日本曹達 微生物農薬「マスタピース水和剤」新たな効果とメカニズムを発見 農研機構2025年4月24日
日本曹達圃場評価研究部の 荻野智和グループ長らのチームと、農研機構生物機能利用研究部門の竹内香純上級研究員らのチームは微生物農薬「マスタピース水和剤」の有効成分であるHAI-0804株の新たな可能性として、糸状菌の土壌病害に対する効果を検証した。
同研究では、環境負荷を低減しつながら効果的な土壌病害防除を可能にする生物学的な解決策の開発に取り組んだ。
日本曹達が開発したマスタピース水和剤は、非病原性細菌「Pseudomonas rhodesiae HAI-0804株」を有効成分とし、イモ類や野菜の細菌病害を予防することができる生物農薬。今回の研究では、このHAI-0804株の新たな可能性として、キュウリの苗立枯病(ピシウム病害)に対する効果を調査した。
さらに、農研機構の先行研究を参考に、HAI-0804株とグルタミン酸を組み合わせた場合の効果増強についても検討。この研究により、生物農薬の効果向上と用途拡大への道を開くことを目指した。
研究手法・成果
図:ピシウム病菌感染土壌におけるシュードモナス属細菌、グルタミン酸施用時のキュウリ幼苗の生残率
通常、土壌中にピシウム病菌が蔓延していると植物は病気になる。そこで農研機構が過去に確立した方法に基づきHAI-0804株を処理してピシウム病菌を蔓延させた土壌に加え、本葉が出始めるまでキュウリを栽培したところ、生残率に回復がみられた。さらに、グルタミン酸添加土壌でキュウリを栽培したところ、生残率が向上することが明らかになった(図)。
HAI-0804株がピシウム病害を抑制する効果のメカニズムについて調べたところ、培地上ではピシウム病菌に対する抗菌効果はみられなかったことから、抗菌活性以外の要素が関与していると考えられた。根の表面に定着するHAI-0804株の菌の状態を調べたところ、栽培後1ヶ月後も定着が保たれていること、HAI-0804株のバイオフィルム形成能がグルタミン酸添加によって促進されること、またグルタミン酸の添加によって定着能が高まったことから(写真)、根の表面に定着し物理的なバリアを形成することでピシウム病害から保護されていると考えられた。
写真:キュウリ根の表面におけるHAI-0804 株の定着の様子
同研究成果により、マスタピース水和剤が難防除であるピシウム病菌由来の土壌病害にも有効であることが明らかとなり、適用範囲拡大の可能性が示された。また、グルタミン酸の活用により生物農薬の効果向上を図る新たな方策が示された。
今後、日本曹達は同剤の土壌病害防除剤としての実用化研究を加速し、農研機構との連携を強化して総合的病害虫管理システムの開発を推進する。
同研究成果は2024年11月5日、国際学術誌『Frontiers in Microbiology』にオンライン掲載された。
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