主食用米の過剰供給がはっきりした需給見通し【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月22日
農水省が7月18日に公表した令和7年産第3回目の中間とりまとめの数値を基に今年度の主食用米需給見通しを策定したコメ業界団体によると、来年6月末の民間在庫があまりにも多くなり過ぎてその数値を見た人がこれまでの感覚と違い過ぎているため実感がわかないようであったと言っている。その在庫数量は、国が7年産米の政府買い入れ等を行わなかった場合、来年6月末の民間在庫は最高で298万tまで膨らむと推計している。6月末在庫は、業界で言われる適正在庫は180万tとされており、それよりも100万t以上も多くなると予想しているのだから、感覚がマヒするのも無理がない。

令和7年産第3回目の中間とりまとめでは(6月末時点)、主食用米の作付意向は136万3000㏊で、前年産より10万4000㏊増えることになり、平年作ベースでは735万tの生産量になり、前年産より56万tも増加する。4月末時点の意向調査と比較すると面積ベースで2万9000㏊、数量ベースで16万t増加したことになる。
作付け意向では、備蓄米及び戦略作物の作付け状況も示されており、それによると前年産に比べ備蓄米は3万㏊、加工用米6000㏊、輸出用米2000㏊、米粉用米3000㏊、飼料用米4万9000㏊、WCS稲7000㏊、麦7000㏊、大豆9000㏊それぞれ減少している。加工用米についてはもっと減っているのではないかと言う見方もあるが、最終的に確定するのは8月20日で、それまでに変動する可能性があるが、全体的には、主食用米作付面積大幅拡大と言う傾向には変化がないだろう。
コメ業界団体が策定した需給見通しは、令和5年/6年、令和6年/7年、令和7年/8年の3か年の見通しになっているが、ここでは令和6年から8年までの需給見通しの数字を示したい。令和6年/7年は、期初供給量は6月末の民間在庫が153万tで、これに6年産主食用米生産量659万t、政府備蓄米放出量62万t、SBS増加分3万t、民間輸入される外国産米10万tを合計するとトータルの供給量は887万tになる。ここから需要量661万tを差し引くと令和7年6月末の民間在庫は226万tになる。令和7年/8年では、6月末の民間在庫226万tに7年産予想生産量735万tを加えると、期初供給量は961万tになる。これに対して需要量を663万tと見ると差し引き298万tが来年6月末の民間在庫になるという見通し。
ここで問題になるのが政府備蓄米の扱いで、備蓄米の放出量62万tは今年6月末までに放出された量で、国の方針通り8月末まで売却される量は81万tになる。ただし、入札売却された31万tの政府備蓄米は「買戻し条件付き」であったので、7年産で買い戻されることもあり得る。仮に31万tが買い戻されてとしても来年6月末の民間在庫が200万tを下回るということはなく、需給は緩和する。
今週は鹿児島、宮崎の早期米に限らず、千葉県でも極早生の五百川が出回る予想で、値決めの話題で盛り上がっている。これまでのひっ迫した情勢を受けて、ハシリの価格は3万円以上になるものと予想され、7月24日に開催されるクリスタルライス取引会でも7月中、もしくは8月上旬渡しの早期米は3万円以上の高値が付くもの予想されている。しかし、それ以降に出回る新米は右肩下がりになるとの見方が強く、中心値としては2万5000円がたたき台になりそう。これまで早期米を積極的に仕入れていた大手卸も備蓄米の大量売却など需給状況の大きな変化で、仕入れ価格の交渉に極めて慎重になっており、これまでの方針を大きく転換している。
数量が限られている極早生の早期米は地元での消化やご祝儀的な要素で高値が通るだろが、通年販売されるような広域銘柄はそういうわけにはいかない。
代表的な広域銘柄である新潟コシヒカリや秋田あきたこまちも例外ではなく、新米があふれる中でブランド価値に見合った価格を維持することは極めて難しくなる。さらに備蓄米がブレンド商品として大量に販売された結果、若い世代を中心に銘柄信仰が薄れているため、その分需要のパイが縮小するというこれまでになかった現象に見舞われることになりそう。そうした中で、買取り価格に近い概算金を示したところは、その分リスクを背負うという点は十分に認識した方が良い。さらに言えば買い手の卸と「覚書」を交わしていてもその時点での価格が履行されるとは限らない。
今月末には食糧部会が開催される予定で、そこでどのような需給見通しが示されるか注目されるが、これまでの生産縮小政策から生産拡大政策に大きく舵を切る以上、それに見合った対策を示してもらわないと混乱は収まらない。
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