、これは経済成長促進問題になる。
メディアの報道の仕方をみれば、与野党とも、いきなり分配政策一辺倒になっているというようなイメージになっている。それよりは、中長期的・構造的な観点から日本経済の成長力を強化することの方が本質的課題だ。そんな論調も数多い。だが、政治家たちは、本当に分配論者に変身しているのか。どうも、そうは思えない。
消費減税は高額所得・高額消費者に対する恩恵が大きい。そういう人々は、消費減税に喜んでぜいたく品の消費を増やしたりはしない。そう主張する向きがいると思えば、現金給付は貯蓄増に回るばかりで、消費喚起にはつながらないという声高な主張もある。いずれも、問題にしているのは、物価高対策の消費刺激効果だ。困窮世帯の救済に目が向いているとは思えない。これでは真の分配政策ではない。
消費税減税にしろ、現金給付にしろ、いずれも一律性において共通している。本当に弱者救済のための所得再分配を志向しているなら、そこにはメリハリがなければならない。一律型のばらまき政策からは、所得再分配効果は生まれない。誰のために何をしたいのか。参院選に向けての論戦の中からは、この観点が決定的に抜け落ちている。何はともあれ、日本のGDPの6割弱を占める個人消費を盛り上げさせてなければいけない。そこにしか、目が向いていない。
第二の生活保護の問題に移ろう。2013年から2015年にかけて、国は生活保護費の段階的引き下げを進めた。減額対象は、生活保護費のうち、食費・日用品・水道・光熱費などに充当される生活扶助費である。最大10%の減額が実施された。
この措置に対して、全国29都道府県で1000人超の生活保護受給者が訴訟を起こした。そしてこのたび、最高裁が「この間の減額は違法」の最終判決を示したのである。
生活保護費の減額は、2012年に発足した第二次安倍政権がそれに先立って選挙公約に掲げていたものだ。それが実現されるべく。厚労省が「はじめに減額ありき」の対応を進めたのではないか。一般物価の動向が示すデフレの進行を盾にとって、生活扶助費の減額を正当づける筋書きを書いた。その疑念を、最高裁が基本的に妥当と判断した。それが今回の経緯だったと言っていいだろう。
この顛末(てんまつ)は歓迎すべきものだ。この前例が出来たことによって、生活保護を受けることは施しを受けることではなくて、生活者の権利の主張だということが明確になった。そう考えていいだろう。まだまだ、生活保護受給に関する受給者のうしろめたさは払拭されないかもしれない。物価高にあえぐ低所得者が生活保護受給者をバッシングしたくなる気持ちは強まるかもしれない。だが、この判決が出たことで、何が基本なのかははっきりした。
弱者には救済される権利がある。弱者にはまっとうな生活を営みながら生きながられる権利がある。彼らのこれらの権利を守るために、我らは納税する。この視点が、参院選に向けての議論のどこかに組み込まれてほしい。
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