JAの活動:第46回農協人文化賞
【第46回農協人文化賞】地域包括医療を推進 厚生事業部門部門・長野県厚生連佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏2025年7月15日
多年にわたり農協運動の発展などに寄与した功績者を表彰する第46回農協人文化賞の表彰式が7月4日に開かれた。
各受賞者の体験やこれまでの活動への思い、そして今後の抱負について、推薦者の言葉とともに順次、掲載する。
長野県厚生連佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏
戦後80年の今年は1945年生まれの私の年齢と重なります。同時に「農村医学の父」と称された若月俊一先生が、その前年に創立された佐久病院に外科医として赴任された年でもあります。滋賀県彦根市の農家に生まれましたが、物心ついた時には父はすでに亡くなっており、祖父が女性下着の製造会社を興し、母は市内で眼科の開業医という一風変わった家庭の3人兄弟の末っ子として育ちました。
地元の高校を経て金沢大学の医学部に進みましたが、卒業前年に全国を席巻した医学部闘争に巻き込まれ、無謀にも卒業試験ボイコットのあげく、実習生として佐久病院に潜り込みました。病院の援助で卒業試験、国家試験を受け、半年遅れで医師となり、現在に至るまで佐久病院のお世話になっています。
ベッド数20床からスタートした佐久病院は若月先生の赴任後、出張診療や演劇による衛生啓蒙活動などのユニークな取り組みで「戦後医療の奇跡」とまで言われるような急速な発展を遂げ、就職した頃はすでに1000床に及ぶ大病院になっていました。
当然、地域の基幹病院として急速に発展する医療に遅れまいと多忙を極めていました。自ら昼夜分かたない外科診療に従事すると同時に、鎖骨下穿刺(せんし)による中心静脈栄養や内視鏡による逆行性膵(すい)胆管造影法を導入しました。肝臓・膵・胆管の外科治療には苦労しましたが、幾人もの先生方の指導を得て臨床に役立てたと思っています。
健康管理活動に関しては集団健康スクリーニングをとおして長野県の農村地域住民の健康を守る運動に参加するとともに、院内においては人間ドックの運営にも長くかかわってきました。
また、日本農村医学研究所所長として、「医・食・農」に関わる幅広い調査研究を行ってきました。
対外的な活動では、日本農村医学会の農薬中毒部会統括責任者・農機具災害部会会員として、農薬中毒や農業機械災害から農家の人たちの「いのち」を守る運動にも参加してきました。
佐久市有機農業研究協議会(佐久市・JA佐久浅間・佐久病院の3者で構成し、有機農業の推進、食の安全推進に取り組む)の会長として、有機農業に関する調査研究、教育・研修、普及・広報の三つを柱に各種団体間の連携を強化し、地域の農業・食料を守る運動を展開しています。
1990年代より"医療ビッグバン"と呼ばれる時代に突入し、医師不足が進む中、まず、病院管理と医療の質向上を目的に診療情報管理課を設立し、専門業務を行うとともに外来カルテの1ファイル化、病院年報発刊を行い、また、長野県の病院における診療情報管理の向上をめざして長野県診療情報管理懇話会を立ち上げ、会長として活動しました。また、地域医療連携室を立ち上げ、長野県地域医療連絡協議会の設立にもかかわりました。
一方、医療変革の時代に対応すべく日帰り手術センターを立ち上げ、医療の質と安全および効率化を実践し、これは在院日数の短縮にもつながっています。またDPC(定額医療費制度)の導入を積極的に図り、健全な病院運営の推進に努めました。
ドクターヘリを導入(救急救命士の教育や365日救急患者受け入れを断らない実績が評価され、2005年、全国で9番目に導入、厚生連病院としては初めて)し、広域の救急医療の充実・向上に寄与しているものと考えています。
ドクターヘリの活動
一方で、地域包括医療の推進をめざして医療機関の機能分化を実践すべく、高度救急・専門医療を担う病院と、それを支える一般病院、介護施設の施設分化という全国的にも珍しい病院の分割再構築の道筋をつけました。
地域医療を支えるのは住民の皆さんの理解と協力がなければ成り立ちません。今後とも地域の皆さんとともに健康な地域づくりに努めてまいりたいと考えています。
【略歴】
なつかわ・しゅうすけ
佐久総合病院名誉院長、一財)日本農村医学研究所長、一財)農村保健研修センター長、医学博士。1945年8月滋賀県彦根市生まれ、1971年金沢大学医学部卒業、佐久総合病院研修医、1982年同外科医長、1994年同副院長、2003年同院長、2010年同統括院長、2013年同名誉院長。専門分野:消化器外科、健康管理、診療情報管理。
【推薦の言葉】
地域包括ケア確立
夏川氏は2005年、全国10番目となるドクターヘリを佐久総合病院へ導入し、農村地域を含む長野県の救急医療の発展に尽力。東日本大震災や能登半島地震でも最前線に出動した。
機能分化による病院分割再構築を主導。高度・専門医療、三次救急を担う佐久医療センターと地域の総合医療と保健予防を担う佐久総合病院本院を分け、地域医療の新たな姿を確立した。「地域包括ケア」の先駆だった。
集団健康スクリーニングを通して住民の健康を守り、農薬中毒や農業機械災害から農家の人たちの命を守る運動にも尽力。佐久市・JA佐久浅間・佐久総合病院の3者で構成される佐久市有機農業研究協議会会長として地域の農と食を守る運動を進めた。農村医療・保健指導の啓発にも取り組み、佐久総合病院の文化、体育部活動を通し、地域活性化にも貢献した。
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