農薬:サステナ防除のすすめ2025
水稲用除草剤の上手な使い方 水が重要な役割(1)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月15日
2021年5月に決定された「みどりの食料システム戦略」では「持続可能な食料システムを構築すること」が目標として掲げられている。本稿「サステナ防除のすすめ」では、みどり戦略の目指す農産物の安定した品質・生産量を確保できるサステナブル(持続可能)な防除体系の提案を目指し、IPM防除の精神に則って現状ある防除技術を上手に組み合わせ、安定した効果が得られる方法の探索に挑戦したいと考えている。あくまでも、みどり戦略に対応したサステナブルな防除の考え方の例として参考にして頂ければ幸いである。
使用注意事項は厳守
それでは、今回は水稲除草剤をテーマに探ってみようと思う。
いうまでもなく「雑草をいかに抑えるか」は、農耕が始まって以来ずっとつきまとっている大きな課題である。除草剤がなかったころは、労働時間の相当大きな部分が除草作業に費やされており、除草剤が登場してからは、除草のための労力と作業時間が軽減された。種々雑多な植物が生きている自然界で、単一の作物を育てて豊かな収穫を得るためには、雑草防除は避けて通れない課題であるのだ。
この重要な雑草防除を担うのが除草剤である。これをサステナブルに使用するには、除草剤の特性をよく理解して正しく使用することが必要だ。
特に水稲除草剤は使い方によって除草結果に大きな差が出てしまうので、以下水稲除草剤の上手な使い方を中心に整理してみようと思う。
1.除草剤の作用メカニズムからみた上手な使い方
なぜ除草剤は効く
除草剤は、作物は枯らさずに作物以外の植物(雑草)を枯らすというある意味大変難しい課題をクリアして製品化されている。この課題クリアのために様々な技術が積み重ねられており、その内容を知るのと知らないのとでは、除草剤の効果に差が出るのでよく把握しておいてほしい知識だ。。
まずは水田での代表的な雑草であるヒエを例に考えてみる。ヒエは、稲と同じイネ科の作物であるので、ヒエに効く除草剤であれば、稲にも何らかの影響があるのは疑う余地がない。
では、どうやって稲に害がなく、ヒエだけを枯らすことができるのだろうか?
その答えは、ヒエと稲の生長点の位置の差の利用である。水稲除草剤は、湛水状態で処理された後、田面水を介して、水田土壌の表面に処理層(除草剤の有効成分を含む土壌の層)をつくる。移植栽培の場合、稲は育苗されて本葉が2枚とか3枚出た段階で植え付けられるため、根っこや生長点は土の中にあり、稲の生長点は除草剤の処理層にあたることはない。
しかし、ヒエの場合は、土の中の種子が発芽すると、弱々しい芽とその芽の基部にある大事な生長点が除草剤の処理層に触れることになり、枯れてしまうことになる。また、除草剤が処理された段階で既に発芽し生育しているヒエの場合でも、その生長点は土壌表面つまり処理層に近いところにあるため、除草剤の影響を受け、枯れてしまうのである。
代かきを丁寧に
ただし、ヒエの葉齢がある程度進んでしまうと、生長点の位置が変わるなど除草剤の影響を受けにくくなり枯れずに残ったりする。
このため、水稲除草剤の場合、必ず「移植後何日まで、ただしノビエ○○葉期まで」などと表記し、その除草剤が枯らすことができるヒエの葉令限界を示しているのである。
このことは、実は除草剤の薬害回避にも関係してくる。よく除草剤の注意書きに「軟弱徒長苗や極端な浅植えは避けて下さい」と書いてあるが、これは、前述したように除草剤の処理層は土壌の表面に形成されるため、稲が軟弱だったり、稲の根もと近くにある生長点や根っこが浅植えのために除草剤の処理層に触れてしまったり、あるいはごく近くに位置してしまい、除草剤の影響をモロに受けやすくなるためである。
これが、水稲用除草剤の使用方法に「代かきは丁寧に行い、土の戻りの良い均平のとれたよい田んぼに、健康な苗を2~3cmの植え付け深度でしっかりと植え付けて下さい。」と繰り返し書かれている理由でもある。
重要な記事
最新の記事
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】本質的議論を急がないと国民の農と食が守れない ~農や地域の「集約化」は将来推計の前提を履き違えた暴論 ~生産者と消費者の歩み寄りでは解決しないギャップを埋めるのこそが政策2025年10月16日
-
死亡野鳥の陰性を確認 高病原性鳥インフル2025年10月16日
-
戦前戦後の髪型の変化と床屋、パーマ屋さん【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第360回2025年10月16日
-
静岡のメロンや三ヶ日みかんなど約170点以上が「お客様送料負担なし」JAタウン2025年10月16日
-
高齢者の安全運転診断車「きずな号」を改訂 最新シミュレーター搭載、コースも充実 JA共済連2025年10月16日
-
安心を形にした体験設計が評価 「JA共済アプリ」が「グッドデザイン賞」受賞 JA共済連2025年10月16日
-
東京都産一級農畜産物の品評会「第54回東京都農業祭」開催 JA全中2025年10月16日
-
JA協同サービスと地域の脱炭素に向けた業務提携契約を締結 三ッ輪ホールディングス2025年10月16日
-
稲わらを石灰処理後に高密度化 CaPPAプロセスを開発 農研機構2025年10月16日
-
「NIPPON FOOD SHIFT FES.」に出展へ 井関農機2025年10月16日
-
マルトモが愛媛大学との共同研究結果を学会発表 鰹節がラット脳のSIRT1遺伝子を増加2025年10月16日
-
マックスの誘引結束機「テープナー」用『生分解テープ』がグッドデザイン賞を受賞2025年10月16日
-
北海道芽室町・尾藤農産の雪室熟成じゃがいも「冬熟」グッドデザイン賞受賞2025年10月16日
-
夏イチゴ・花のポット栽培に新たな選択肢「ココカラ」Yタイプ2種を新発売2025年10月16日
-
パルシステムの奨学金制度「2025年度グッドデザイン賞」を受賞2025年10月16日
-
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月16日
-
鳥インフル デンマークからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月16日
-
宅配商品の試食販売・交流「商品展示会」26日に開催 パルシステム千葉2025年10月16日
-
世界規模のフード・アグリカンファレンス「WAFI 2025」で最高賞 AGRIST2025年10月16日
-
国・世界と現場の実践が交わる、日本農業のこれから「GAP JAPAN 2025」開催 日本GAP協会2025年10月16日