【稲作農家の声】地域の支えで農的暮らし 希望の種、あちこちに 南房総市で就農した小林朋子さん2025年6月12日
南房総市で就農した小林朋子さんは、仲間と米を作り、朝市などでそのまま販売したり、おにぎりにしてキッチンカーで売る。「令和の百姓一揆」デモにも参加した小林さんは、農的暮らしの拡大に希望を見出す。
有機栽培をしている田んぼの前に立つ小林朋子さん(千葉県南房総市)
地域おこし協力隊終え就農
小林朋子さんは、千葉県南房総市で地域おこし協力隊の活動と並行して田畑を手がけ、協力隊の活動を3年間務めあげた後、最近になって正式に就農した。「1人でも多くの人に食べるものを作ってほしい」という思いから、「作らない・作れない人の分まで食べるものを作る」という決心へと、考えに変化が生じたからだ。
4枚の田んぼで米を作り、その米を売ったりおにぎりを握って、キッチンカー「とんび茶屋」で「ちくら漁港朝市」などで売る。汁物なども売っている。米作りは有機栽培で、不耕起にも挑戦している。
地域の方に気に入られ、民家をもらい(管理権を譲り受け)、それをリフォームするためのローンを組むことを機にJA安房の組合員になった。
漁港朝市に出店した小林さんのキッチンカー「とんび茶屋」。右は料理長の美香さん。
この日はおにぎり各種、汁物のほか、野菜を売った。
漁港朝市にキッチンカーで出店
ある日、「朝市で浜焼きをしながら交流しよう」と移住者たちが千倉地域づくり協議会「きずな」のメンバーに誘われ、参加。その後、役所の職員に「朝取り野菜を売ってほしい」と声をかけられた。「野菜さえ販売すれば一緒に何を売ってもよいと言われ、二つ返事で受けました。でも今朝も、前日までのキッチンカーの仕込みが終わらず4時起きです」と笑う。
田んぼを一緒にやるため、通ってくる仲間がいる。また、農作業体験のサービスも提供しており、キッチンカーでは看護師をしている友人などが料理長として腕を振るう。
新規就農者に温かい支え
協力隊の仕事で新規就農支援をしながら、就農に必要なことを学んだ。体験の案内をしながら農作業を学び、地域の農家さんらにも助けてもらい続けていると言う。小林さんは特に「地域の人間関係が大事です」と話す。小林さん自身、耕作放棄地の開拓から田植え機の使い方まで、手取り足取り教えてもらった。長く慣行農業をしてきた先輩も、有機栽培を始めた新参者に温かかった。
「アクアラインが通って東京まですぐ行ける。推し活もできるうえ移住者や観光客が比較的多い地域なので、エリアとの相性さえ合えば東京圏の若い人が就農するのに向いている」と小林さんは考える。彼女自身、時々高速バスで東京や神奈川に出て、人に会ったりイベントに参加する。
農は生き方、それでも止まらぬ引退
歩くのが不自由になって運転免許を返上した女性が畑の世話を続け、91歳の男性が軽トラで田畑を回る。その背中は、農は生き方だと物語るようだ。
小林さんは、最近、いくつか農機を譲り受けた。「ありがたいのですが、高齢の先輩農家が雪崩のように引退しています。農政が変わらないと引退に加速度がつき、国産米は確実に不足するでしょう」と心配する。
農家守らぬ政治に「いい加減にしろ」
2年前まで「米がめちゃくちゃ安かった」時、何もしなかった政府は今、小泉進次郎氏を農相に据えて備蓄米を「じゃぶじゃぶ」出し、緊急輸入さえ選択肢だと言う。
農家への所得補償を求め、3月30日には「令和の百姓一揆」デモに駆け付け、友人たちと歩いた。小泉氏というより、その参謀や取り巻きの狙いが心配だ。農家を守らない、社会の未来像を真剣に考えることのない政治には、「いい加減にしろ」と言いたい。
若い人たちの希望、受け入れる土壌
一方、協力隊時代、移住支援をした若者と、最近会った。農地とハウス、山を借りて、アボカドなどを作っていた。「希望の芽はあちこちにある」と小林さんは言う。
農的暮らしや自給自足を求める若者は多い。彼女、彼らを受け入れ支える土壌がこの地に息づいている様子が、漁港の朝市で垣間見えた。
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